酒で地域と訪日外国人をつなげる「酒蔵ツーリズム」をさらに盛り上げるために

重要な観光コンテンツとしての日本酒、どう「仕組み化」すればいいのか?/ツーリズムEXPOジャパン

2018年11月16日
訪日外国人が日本に来たら体験してみたいことの上位に「日本のお酒を飲むこと」が挙げられています。今後ラグビーワールドカップやオリンピックを控え、ますます訪日外国人が増える中、「酒蔵ツーリズム」が重要な観光コンテンツとして注目されています。「ツーリズムEXPOジャパン」から、酒蔵ツーリズムを巡って交わされたクロストークの抄録をお届けします。

ツーリズムEXPOジャパンで開催されたセミナー「インバウンド4,000万人時代の酒蔵ツーリズムの課題 ~外国人、地域、酒蔵の視点から~」

 世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」が2018年9月20〜23日の期間、東京ビッグサイトで開催されました。

 今回の「ツーリズムEXPOジャパン」には世界136カ国の国と地域から1,441もの企業・団体が趣向を凝らした出展を行い、4日間の来場者数は過去最高となる207,000人を記録しました。

 また訪日インバウンドや地域への集客・送客をテーマにしたセミナーが多数開催されました。どのセミナーもほぼ満席となる盛況ぶりで、業界関係者の関心の高さがうかがえました。

 今回の記事では9月21日に開催されたセミナー「インバウンド4,000万人時代の酒蔵ツーリズムの課題 ~外国人、地域、酒蔵の視点から~」(コーディネーター:ジャスティン ポッツさん/株式会社ポッツ家プロダクションズ代表取締役兼CEO、登壇者:櫻井正道さん/一般社団法人埼玉県物産観光協会 DMO戦略本部本部長、阿部倫典さん/大利根酒造有限会社代表取締役、髙井貴雄さん/姫路市市長公室地方創生室 連携中枢都市推進室 はりま酒文化ツーリズム協議会事務局事務局長、前垣壽宏さん/賀茂泉酒造株式会社取締役副社長、富村朝弥さん/沖縄県酒造組合書記)より、各地域の特色ある酒造を巡る旅についてレポートします。

お酒があるところには人が集まる

「お酒のあるところに人が集まります。お酒はストーリーを実感する素材となります」」(株式会社ポッツ家プロダクションズ代表取締役兼CEO ジャスティン ポッツさん)

 訪日外国人が日本に来たら体験してみたいことの上位に「日本のお酒を飲むこと」が挙げられています。今後ラグビーワールドカップやオリンピックを控え、ますます訪日外国人が増える中、酒蔵ツーリズムが重要な観光コンテンツとして注目されています。

 コーディネーターのジャスティンさんはアメリカのシアトル出身、来日後はメディア・PR・ブランディングなどの業界を経て、現在は食を中心としたプロジェクトデザインの世界で活動されているほか、ご自身も酒匠・利き酒師・酒ナビゲーターとして日本のお酒について深い造詣を持っています。

 「お酒はコミュニティーのつなぎ役、エクスペリエンスのつなぎ役です。お酒のあるところに人が集まります。お酒はストーリーを実感する素材となります」とジャスティンさんは酒造ツーリズムのカギであるお酒について話しました。

 お酒に関する旅といえばワイナリーを巡るワインツアーがあります。ワインツアーはすでに大きな市場となっていますが、まだ伸びるとジャスティンさんは見ています。例えば2017年アメリカの市場レポートではワインの産地への観光客、テイスティングルームでのワインの売上はともに増加しているものの、テイスティングルームへの観光客は減少しています。これについてジャスティンさんは「良いものや本物、特別な体験に対してお金を使う人が増えていると言えます。またワイン×〇〇のような多様性のあるツアーを求め始めています」と説明しました。

お酒だけでなく地域との連携が必要不可欠

「酒蔵を巡る交通手段としてタクシーのモデルコースを作っています」(群馬県・大利根酒造の阿部倫典さん)

