海外富裕層の訪日を促進させるための方法とは?

本物の体験であれば出費は惜しまない人々に向けて何を提供すべきなのか/ツーリズムEXPOジャパン

2018年11月14日
インバウンドにおいて重要とされるのが「海外富裕層」です。落とすお金やリピーターの点で、バックパッカーとは雲泥の差があるからです。「ツーリズムEXPOジャパン」でも「ラグジュアリー・トラベル・マーケット・シンポジウム」と題して海外富裕層マーケティングをいかに促進させるかが議論されました。今回は海外富裕層のインバウンドについて交わされたトークライブの採録をお届けします。

(パネリストの皆さん 写真左より)株式会社クリル・プリヴェ 創業者&CEO 高野雅臣さん、一般社団法人せとうち観光推進機構 外部人材アドバイザー、株式会社 Intheory 代表取締役村木智裕さん、グランドハイアット東京 チーフコンシェルジュ、レ・クレドールジャパン バイスプレジデント今泉愛子さん

世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」が2018年9月20〜23日の期間、東京ビッグサイトで開催されました。

 今回の「ツーリズムEXPOジャパン」には世界136カ国の国と地域から1,441もの企業・団体が趣向を凝らした出展を行い、4日間の来場者数は過去最高となる207,000人を記録しました。

 また訪日インバウンドや地域への集客・送客をテーマにしたセミナーが多数開催されました。どのセミナーもほぼ満席となる盛況ぶりで、業界関係者の関心の高さがうかがえました。

 今回の記事では9月21日に開催されたセミナー「ラグジュアリー・トラベル・マーケット・シンポジウム」(モデレーター:柏木隆久氏さん/日本政府観光局理事、パネリスト:高野雅臣さん/株式会社クリル・プリヴェ 創業者&CEO、村木智裕さん/一般社団法人せとうち観光推進機構 外部人材アドバイザー、株式会社 Intheory 代表取締役、今泉愛子さん/グランドハイアット東京 チーフコンシェルジュ、レ・クレドールジャパン バイスプレジデント)より、訪日客の長期滞在と消費拡大のカギを握る富裕層旅行市場「ラグジュアリー・トラベル・マーケット」について、マーケティングやプロモーションのヒントをレポートします。

富裕層の志向は変化し続けている

「欧州系の人は日本文化を奥まで体験することを望んでいます。コストがかかっても本物の体験であればやりたい。誰でも体験できるものについてはシビアです」(高野雅臣さん)

そもそも富裕旅行とはどのように定義されるものなのでしょうか? 日本政府観光局の柏木さんによると「資産額基準が一般的だが、着地での消費額が100万円以上」が富裕旅行と定義され、また富裕層は高い快適性を求めるシニア層と、本物の体験を求める若くして成功した人の二種類に分けることができるそうです。「特に最近は価値のあるところにお金をかける、例えば飛行機はエコノミークラスでも5つ星ホテルに宿泊するような富裕層が増えています」と柏木さんは富裕層の志向変化について話しました。

 富裕層の志向変化について株式会社クリル・プリヴェの高野さんは「特に欧州系の人は日本文化を奥まで体験することを望んでいます。例えば貸し切りやアレンジなど、コストがかかっても本物の体験であればやりたい。逆にインターネットで見ることができるような、誰でも体験できるものについてはシビアです」とコメント。

 またグランドハイアット東京の今泉さんは「ホテルはビジネス目的のお客様がメインですが、週末の1日を楽しむために新しい体験を求める人が多いです。そのため自分のために何かをしてくれる、他の人が体験していない特別さが喜ばれます。私どもでも日本の出汁に興味がある方に鰹節職人を紹介したり、源氏物語の論文を書いている方を東大の教授に面会させるなど、できる限りの対応をさせていただいています」と、富裕層が特別な体験を求めていることについて言及。

 株式会社Intheoryの村木さんは「ラグジュアリー・ツーリズムには色々なケースが求められるので、複数用意しておきセレクティブにすることが大事です」と話しました。

富裕層を満足させるために心がけるべき普段の行動とは?

「相手の目的に合わせた旅のプログラムを提供できるかヒアリングにも気を使っています」(今泉愛子さん)

 それでは富裕層に日本を目的地として選んでもらうためにはどうしたら良いのでしょう?高野さんは「富裕層は本物の体験を求める傾向にあるので、まず自分自身が本物の体験をしているか、本物の人に会っているかを意識しています。また相手の目的に合わせた旅のプログラムを提供できるかヒアリングにも気を使っています」と普段意識していることを話しました。

 今泉さんも意識していることについて「お店などを紹介する際は、まず自分のアンテナを拡げ、体験し、それが良いものであることを認識からお客様に紹介するようにしています。ただしすべてをカバーできるわけではないので、自分で認識できないものについては信頼できるネットワークを活用するようにしています」と、富裕層の満足を得るためのポイントを紹介。

 村木さんは「相手を知ることが大事」と話し、相手がどんなものを好むのかを探る一般的なマーケティングリサーチと、相手がその情報をどこで知ってて日本を旅先として決めるのかの要因を探るカスタマージャーニーマップが必要だと、リサーチのポイントについて説明しました。

富裕旅行の促進にあたっての問題・展望

「インフラの整備が不可欠です。そして地域のマインドを高めることが課題となるでしょう」(高野雅臣さん)

 最後に富裕旅行の促進にあたっての問題や展望についてひと言ずつコメントがありました。

 まず高野さんは「いかに富裕層に提案することができるか、普段の情報収集や地域のコンテンツ強化、キーマンとのネットワークづくり、体験や勉強を続けることが必要です。またローカルベネフィットをサスティナブルにすることも重要です。特に地域は外国人の受け入れに慣れていないことが多いので、一人勝ちではなく他のみんながビジネスとして成り立つような仕組み、一つの観光地ではなく地域全体、日本全体として提案する必要があります」と話しました。
 
 今泉さんは「外国人の不安に思う点をいかに解消できるかが大切です。特に自分だけの体験をしたい個人旅行者は、言葉がどれだけ通じるか、受け入れてもらえるかなど不安に思っています。また電車のチケット手配、地方交通の複雑さなどの交通面や、アレルギーや宗教などの食材対応などの不安にもにどれだけ対応できるかが求められます」と訪日客の持つ不安について話し、「私たちコンシェルジュはホテル内での対応までですので、各地に協力してくれる人や地域一丸で受け入れる体制を整えることは大事だと思います。ここをしっかり対応すると訪日客にファンになってもらえ、家族や友人への口コミへと繋がります。点と点をつないだ線や面で迎え入れることが大切です」と続けました。

 村木さんは「インフラの整備が不可欠です。民間企業にとってビジネスの対象として取りに行くという機運を作る。そして地域の人に自分たちのビジネスにプラスになることを認識してもらう。地域のマインドを高めることが課題となるでしょう。人が来なければインフラやプロダクトは活きません。まずは投資だと思って情報を発信し、できるだけ多くの人に情報を届ける必要があります」と締めくくりました。

 オリンピックやラグビーワールドカップを控え、世界から注目を集めている日本。注目を集めている今だからこそ外国人富裕層を獲得できるチャンスだといえます。このチャンスをものにするためにもネットワークづくりや情報発信を今から進めておく必要があるのではないでしょうか。

モデレーターを務めた日本政府観光局理事の柏木隆久氏さん

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒト・モノ・カネ・情報」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

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