アニメツーリズム〜集客だけでなく地域資源の消費につなげよ!

アニメ聖地を核に、権利者・自治体・地域産業・インフルエンサーを連携させる/ツーリズムEXPOジャパン

2018年10月29日
2020に向けてさらに加速が期待されるインバウンド。世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」では様々な議論が交わされましたが、今回はクールジャパン・コンテンツのひとつアニメを活用したインバウンドについて。「アニメツーリズム」を地域においてさらにビジネス化するためにはどうすればいいのでしょうか? アニメツーリズム協会のお二方の話から抽出します。

一般社団法人アニメツーリズム協会 専務理事 鈴木則道さん。アニメツーリズム協会の役割は「訪日マーケット拡大のためのオールジャパン体制の構築」

 世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」が2018年9月20〜23日の期間、東京ビッグサイトで開催されました。

 今回の「ツーリズムEXPOジャパン」には世界136カ国の国と地域から1,441もの企業・団体が趣向を凝らした出展を行い、4日間の来場者数は過去最高となる207,000人を記録しました。

 また訪日インバウンドや地域への集客・送客をテーマにしたセミナーが多数開催されました。どのセミナーもほぼ満席となる盛況ぶりで、業界関係者の関心の高さがうかがえました。

 今回の記事では9月20日に開催されたセミナー「「アニメ」と「地域」が手を組んでの”インバウンド施策”及び”地域活性化”について」(一般社団法人アニメツーリズム協会 専務理事 鈴木則道さん/同 理事兼事務局長 寺谷圭生(たまき)さん)より、アニメツーリズムの現状と課題についてレポートします。

「アニメ聖地」を訪れたい外国人の増加

 最初に登壇した鈴木さんは、株式会社アスキー・メディアワークス、株式会社KADOKAWAを経て一般社団法人アニメツーリズム協会の専務理事を務めています。アニメツーリズムとはアニメの舞台となった地域を巡る「聖地巡礼」と、日本の文化や食の体験を振興することを目的とした観光スタイルのこと。

 鈴木さんによると2017年の訪日インバウンド2800万人のうち、映画やアニメを目的に訪日した外国人は140万人(4.9%)、またアニメを含む日本のポップカルチャーを目的に訪日した外国人は418万人(14.6%)であり、アニメや漫画に代表される日本の文化に関心を持っている外国人の多さがうかがえます。

 日本のアニメは東南アジアで特に人気が高く、「アニメを起点に日本食や買い物、温泉など自分に合った日本のコンテンツを楽しむインバウンドが増えています」と鈴木さんは話します。インバウンドの関心がモノ消費からコト消費へと移行しつつあると言えそうです。

 次に日本のアニメ産業について鈴木さんから説明がありました。日本のアニメ産業はこの2〜3年で右肩上がりに成長、現在は2兆円規模にまで達しており、そのシェアはテレビや映画、ビデオなどの一次流通よりも、グッズ化・遊興(パチンコなど)・ライブといった二次流通がほとんどを占めているとのことです。また海外シェアについては北米と中国が大半を占めているそうです。

アニメツーリズム協会が推進する、地域でのコラボレーション

アニメツーリズム協会ではアニメの舞台やモデルとなった地域を「日本のアニメ聖地88」として制定、国内外を問わずアニメファンが楽しめるような仕組み作りをしている

 ところでアニメツーリズム協会とはいったいどのような団体なのでしょうか。鈴木さんはアニメツーリズム協会の役割を「訪日マーケット拡大のためのオールジャパン体制の構築」であると話します。

 例えば協会ではアニメの舞台やモデルとなった地域を四国霊場八十八ヶ所巡礼になぞらえ「日本のアニメ聖地88」として制定。ご朱印スタンプを設置するなど、国内外を問わずアニメファンが楽しめるような仕組み作りをしています。「日本アニメのコアファンとクールジャパンファンを訪日旅行者にするため、ジャパンコンテンツを入口として来日をアピールし、また聖地での満足度を向上させることで日本観光のリピーターになっていただくのが狙いです」と鈴木さんは強調しました。

 この「日本のアニメ聖地88」は訪日インバウンドへのメリットだけでなく、アニメの権利元や自治体・地域へのメリットもあると鈴木さんは話します。「毎年100作品もの新作アニメが作られますが、旧作アニメのファンはそのまま残っています。そこで聖地巡礼を意図的に仕掛けることによって、旧作品のロングテール化・ロングライフ化を図り、広義のアニメ市場としてビジネスを拡大することができます。また作品・ツアーを通じて日本の魅力の再発見につなげることや、コンテンツ産業への地域人材取り込みによる人材活用や育成を考えています」

アニメツーリズム成功のカギは、地域・作品・企業の連携

一般社団法人アニメツーリズム協会 理事兼事務局長 寺谷圭生さん。「アニメを起点に日本食や買い物、温泉など自分に合った日本のコンテンツを楽しむインバウンドが増えています」

 続いて登壇した寺谷さんは、KADOKAWAを経てアニメツーリズム協会の理事兼事務局長を務めています。

 寺谷さんは「アニメ聖地では観光客がアニメの登場人物と同じ体験ができ、グッズの販売などで経済効果が大きい」と話したうえで、「ただし成功事例は稀です」と釘を刺しました。アニメ聖地が成功するためには、作品の人気、地域の作品への思い入れ、原作者の地元愛、そして行政のスピード感など複数の要素が重なる必要なのです。

 現状は、アニメ聖地成功の鍵となる地域・作品・企業の分断が大きな課題であると寺谷さんは指摘します。地域はコンテンツビジネスの仕組みへの理解度が低く、一方、聖地を訪れるファンのマナー等が懸念材料としてあること。作品はビジネスとしてペイできるかという不安と、中途半端にやることで地域やファンからのクレームを恐れていること。企業は権利の窓口をどうするか、またファンのニーズ等マーケティング手法に苦心していることが分断の理由です。そこでアニメツーリズム協会がこの三者のハブとなり、これらの課題を解決することを目指しているとのことです。

 最後に寺谷さんは協会の今後のアクションとして、パンフレット・公式サイト・イベントなどの情報発信を行うこと、パンフレットの設置・聖地認定プレートの制作・ご朱印帳の販売といったスポット作りを充実させること、セミナーや勉強会を行い地域企業との取り組みを進めていくことの3点を挙げ、「アニメ目的で日本に来ていただき、神社など日本的なスポットの素晴らしさを再発見していただければ」と締めくくりました。

 外国人にとって魅力的な日本文化となる「クール・ジャパン」戦略推進のためにアニメ産業はその起点となることが期待されます。アニメツーリズムを成功させるためには地域と連消し、リピーターとなる「日本ファン」を生み出すことが重要であると言えそうです。

世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」。世界136カ国の国と地域から1,441もの企業・団体が出展、来場者数は過去最高となる207,000人を記録した

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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