海外旅行者を呼び込むためにはデジタルを徹底活用せよ!

「せとうちDMO」を成功に導いたマーケティング手法とは?/ツーリズムEXPOジャパン

2018年10月22日
2020に向けてさらに加速が期待されるインバウンド。東京や京都だけでなく、地方への集客が観光立国・日本の鍵を握ります。世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」では様々な議論が交わされましたが、今回は10月19日の記事に続き、「せとうちDMO」の成功事例からデスティネーションマーケティングの立案方法についてのクロストークを採録します。(このシリーズは7回にわたって紹介します)
 世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」が2018年9月20〜23日の期間、東京ビッグサイトで開催されました。

 今回の「ツーリズムEXPOジャパン」には世界136カ国の国と地域から1,441もの企業・団体が趣向を凝らした出展を行い、4日間の来場者数は過去最高となる207,000人を記録しました。

 また訪日インバウンドや地域への集客・送客をテーマにしたセミナーが多数開催されました。どのセミナーもほぼ満席となる盛況ぶりで、業界関係者の関心の高さがうかがえました。

 今回の記事では9月20日に開催されたセミナー「「知る」から「来る」までをデータで描く ~せとうちDMOから見えてきたデスティネーションマーケティング~」(株式会社ヴァリューズ 執行役員 子安亜紀子さん/株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 杉山啓さん/株式会社Intheory 代表取締役 村木智裕さん/株式会社Chapter White 代表取締役 ホワイト美佳さん)より、デジタルデータを活用したデスティネーションマーケティングについてレポートします。

*「デスティネーションマーケティング」
ある地域を潜在的観光客に選ばれる観光目的地とするための戦略立案とその実践を意味する観光用語)

株式会社Intheory 代表取締役 村木智裕さん。DMO設立・運営やインバウンドマーケティング、デジタルマーケティングの支援を行っている

デジタルマーケティングを活用して旅行者の行動を把握する

 最初に登壇した村木さんは広島県庁勤務を経て、せとうちDMOを設立。現在は株式会社Intheoryの代表取締役としてDMO設立・運営やインバウンドマーケティング、デジタルマーケティングの支援を行っています。

 まず村木さんは「旅行者がトータルでどういう行動を取るかを踏まえた施策が必要です。そこで目安となるフレームがあると施策が組み立てやすくなります」と話し、フレームの例として「DREAM」「CONSIDER」「ACTIVATE」「TRAVEL」「SHARE」の旅行者の行動を追ったカスタマージャーニーマップを挙げました。これらの行動をどのように遷移させ最終的な目標である「TRAVEL」につなげていくかが重要だと村木さんは語ります。

 その方法として考えられるのがデジタルマーケティング。例えば各企業や団体が運営するWebサイト(オウンドメディア)は色々な情報を入れ込むことができる反面、発信力が弱いというデメリットがあります。そこで顧客の目を引くようなデザインや記事の工夫をする、サイトから直接予約ができるブッキング機能を持たせる、さらに流入策としてペイドメディアやアーンドメディアを活用することが必要であると村木さんは話します。

 「結果をデータで見て検証できるという、デジタルマーケティングの特徴を活かすことが必須です」とデータ活用の重要性を強調し、世の中にあるツールを使って自分のマーケティングが顧客の行動にどうつながっているか把握する、またKGI/KPIの成果評価手法を決めておくなど、データを活かすための方法をいくつか挙げました。

行動に基づいたデータ分析で顧客の動きを可視化する

株式会社ヴァリューズ 執行役員の子安亜紀子さん。ヴァリューズはインターネット行動ログの分析事業を行っている

 続いて登壇した子安さんは、システムエンジニア、Webサイトコンサルティング、インターネットリサーチ事業などの職歴を経て、現在は株式会社ヴァリューズの執行役員を務めています。ヴァリューズではインターネット行動ログの分析事業を行っており、子安さんは「知る」から「来る」までのカスタマージャーニーを、このログデータを使って可視化することについて紹介しました。

 まず子安さんは「日本のインターネット普及率は8割、特に13〜59歳への普及率は9割に達しています。また旅行予約の約3割はオンラインを利用していること、そしてトリップアドバイザーや4トラベルといった口コミサイトが伸びていることがわかります」と、現在のインターネットと旅行の関係について説明。この動きをカスタマージャーニーマップに当てはめてみると、それぞれの段階で顧客が見ているサイトが異なることが分かるそうです。

 顧客が見ているサイトの違いについて、株式会社ヴァリューズのマーケティングコンサルタント杉山さんは、実際の旅行者のカスタマージャーニーを事例として挙げました。まず顧客の行動は潜在検討・本格検討・行動の3つに分けることができると杉山さんは話し、「潜在検討の段階は、何となく行きたい場所や、旅先でやりたいことを確認している状態です。それがだんだんと本格化していき、最終的に予約行動へとつながっていきます」と補足。

 また、候補探しの時点ではじゃらんやトリップアドバイザーなどの口コミサイト、気になるものについてはグーグル検索し、公式サイトや実際に訪れた人のブログなどを見て調べるという行動を繰り返すことが分かるそうです。したがって、それぞれの段階に見合う打ち手を取ることが重要になると杉山さんは話し、特にSNSはコンテンツや年代、属性によって使うメディアが違うので、ターゲットに合わせたメディア選びが必要になると強調しました。

