教育と人材で「介護」の未来を変える! 前例なきビジネスモデルの革新者 

いち早く情報をとらえ、既成概念にとらわれず実行すること/ガネット

2018年12月14日
超高齢社会を迎える日本。その中で「介護」の重要性は増すばかりですが、そこに携わる人材が不足していることは、皆さんもご存じの通りです。その危機的状況を打破するべく、介護業界の未来を担う人材の育成、引いては業界全体における労働環境の健全化に取り組んでいる会社があります。2008年創業の「株式会社ガネット」が運営する「日本総合福祉アカデミー」は、これまでにはない「分校」というビジネスモデルで急速にその展開数を拡大し、いま注目を集めています。

株式会社ガネット代表取締役 藤田達也さん。「介護」に携わる人材が不足しているなか、その危機的状況を打破するべく、介護業界の未来を担う人材の育成や労働環境の健全化に取り組んでいる

2025年には「団塊の世代」が75歳を超えるなど、日本はいよいよ超高齢社会を迎えようとしています。その様な状況の中で「介護」の重要性は増すばかりですが、そこに携わる人材が不足していることは、ニュースを通じて皆さんもご存じの通りではないでしょうか。その危機的状況を打破するべく、介護業界の未来を担う人材の育成、引いては業界全体における労働環境の健全化に取り組んでいる会社があります。2008年創業の「株式会社ガネット」が運営する「日本総合福祉アカデミー」は、これまでにはない「分校」というビジネスモデルで急速にその展開数を拡大し、いま注目を集めています。ガネットの代表取締役社長の藤田達也さんに、その革新性や介護業界の現状・未来について、話を聞きました。

ガネットの業態と創業から10年間の歩み

――まず、ガネットの業態について教えてください。

「人材の採用から教育まで」をコンセプトに、新卒大学生の採用・中途コンサルティング事業と介護・医療業界に特化した専門養成校「日本総合福祉アカデミー」の運営を行っています。

――日本総合福祉アカデミーですが、現在どの位の規模で事業を展開されているのでしょうか?

現在では全国100校を超える教室運営を行っています。教室を支える講師陣は全国約250名、本部運営と営業のスタッフは契約社員を含めて総勢35名になります。

――創業は2008年です。この10年間での経営状況の推移やターニングポイントとなった出来事を教えてください。

実は2008年から2012年までは一切事業を拡大させていませんでした。リーマンショックや東日本大震災もあり景気自体が伸びるという状況ではなかったので、積極的な人員増強、売上拡大は目指さず、企業のコアとなる「事業の構築」や私を含めた「幹部社員の経験・知識・ノウハウを養う」期間として時間を費やしました。

その後、2012年に介護の資格に関して大きな法改正があるという情報をキャッチして1年間で徹底的にマーケティングを行い、2013年から一気に会社を伸ばしてきました。そこに当社のターニングポイントがありました。

――介護資格の法改正が行われる前後では、何がどの様に変わったのでしょうか?

法改正の前には「ホームヘルパー2級」があったのですが、国家資格である「介護福祉士」とは管轄が異なり、介護における資格取得の道筋が一本化されていなかったんです。結局、別立てで国家試験を受けに行かなければならず、また試験の関連性もあまりありませんでした。

それが、法改正により厚生労働省主体でホームヘルパー2級相当の「初任者研修」という公的資格をつくり、その取得後に6ヶ月間の教育研修期間「実務者研修」を修了しなければ介護福祉士の国家試験が受けられないように体系が整備されたのです。私たちはそこにいち早く対応した学校機能構築プログラムいわゆる「分校」を展開することで、競合に対する優位性を持つことができました。

「分校」という、前例のないビジネスモデル

介護施設や病院の空きスペースを、日本総合福祉アカデミーの学校にする――それが分校の仕組みだ。ただ学校をつくるだけではなく、そこに勤めている職員やスタッフに対して資格や専門性の高いスキルの獲得支援も行っている

――日本総合福祉アカデミーの大きな特徴である「分校」という仕組みについて、詳しく教えてください。

お客様である介護施設や病院の中にある空きスペースを、私たちのブランドである日本総合福祉アカデミーの学校にする――それが分校の仕組みです。また、ただ学校をつくるだけではなく、そこに勤めている職員やスタッフの方々に対して、資格や専門性の高いスキルの獲得支援も行わせてもらいます。

――2013年に本格的に事業を開始されてから、短期間で全国100校まで展開するに至っています。分校という仕組みが広く求められた要因はどこにあったとお考えですか?

まず、背景には介護業界をめぐる国の政策の変化があります。これまでは大きな介護施設を建てることに莫大な補助金が投入されていました。そこから打って変わり、その施設のソフト面――そこで働く介護職員のスキルアップやキャリアアップ、待遇の改善など――に対して補助金のウェイトを重くするという傾向が年々強まっています。その「ハードからソフトへ」という移行が、当社にとって追い風となりました。

――施設側のみならず、受講生にとってもメリットがなくてはここまでの展開は実現できなかったのではないでしょうか。

受講生にとっての最たるメリットは「利便性の高さ」です。基本的に、高齢者が多く、高齢者施設が建設される場所の多くは過疎地域や田舎町であり、その施設を支える介護職員もその付近で生活をしていることが多いのです。ところが、技能習得できる場は都市部に集中しているため通う負担が大きく、職員の方たちがキャリアアップを望んでも、時間や労力の側面からそれが難しい状況でした。分校は職場の中にあるので、通学にかかる負担が一切ありません。これまであった問題を解決できる当社の分校スタイルが求められたのは必然だったのではないかと思います。

――経営上ではどの様な革新性があるのでしょうか。

資格学校を運営する会社にとって何よりも大変なのは、固定費です。立地条件の良いところにテナントを借り、そこに人材を配置しなくてはなりません。まずテナントについて、我々は自社で教室を持たず、介護施設や病院の中にあるスペースで開講することができているので、同業他校とは異なり固定費が発生していません。

日本総合福祉アカデミーでの研修風景より。「利便性の高さ」が受講生にとっての大きなメリット。人材面については、専門家やドクター、看護師らが登録、必要に応じて分校に講師として派遣している

――人材面についてはどの様に工夫されていますか?

