TVドラマ『ハラスメントゲーム』 ゲームのカードのように多様化・複雑化するハラスメントの背景にあるもの

セクハラ、パワハラだけではない、時流を超えて描かれる人間ドラマ

2018年12月10日
テレビ東京の新しい顔として注目されつつあるのが「ドラマBiz」枠だ。『ガイアの夜明け』『カンブリア宮殿』といった「日経スペシャル」系番組のイメージに寄せる形で今年再スタート。そして、現在放送中で高い評価を得ているのが『ハラスメントゲーム』だ。

©テレビ東京

 テレビ東京のドラマと言うと深夜ドラマのイメージが強いが、新しい顔として注目されつつあるのが、「ドラマBiz」枠だ。
 放送時間は、月曜夜10時というプライムタイム。2010年~11年にかけては『モリのアサガオ』や『鈴木先生』などのドラマが放送されていたが、『ガイアの夜明け』『カンブリア宮殿』『未来世紀ジパング~沸騰現場の経済学~』といった「日経スペシャル」系番組のイメージに寄せる形で今年再スタートした。これまで、型破りなヘッドハンターを通じて転職をめぐる様々な人間模様を描いた『ヘッドハンター』と、大手銀行の証券部で働いていた男が、倒産間近の飲食フランチャイズ会社のCEO・社長に就任して会社を再生させる『ラストチャンス~再生請負人~』の二作が放送。
 そして、現在放送中で、高い評価を得ているのが今回紹介する『ハラスメントゲーム』である。
 物語の舞台は大手スーパー・マルオーホールディングスのコンプライアンス室。
 室長の秋津渉(唐沢寿明)は、唯一の社員の高村真琴(広瀬アリス)と顧問弁護士の矢澤光太郎(古川雄輝)とともに、コンプライアンス室に持ち込まれた事件に挑んでいく。
 脚本は『きらきらひかる』や『昼顔〜平日午後3時の恋人たち~』(ともにフジテレビ系)など、様々な作品を描いてきた井上由美子。チーフ演出は劇場映画が大ヒットしている『コード・ブルー』(同)シリーズを担当している西浦正記。実力派の二人が関わっているだけあって、とても見応えのあるドラマに仕上がっている。
 第一話で描かれるのは、メロンパンの中に一円玉が異物混入されていたという事件だ。秋津たちは事件の調査に乗り出すが、その背後に左遷された社員の隠れた物語が潜んでいた。
 第二話で描かれたのはパート社員18人がセクハラを理由にして職場放棄をする事件、第三話では育児休暇を理由に定時退社するイクメンパパの隠された顔、といった感じで現代的なテーマを地に足をつけた形で描いている。
 一話では権力や立場を利用した嫌がらせのパワハラ(パワーハラスメント)と、なんでもハラスメントと騒ぐ事自体がハラスメントだと言う、ハラハラ(ハラスメントハラスメント)が登場するのだが、他にもセワハラ(世話焼きハラスメント)、モラハラ(モラルハラスメント)アルハラ(アルコールハラスメント)など、様々なハラスメントが登場する。

©テレビ東京

 セクハラ(セクシャルハラスメント)とパワハラは理解していたのだが、毎回登場するハラスメントを見ているとこんなに種類があるのかと驚く。ドラマ内に新しいハラスメントが出る度に呆れるが、同時にこれは深刻な問題だなぁと考えこんでしまう。
 ネットで検索すると、ハラスメントと呼ばれる概念は現在50種類くらいあるらしいが、調べれば調べるほど、何でもありだなぁと思ってしまう。
 昨年、ハリウッドのプロデューサー・ハーヴェイ・ワインスタインが若手女優におこなっていたセクハラ事件が明るみになったことをきっかけに、被害者女性に声を上げようと呼びかけるMeToo運動が全世界で盛り上がっている。その影響は国内外のフィクションにも影響を与えており、海外ドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』のような女性差別を筆頭とする性的マイノリティや特定の民族に対する差別や偏見に異議申し立てをするポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)を物語のテーマとして意識することは、当たり前のこととなっている。
 この『ハラスメントゲーム』も始まる前は、そういった時流を意識した物語になるかと思っていたのだが、本作はハラスメントの背景にある問題をより深く掘り下げている。
 一見、本作は会社内でハラスメントに苦しめられている弱者としての社員の側に寄り添った話に見える。
 だが、本作に登場する女性社員やパート店員も純粋な被害者というわけではなく、一見加害者に見える上司の側のおじさん側にも隠された事情があったり、逆に被害者側の人間が、実は別の人間に誘導される形で訴えていたといったような、二転三転する展開が描かれる。本作で言うゲームとはそういうことだ。つまり、多様化・複雑化するハラスメントの問題が、ゲームのカードのようになっている現状が描かれているのだ。
 物語にはもう一つ、秋津の物語という軸がある。
 秋津は7年前にパワハラの嫌疑をかけられ左遷され、富山支店の店長として働いていたところ、なぜか社長から呼び戻されてコンプライアンス室室長となったのだが、その背後では、会社内での派閥闘争もあった。一話完結の物語の中に秋津の過去をめぐる企業内の内部闘争が少しずつ明らかになってきている。
 組織内の派閥闘争をめぐる物語は、クライマックスに向かう中、大きな見どころとなっているのだが、複雑怪奇に見えるハラスメントの問題も、最終的には人間同士のプライドの問題なのだと、改めて気づかせてくれる。おそらく上司の立場にある中年男性が見た方が面白いドラマではないかと思う。

■テレビ東京開局55周年特別企画 ドラマBiz『ハラスメントゲーム』 
テレビ東京系 毎週月曜夜10時~ 放送
Paravi(動画配信サービス)にて、第1話から最新話まで配信中

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執筆者: 成馬零一 - ドラマ評論家
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。WEBマガジン「ich」(イッヒ)主催。主な著作に『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の評論家』(河出書房新社)がある。
https://twitter.com/nariyamada
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