「訪日インバウンドが20万人を超える川越市の産業観光館には県内すべての蔵のお酒を試飲できる施設を作りました」(埼玉県物産観光協会の櫻井正道さん)

 次に各地域の代表者より酒蔵を巡る旅について紹介がありました。群馬県・大利根酒造の阿部さんは「酒蔵を巡る交通手段としてタクシーのモデルコースを作っています。その際は横の連携を強化し、酒蔵を巡るときに同じ説明をしないよう工夫しています」と取り組みを紹介。
 一般社団法人埼玉県物産観光協会の櫻井さんは「あまり知られていませんが実は埼玉県はお酒の出荷量が全国4位です。水もきれいで平成の名水百選に県内で4ヶ所認定されています。また訪日インバウンドが20万人を超える川越市の産業観光館には県内すべての蔵のお酒を試飲できる施設を作りました。今後はいかに水の価値を伝えるか、またお酒のイメージがない埼玉をどうアピールしていくか工夫が必要だと思います」と埼玉県のお酒事情をアピールしました。
 はりま酒文化ツーリズム協議会事務局の髙井さんは、播磨地方の人口減少対策の一環としてお酒をテーマにした観光に取り組んでいます。合言葉は「播磨は日本酒のふるさと」。「播磨には麹を使って日本酒を造ったという最古の文献があり、また最高級の酒米である山田錦の最大の産地でもあります。そんな播磨にある22の酒蔵がそれぞれ個性的な酒造りをしています。課題としては酒蔵ひとつひとつが離れているのでどう回るかということ。広いエリアの食べ物と一緒にお酒を楽しむようなものができればと思います」と説明しました。

「広いエリアの食べ物と一緒にお酒を楽しむようなものができれば」(はりま酒文化ツーリズム協議会事務局の髙井貴雄さん)

訪日外国人がお酒を買いやすい仕組みをつくる

 広島・賀茂泉酒造株式会社の前垣さんは「酒の街・西条を酒都としてアピールしたい」と意気込みを語りました。西条は東西1キロの範囲内に歩いて回ることができる酒蔵が7つあるほか、毎年10月には全国1000蔵から1000銘柄ものお酒が集まる酒まつりが開催され、2日間で20〜25万人もの人が全国から訪れるそうです。「外国人対応のため、クレジットカードを使えるレジを導入したり、英語やフランス語に対応できるようにしています。また西条を舞台にした映画も公開されることが決まり、聖地巡りにも期待が持てます」と話しました。
 最後に沖縄県酒造組合の富村さんは「沖縄のお酒といえば泡盛。沖縄には47の酒蔵があり、うち20が離島にあります。我々のコンセプトは時代を越えた地域と酒造所の親和性。各地域の文化が持っているお酒の価値を共感することを目指しています。包括横断的な仕組みをつくり、ツーリズムを通じてコンセプトを継承していければと思います」と述べ、沖縄の文化と酒造所の親和性をアピールするためのツーリズムパンフレットの配布や、各酒造所を回遊できるクーポンブック「酒蔵pass」の販売、沖縄の食とのペアリングイベント「島酒フェスタ」の開催など、お酒に関するさまざまな取り組みを紹介しました。

「「外国人対応のため、クレジットカードを使えるレジを導入したり、英語やフランス語に対応できるようにしています」広島・賀茂泉酒造株式会社の前垣壽宏さん

「我々のコンセプトは時代を越えた地域と酒造所の親和性。包括横断的な仕組みをつくりたい」(沖縄県酒造組合の富村朝弥さん)

 残念ながら時間の都合で予定されていたパネルディスカッション等は割愛されてしまいましたが、今回のセミナーではお酒というツールを起点にして観光客を呼ぶための各地域のさまざまな工夫が見られました。外国人に日本の良いところを知ってもらうきっかけとして日本のお酒が良いつなぎ役となるのではないでしょうか。
(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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