企業インフラ、管理インフラの重要性。

2018年11月5日
システムやAIを会計に導入するべきか否か? 恐れてばかりでは会社は前進できません。積極的に管理インフラの構築をして、会社全体が慣れていくことをお勧めします。それは時間を有効に使うことにつながり、競争力を高めることにもなっていくはずです。システムやAI導入は、社員一人ひとりが付加価値の高い仕事へのシフトに向かう第一歩になる可能性を秘めています。 

 4月の当連載コラム「会計ってなんだろう?」を覚えていらっしゃいますでしょうか。私はそこで「会計とは、会社の業務活動においてお金にまつわること全てを網羅した記録なんです」と強調しました。企業活動の記録は、企業が成長・永続していくために決して疎かにしてはいけない重要な機能の一部であり、企業インフラなのです。
 
 このところAIやクラウドの普及・低価格化により、経費精算や給与計算・人材評価等々の管理インフラが続々と販売されています。いまや管理インフラ・ソフトは群雄割拠の状況で、ある意味、乱立しているといってもいいでしょう。

 では、自社に合った管理インフラを導入するためにはどのソフトを入れればいいのでしょうか? ベンダーのHPで読み込んでも複雑すぎてさっぱりわからない、あるいはイメージのみの表現のため本質が伝わってこない、という経験はありませんか?

 「習うより慣れろ」で、色々なソフトを実際に使ってみないと使い勝手はわからないことが多いし、クラウド型のソフトの場合は、使っていく中でアップデートが重ねられ機能が向上していきます。(WindowsやiPhoneなんかをイメージしてみるとわかりやすいかもしれませんね。)
 
 私の実感としては、システムとAIによりかなりの省力化・精緻化が図れます。現場の管理サイドでの作業の8割はルーチンワークですが、それにほぼ対応できているように思います。

 しかし残りの2割は自社特有の事象やイレギュラーに発生する案件です。これらに対して、システムやAIが完全に対応できるかは大いに疑問があります。

 そうすると、システムやAIがきちんと対応しているかを見極める管理業務が今後、一番重要な仕事になってくるはずです。つまり、新たな管理業務をこなせる人材育成に力点を置かなければなりません。システムやAIが対応できない場合には、それを制御するためにAIに定義をつける、あるいは手作業で修正していかなければならないからです。

 管理インフラを構築することにより、データがサーバー上にずっと閲覧可能な状態で残り続けることも重要な機能となっていきます。自分の会社のデータがインフラとしての価値を持つ時、気をつけないといけないのは、そのデータの価値も知らずに、ベンダーが勝手にデータを放り投げてしまうことです。(つい先日もそんな事件がありましたね)。

 ベンダーにお願いしたいのは、インフラを担っている自覚をもっていただきたいということ。もしやめるにしても、引継ぎ先をしっかり決め、利用者が使い続けられる統合方法を考えて欲しいと思います。(インターネット回線の会社などはきちんと引継ぎ統合されています。)
 
 システムやAIを会計に導入する際には、いまお話ししたような懸念事項もいくつかあります。しかし恐れてばかりでは会社は前進できません。積極的に管理インフラの構築をして、会社全体が慣れていくことをお勧めしたい。それは時間を有効に使うことにつながり、競争力を高めることにもなっていくはずです。システムやAI導入は、社員一人ひとりが付加価値の高い仕事へのシフトに向かう第一歩になる可能性を秘めています。 

★関連リンク

★李 日生の連載

  • 会計ってなんだろう?

    4月から新年度の企業さんも多いかと思います。これを機に「会計ってなんなんだろう?」をあらためて考えてみてはいかがでしょうか。

  • 経営は、毎日、毎月、コツコツと。

    経営者が現場で陣頭指揮を取り、肌感覚で対応できるのは成長前の初期段階だけです。会社が成長するにつれ、経営者は日々の数字を確認していくことが求められます。

★おすすめ記事

  • HRテクノロジーを駆使して付加価値につなげる人事部へ!

    「HRテクノロジー」を活用する企業が増えています。HRテクノロジーとはIT技術を使い採用や人材育成、労務管理などの人事業務を行うことができるテクノロジーのこと。テクノロジーというと理系のイメージが強いわけですが、文系の人材でも十分に活用することができるのでしょうか?

  • 中小企業こそ導入したい! 最近話題の「RPA」って何?

