21世紀の金融を革新する! 投資型クラウドファンディングが世界を変える【後編】
「インパクト投資」で日本の眠った1800兆円を発展途上国につなぐ/クラウドクレジット
何もないところから始めた会社、ぼこぼこになりながらいままで歩いてきた
ーー創業から5年です。順調ですか?
社員数は55人程度になりました。ファンドをつくるメンバー、融資を実行するファンド運用のメンバー、プロモーションのメンバーなど、陣容も固まってきました。
ーー現在の状況は思い描いていた通りですか?
ーーここを乗り越えたからいまがあるという出来事はありますか?
ーー苦労を苦労と思わないタイプですか?
ーー起業のため準備が足りなかった?
また行政書士の方ともこんなことがありました。私たちの仕事は金融商品取引業登録をしないと販売することができません。それをある行政書士事務所に頼んだのですが、ネット検索で上位の方にお願いしたら、ほぼ詐欺みたいな感じで・・・。大げんかになって前払い金100万円中75万円は返してもらったのですが、そういう風にやることなすことダメダメでした。失敗からひとつひとつ学んでいきました。
普通ならそういうミスのどれかが致命傷となって会社が倒産するところなのですが、私の場合、ベンチャー経営を経験してこられた先輩から色々と教えていただけたことが現在につながったと思っています。
日本はシリコンバレーから遅れているといわれていますが、1998年のIT革命からすでに20年間、ベンチャーが歴史を刻んできました。初期のマネックス証券さんや楽天さんからはじまってグリーさんやミクシーさん、ディー・エヌ・エーさん・・・すでに何回転かしています。
東京でもベンチャー経営経験者が数多くいらっしゃいます。彼らが投資だけでなく、メンターとして若い起業家に「ここを踏むと地雷が爆発する」など様々なことを教えてくれました。
私もネット証券のの起案者であり、日系の大手SNS企業の初期のファイナンスをサポートしていた方に、「事業と組織の両輪を成長させるループをつくるにはこういう要素が必要だ」など様々なアドバイスを頂きました。「プロダクトやサービスがあって、社会にいいインパクトがあって、お客様にニーズがあると、今度は組織がどんどん成長していかないと、より多くの方にベネフィットを提供できない」という組織論を教えていただきました。本当にお世話になりました。
ーー自分の足で立つようになった自覚はいつ頃、生まれましたか?
ーー経営にとって経験は大切ですか?
金融工学の道から現場重視への方向転換
ーー大学を出た時に金融を志望したのはなぜですか?
私は法学部だったのですが、金融工学の勉強に没頭しました。たまたまロングタームキャピタルマネージメントで勤務されていた方が通っていた大学に教授としていらっしゃり、彼のもとで勉強することができました。4年生の時は勉強はほぼ金融工学だけに専念しました。
就職では大手の証券会社に入りました。3年目に社内ヘッジファンドで勤務できることになったのですが、当時の自分の知識、ノウハウでは“パチンコ”をしているだけになってしまいました。
――パチンコ?
ロイズ銀行で勤務する中で、だんだん自分のキャリアプランもリテール金融の方にチューニングされていきました。イギリスと日本のお金を巡る状況は真逆であることにも気づかされました。その結果得た着眼点が「金余りの国と金のない国をくっつけると面白いことになる」でした。そして金融サービスを世の中に提供する会社をつくる決断をしたのです。
ーー金融工学から現場重視への意識変化ですね。
クラウドクレジットはお客様のお金を預かって運用しているので、リスクマネジメントの点では、金融工学を勉強したことは回り回って役に立っているのですけどね(笑)。
金融工学もある意味テクノロジーですが、テクノロジーありきでは通用しなかった24、25歳の時の苦い経験は強烈なインパクトがありました。いま、フィンテックやAI、ロボアドバイザーなどについて関心が集まっていますが、かつての苦い経験があるので、テクノロジーありきでなにかをやるつもりはありません。テクノロジーは必要な時に必要なことに使うことにしています。
ーーベンチャー企業の多くは「ミッション、ビジョン、バリュー」を策定しますが、クラウドクレジットではそれらはどういう内容ですか?
ーー金融業において「職人」とはどんな人を指すのですか?
私たちはベンチャー企業ですが、これから人事考課体系も充実させています。そこでは個人の成績だけではなく、チームとしてアウトプットを最大化するために何をしたのかについての項目も充実させていきます。部署間の壁を超えて広く情報共有したかどうか、プロダクトマネジメントのなかで会社全体のアウトプットを広げるために何をしたのかなどを評価の中にいれていきます。
すごい奴らを集められるのが、優れた将である
ーー杉山さん自身はどんなプレイヤーを目指していますか?
蒙驁のあり方から思うのは、組織において、将がどうこうというより凄い奴の集まりをつくれればいいという流派もあるのではないか、ということです。蒙驁のような将軍ーー会社ならばそれが良いCEOではないかと思うのです。
もうひとりは、「そうなりたい」というよりは「ああ、わかる~」という架空のキャラクター、河了貂(かりょうてん)という軍師です。彼女はチェスのような盤上でコマを動かしパターンを組むことで、確率論的に戦場を仮想します。
盤上ではコマが倒れればそれで済みますが、実際の戦地ではこちらで3百人死んであちらで2百人死んだというリアルな情景となります。彼女は学校では成績優秀だったのですが、軍師としての能力は現実に目の前で死んでいく兵士の姿に耐えられるかどうかにかかっています。
ベンチャー運営でも、自分が打つ手によって、自分の決定によって、現実にはみんながハッピーになるわけではない場合もあります。教科書的な例で説明すると、例えばふたりの優秀な社員がいたとして、組織としてはひとりしか部長にできないということもあるでしょう。そこはたんたんと、どちらの選択肢がお客様により多くの便益を提供でき企業価値を高められるか、という観点からドライに判断するしかありません。
私自身が銀行の参謀あがりということもあるのでしょうか、私は河了貂という軍師に共感を覚えるのです。
ーー座右の銘を教えてください。
ーー杉山さんは世界の未来をどんな風に想像しますか?
現在は、まだ海外の国々との交流にはもちろん時間がかかります。しかし金融や資産運用の場では、先んじて国家間の交流が実現できます。その瞬間を味わえる場をつくれるのが、私たちの仕事の醍醐味だと感じています。
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