専門分野の方々、場合によってはドクターや看護師の方々に登録をしていただき、必要に応じて分校に講師として派遣していくというスタイルをとっています。ここには当社が2010年から様々な業界に講師を派遣する事業を行ってきたという経験が活かされています。

また、お客様である介護施設や病院の中につくられる分校は、そこに勤める職員やスタッフの方々が受講者となるので、広く受講者を募るための広告宣伝費も不要です。

この様に、資格学校の運営においてシビアな問題となるハードと人材、広告宣伝にかかるコストを徹底的に削減したという経営面での工夫が、潤沢な資金が無い中でも短期間で一気に100校まで展開できたことの大きな要因となりました。

介護業界における「働き方改革」を目指して

――介護業界における「働き方」についても、積極的な取り組みをされているとか。

介護施設で働く職員の方々のキャリアパスというのは、介護業界における大きな課題の一つです。現場で色々と覚えて国家資格を取り、優秀な何十人の内の1人が施設長になって、その後のキャリアはほぼないという、他の業界では考えられない組織構造なんです。

日本総合福祉アカデミーでは、介護施設で働く職員の方々を当校の先生として育成するための講座も設け、介護施設の中でのベテラン層や教える側の層を充実させることに取り組んでいます。キャリアパスの途中で講座を用意し、段階的にキャリアアップを目指していける環境を作っています。ある意味での「働き方改革」を、学校というツールを通じてなし得たことは当社の強みだと思います。

――業界のニューカマーだったからこそ、実現できたのかもしれませんね。

人材ビジネスに長く携わり様々な業界を見てきた経験があるので、「あるべき組織の姿」について適切なコンサルテーションを行うことができました。「“施設長とそれ以外の全員”という現状から、きちんとした三角形の組織体制を目指していきましょう」と。しがらみや既成概念にとらわれない新参者の意見だからこそ、聞く側も聞けたというところもあるでしょうし、私も物申すことができたのだと思います。

介護業界のこれからと、今後の展望

――これから日本は超高齢社会を迎えることになります。いわゆる「2025年問題」(団塊の世代800万人が75歳)が、超高齢化がもたらす日本社会へのインパクトをどのように予想されますか?

2010年に約280万だった要介護高齢者の人数が2025年には470万人と約2倍にまで増加すると予測され、単純に労働力不足がこれまで経験したこともない社会問題になることは容易に想像できます。さらに介護職員は今後、「数」としても「質」としても想像以上に必要な存在になっていくにもかかわらず、2025年までに高齢化率を根拠に40万人もの人材が不足する統計を知ると、当社の事業の使命感が大きくなります。

――今後の目標について教えてください。

今年度内に130箇所の「分校」を構築していきたいと考えています。支店については、関東、関西、東海に続き、東北と九州への展開を検討中です。また、Eラーニングにおける映像教材の強化、ならびに多言語機能による外国人技能実習生の教育インフラの構築にも取り組んでいます。

――介護は日本だけの課題ではありませんが、海外での展開はどの様にお考えですか?

東南アジア向けの介護職員の教育サービスの展開を検討していますが、現在は第1フェーズというところです。介護業界へのEPA(経済連携協定)についてはようやくカタチになりつつあるものの、具体的な教育やキャリアップまでは不透明な部分が多く、政府の方針を注視している最中です。当社のEラーニングのシステムは最初から多言語対応を想定して開発しており、具体的な指針が出次第、サービスインはしていきたいと思います。

「Eラーニングにおける映像教材の強化、多言語機能による外国人技能実習生の教育インフラの構築にも取り組んでいます」(藤田さん)

"欲張り"な気持ちに答える会社

――社名である「ガネット」の由来を教えてください。

九十九里など日本の海辺に生息している「かつおどり」の英訳です。かつおどりは、空を飛び、水中で魚をとり、陸に卵を産みます。水陸空を制覇する鳥であり、俗語で「欲張り」という意味があります。私たちはお客様の「もっとこうしたら良いのに!」という欲張りな気持ちにお答えする会社を目指していこうと思い、「ガネット」と命名しました。

また、教育ビジネスと人材ビジネスにテクノロジーをかけ合わせていきたいという気持ちもあったので、「ネット」という言葉が含まれているところもポイントでした。

――会社の営みを通じて、何を社会にメッセージしたいですか?

当社は企業理念を「人財創出ではたらく人々の存在意義を想造します」と定めています。採用、教育ビジネスを通じてそこにかかわる利害関係者すべてのやりがいや幸せを追求することをお約束しています。

採用ビジネスと教育ビジネスというコアコンピタンスを通じて、そこに関わる利害関係者すべてのやりがちや幸せを追求すること――。それを約束することが、私に与えられた使命だと思っています。

社名の「ガネット」はかつおどりの英訳。水陸空を制覇する鳥であり、俗語で「欲張り」という意味がある。「お客様の『もっとこうしたら良いのに!』という欲張りな気持ちにお答えする会社を目指していこうと命名しました」(藤田さん)

(インタビュー/加藤陽之 構成/藤川貴弘)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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