ICT活用で地域観光の課題を解決する!

AI、データ連携、セルフレジ・・・スマホ対応だけではない「旅のデジタル化」/ツーリズムEXPOジャパン

2018年10月31日
2020に向けてさらに加速が期待されるインバウンド。世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」では様々な議論が交わされましたが、今回はICTを軸に交わされたトークライブの採録をお届けします。地域の観光で徐々に取り入れられている「旅のデジタル化」。その最前線として岐阜県(下呂、高山)の例から考えます。

(写真時計回りに)日本政府観光局企画総室デジタルマーケティング室室長・吉田憲司さん、下呂温泉観光協会会長・瀧康洋さん、トリップアドバイザー代表取締役・牧野友衛さん、トラベルボイス代表取締役社長・鶴本浩司さん、エクスペディアホールディング地方創生推進室室長・谷口紀泰さん

 世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」が2018年9月20〜23日の期間、東京ビッグサイトで開催されました。

 今回の「ツーリズムEXPOジャパン」には世界136カ国の国と地域から1,441もの企業・団体が趣向を凝らした出展を行い、4日間の来場者数は過去 となる207,000人を記録しました。

 また訪日インバウンドや地域への集客・送客をテーマにしたセミナーが多数開催されました。どのセミナーもほぼ満席となる盛況ぶりで、業界関係者の関心の高さがうかがえました。

 今回の記事では9月21日に開催されたセミナー「ICTを活用した観光地域づくりのあるべき姿を考える」(モデレーター:鶴本浩司さん/トラベルボイス株式会社 代表取締役社長、パネリスト:吉田憲司さん/日本政府観光局 企画総室 デジタルマーケティング室 室長、谷口紀泰さん/エクスペディアホールディング株式会社 地方創生推進室 室長 兼 関西・北陸地区本部長、牧野友衛さん/トリップアドバイザー株式会社 代表取締役、瀧 康洋氏/一般社団法人下呂温泉観光協会 会長 )より、岐阜県下呂温泉をモデルに地域デジタル導入とその課題解決についてレポートします。

観光・旅行ビジネスにおいて地域とデジタルの連携は今まで以上に重要になってくる

ICT活用を下呂温泉と飛騨高山の比較から考える

 スマートフォンが普及している今、旅行においてもデジタル要素は欠かせないものとなっています。これまではインターネットを使って旅先の検索や予約などを旅行前に行うのが主流でしたが、今や旅行中のお店探しや地図利用などのいわゆる「タビナカ」でも積極的にインターネット活用が進んでいます。

 これらの「旅のデジタル化」は地域の観光でも徐々に取り入れられています。下呂温泉観光協会の瀧さんは下呂温泉での取り組みについて、30年前から蓄積している宿泊データを元にマーケティングを仕掛けていること、スマートフォンを活用したスタンプラリー展開、AIコンシェルジュの旅館への導入などを実例として挙げました。

 また下呂温泉の現状について、トリップアドバイザー株式会社の牧野さんは岐阜のインバウウドの状況を「データ的にも岐阜県は国内観光地の中で上位に入っています。また岐阜県内では下呂は中国圏、高山は欧米圏からの訪日客が多い傾向にあります」と説明、日本政府観光局の吉田さんも「岐阜県内では特に高山に人が集中している」と話しました。

 これらのことから岐阜県は訪日インバウンドの目的地としては有力であるものの、その多くは高山を訪れており、下呂はまだまだ訪日インバウンドの獲得に余地があることが分かります。

 それでは下呂にインバウンドを呼ぶためにはどうしたら良いのでしょうか? エクスペディアホールディング株式会社の谷口さんは「下呂と高山の予約動向を分析してみると、宿泊数が6倍、連泊数が1.2倍ほど高山の方が多いことが分かります。しかしながら客室単価は下呂は高山の1.5倍です。これを多少下げてでも送客を増やすなどの工夫が必要なのかもしれません」と説明しました。

セミナー「ICTを活用した観光地域づくりのあるべき姿を考える」

下呂に欧米からのインバウンドを増やすには?

 次に瀧さんの「下呂には香港のお客様が多いが、旅前のデータを分析して欧米系のお客様も増やしたい」という課題に対してさまざまな意見が飛び交いました。

 牧野さんは「インバウンド向けにトリップアドバイザーへのオーナー登録を行い、コンテンツ・情報量を増やす」ことを提案。トリップアドバイザーは世界最大の旅行サイトであり、旅行前のプランニングの際にきちんと見てもらえるような工夫が必要だということです。さらに牧野さんは体験チケットの販売の仕組み作りについても提案しました。「アクティビティが流行していますが、オンラインで購入できる仕組みが日本にはまだ少ない。ネットはプランニングの場だけでなく、コミットさせる場としての役割を持たせる必要があります」

 また吉田さんはデータ活用について「デジタル化の意味を正しく考える必要があります。データをデジタルの領域だけでなく、組織全体の資産として扱うということで。そのためには部門を超えたデジタルデータの連携が必要になるでしょう」と話しました。

 下呂をインバウンドの目的地にすることについて谷口さんは「日本の旅行商品は半年先までしか買えないケースが多く、これがマーケティング効率を悪くしていると言えます。オンラインへの在庫を提供し、1年先まで買えるようにすること。また商品も1泊2食などにこだわるとチャンスを逃します。宿で食事するかどうか、そんな先の予定は分かりませんよね。そこで例えば一泊素泊まりの商品を提供し、チェックインの際に食事を付けるかの確認を取るなど柔軟な対応を取れば、予約の際の単価を下げて集客につなげることもできるのではないでしょうか」と具体的な例を挙げました。

地域の観光で徐々に取り入れられている「旅のデジタル化」

観光・旅行ビジネス、これからのデジタル活用は?

 最後に旅行とデジタルの今後についてひと言ずつコメントがありました。瀧さんは「データを見ると、トレンドとされる宿泊と体験の組み合わせはあまり売れないことがわかりました。むしろ下呂の温泉の良さが認知されてきています。今後は温泉に関する旅行商品の開発や、各国ごとの特性を分析していきます」と話しました。

 牧野さんテクノロジーと人手不足について「デジタルでできることの範囲が広がっています。例えば交通シェアリングや自動運転、セルフレジなどを活用すれば人手不足の解決になりますし、利便性がアピールポイントとして魅力になるのではないでしょうか」と技術の将来性について言及。

 一方で吉田さんは「地域の人がどのように情報を発信するか、例えば旅行者とのコミュニケーションにとってテクノロジーがどう影響するか考える必要があります。情報の受け取り方など、テクノロジーの変化によってプラスにもマイナスにも作用すると思います」とテクノロジーの使い方について注意を促しました。

 谷口さんは「今後さらにデジタルやテクノロジーは進化すると思います。具体的にはモバイル、AI、音声、チャットです。例えば音声技術が進化すれば旅行会社や電話対応が不要になりますし、AIやチャット技術が進化すれば24時間お客様対応ができ、しかも待ち時間もなくなります」と旅行業界とテクノロジーの未来について話しました。

 誰もが簡単にインターネットにアクセスして情報を得ることができる時代だからこそ、地域とデジタルの連携は今まで以上に重要になっています。また技術の進歩にあわせ、柔軟なデジタル化・テクノロジーの導入を進め、マーケティングや情報発信に活用することが地域の観光振興を加速させるための打ち手になると言えそうです。

世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」。世界136カ国の国と地域から1,441もの企業・団体が出展、来場者数は過去最高となる207,000人を記録した

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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