    中小企業にとって、「人材採用」による人的リソース不足の解消はなかなか解決しない問題です。解決できなければ、現在自社で働いている社員により効率よく多くの業務を担ってもらう他はありません。とはいえ、それぞれの社員が働ける時間には限りがあります。「働き方改革」の流れの中、仕事が増えるからといって労働時間を増やすようなやり方は、時代に逆行しているといえるでしょう。人を採用せず、今いる社員の労働時間も増やさず、人的リソースに対処する。そのための切り札として今期待されているのが、RPA(Robotic Process Automation)です。

執筆者: 李 日生 - プレジデントタイム株式会社 代表
慶應義塾大学経済学部卒業後、公認会計士試験合格、監査法人トーマツ国際部に入社・配属。国際企業(商社・通信事業会社・運輸会社等)の連結会計やM&Aを担当、中小企業の経営コンサルティングも数百社経験する。現在はプレジデントタイム株式会社、神宮前アカウンティングファーム株式会社、株式会社H HOLINGS、有限会社ルーベ、神宮前会計を主宰。会計・税務・経営・飲食・不動産等、実際の経営者として代表取締役視点で多岐に及ぶ経験を重ねている(「頭でっかちの机上の空論が大っ嫌い」を自認)。近刊に『忙しい社長を救う経理改革の教科書』(幻冬舎)がある。

コラム新着記事

  • どこに“期待”をするべきか?

    コミュニケーションの達人、「おもてなし電話」の江尻高宏さんの連載コラム。今回は具体的な方法論から少し話題を変え、対人関係における心の有り様について考えます。テーマは「相手への期待」です。

    2018年12月12日

    コラム

  • TVドラマ『ハラスメントゲーム』 ゲームのカードのように多様化・複雑化するハラスメントの背景にあるもの

    テレビ東京の新しい顔として注目されつつあるのが「ドラマBiz」枠だ。『ガイアの夜明け』『カンブリア宮殿』といった「日経スペシャル」系番組のイメージに寄せる形で今年再スタート。そして、現在放送中で高い評価を得ているのが『ハラスメントゲーム』だ。

    2018年12月10日

    コラム

  • 地域資源をマネタイズし雇用を生む、せとうちのローカルベンチャー 〜尾道/ディスカバーリンクせとうち編〜 

    全国各地で行われている地域資源を活用した特産品や観光開発。多くは「作る」ことがゴールになり、それをどう「売るか」にまで力が及んでいません。しかし地域資源活用とは、どうマネタイズするか、そのビジネスモデルを考えることに尽きます。今回は独自の視点で地域資源を収益事業化する、せとうちのローカルベンチャーにフォーカス、そのビジネスモデル構築の視座と手法に迫ります。

    2018年12月4日

    コラム

  • もうインバウンド集客で悩まない!【第2回】

    訪日外国人に対して情報発信をしたいが、有効な手段が分からないというインバウンドマーケティング担当者のために、「今だからこそ実施すべき、動画広告のゼロから100まで」を、分かりやすくハウツーでご紹介する新連載。第2回では、兵庫県豊岡市・城崎温泉の動画プロモーションの成功事例から押さえるべきツボをピックアップします。

    2018年11月12日

    コラム

  • 今どきの新人は電話恐怖症でウツになる!? そして退職!?

    「電話恐怖症」という言葉を聞いたことがありますか? 電話が鳴ると、緊張して動悸がしたり、ひどいとパニックになったりなど、うまく電話が取れないというものです。この「電話恐怖症」、今どきの新入社員(新人)に増えてきているということをご存知でしょうか?

    2018年11月7日

    コラム

  • 熱海の奇跡! シャッター商店街を人気スポットに変えた戦略

    長らく低迷にあえいできた熱海が復活を遂げ話題となっています。1960年代には年間500万人を超える宿泊客で賑わった一大観光地でしたが、2011年には246万人にまで落ち込みました。しかし、そこからわずか4年、宿泊客数は308万人へ、奇跡とも呼ばれるV字復活を果たしました。その起点の一つとなったシャッター商店街の再生にフォーカス、”熱海の奇跡”を起こした挑戦とその戦略に迫ります。

    2018年11月2日

    コラム

  • 斜めから見る〜今月の一冊 ⑤『大本営参謀の情報戦記』

    今年は戦争、特に太平洋戦争の際の日本軍(の失敗)についての本が、ビジネスとの絡みでよく読まれました。そのなかでも定番とも言えるポジションを得ているのが、今月の一冊『大本営参謀の情報戦記』です。文庫本の帯では田端信太郎さんも絶賛されています。70年前の戦史をいま、どうビジネスに活かせばいいのでしょうか? 長沖竜二さんが斜めから読み解きます。

    2018年10月24日

    コラム

  • プログラミング不要で導入可能! チャットボット徹底攻略【後編】

    お客様からの問い合わせへの対応や各種手続きの受付に、「チャットボット」を利用する企業が増えています。前編では、チャットボットに何ができるか、また既にビジネスで活用されているチャットボットの事例をいくつか紹介しました。後編では、チャットボットでできることと、作成ツールを紹介しましょう。

    2018年10月17日

    コラム