株式会社ヴァリューズ マーケティングコンサルタント 杉山啓さん

PR戦略に求められるのは「リレーションづくり」と「柔軟さ」

インバウンドに特化したマーケティング会社Chapter Whiteの代表を務めるホワイト美佳さん

 最後に登壇したホワイトさんは、PRの重要性について説明しました。PRは広告費をかけずに認知を高めるのに最適な方法であるとホワイトさんは話します。

 例えばメディアによるファムトリップ(海外の旅行事業者や有力ブロガー、メディアなどを招聘する視察旅行)は効果的であると説明し、事例としてドイツのファッション誌の取材の際には、フォロワー数の多いファッションモデル自身がInstagramに写真を投稿したり、公式写真の二次利用を取り付けるなどの成功例を話しました。

 ただし、ファムトリップは取材する側が有力であればあるほど条件が厳しくなるため、普段から良好なリレーションづくりをしておき、また柔軟な対応が求められるとホワイトさんは強調します。

 またせっかく顧客が旅行先を認知しても、実際に旅行商品が存在しなければ送客につなげることができません。そのため、旅行業界に対してもマーケティングを行い、商品開発につなげるよう働きかけることも必要であるとホワイトさんは締めくくりました。

 地域に旅行者を呼び込むためには、まずカスタマージャーニーマップのようなフレームを作ってデータを可視化し、現状と課題を浮き彫りにすること。デジタルの特徴であるデータを徹底的に活用すること。これらを踏まえつつ、顧客の行動を想像しながら最適なアプローチをすることが必要であると言えそうです。

世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」。世界136カ国の国と地域から1,441もの企業・団体が出展、来場者数は過去最高となる207,000人を記録した

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

★関連リンク

★連載「ツーリズムEXPOジャパン」

  • 「せとうちDMO」から考える、地方のインバウンド・マーケティング最前線!

    2020に向けてさらに加速が期待されるインバウンド。東京や京都だけでなく、地方への集客が観光立国・日本の鍵を握ります。世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」では様々な議論が交わされましたが、今回はそのなかから地方へのインバウンド事例「せとうちDMO」から成功への道筋を明らかにしていきます。(このシリーズは7回にわたって紹介します)

★おすすめ記事

  • 地域を“アゲる”観光行政、“サゲる”観光行政

    様々な場面で地域間の格差が拡大しています。自治体の規模や財政もさることながら、地域の活性・不活性に直結する地域間競争を勝ち抜く力の差、その基礎となる意識や意欲の面でも差は目に見えるかたちで表れてきています。今回はこの地域観光行政の格差について考えます。

  • もうインバウンド集客で悩まない!

    インバウンドが増え続けています。全国の地方自治体やDMOなどの関係機関は、幅広い地域からの訪日外国人客を誘致するためにウェブサイトの外国語対応や、集客のためのプロモーションなど、情報発信に追われているはず。新連載では、訪日外国人に対して情報発信をしたいが、有効な手段が分からないというインバウンドマーケティング担当者のために、「今だからこそ実施すべき、動画広告のゼロから100まで」を、分かりやすくハウツーでご紹介していきします。

  • 小売業から観光業へ進出!地元と連携し、新たな観光づくり

    京都丹後エリアでリゾート事業を展開する株式会社にしがきは7月、新感覚の体験型リゾートを謳う「シエナヒルズ」をオープンさせました。ここを拠点として、これまでなかった「地域ぐるみ」の観光開発で地域活性化、地方創生につなげようとするプロジェクトです。こうした試みが日本の新たなリゾートのモデルとなり得るのか注目されます。

  • ■ニュース深掘り!■DMOの課題は予算、その対応は?

    地域の観光事業を取りまとめるDMO。彼らの運用や設立に役立てるために、観光庁は観光協会などを対象にアンケート調査「国内外の観光地域づくり体制に関する調査業務の報告書」を実施。その結果を16年7月に発表した。そこで、最も大きな課題として挙げられていたのが「予算」の不足だ。

執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒトモノコトカネ」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

イベントレポート新着記事

  • 酒で地域と訪日外国人をつなげる「酒蔵ツーリズム」をさらに盛り上げるために

    訪日外国人が日本に来たら体験してみたいことの上位に「日本のお酒を飲むこと」が挙げられています。今後ラグビーワールドカップやオリンピックを控え、ますます訪日外国人が増える中、「酒蔵ツーリズム」が重要な観光コンテンツとして注目されています。「ツーリズムEXPOジャパン」から、酒蔵ツーリズムを巡って交わされたクロストークの抄録をお届けします。

    2018年11月16日

    イベントレポート

  • 海外富裕層の訪日を促進させるための方法とは?

    インバウンドにおいて重要とされるのが「海外富裕層」です。落とすお金やリピーターの点で、バックパッカーとは雲泥の差があるからです。「ツーリズムEXPOジャパン」でも「ラグジュアリー・トラベル・マーケット・シンポジウム」と題して海外富裕層マーケティングをいかに促進させるかが議論されました。今回は海外富裕層のインバウンドについて交わされたトークライブの採録をお届けします。

    2018年11月14日

    イベントレポート

  • ICT活用で地域観光の課題を解決する!

    2020に向けてさらに加速が期待されるインバウンド。世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」では様々な議論が交わされましたが、今回はICTを軸に交わされたトークライブの採録をお届けします。地域の観光で徐々に取り入れられている「旅のデジタル化」。その最前線として岐阜県(下呂、高山)の例から考えます。

    2018年10月31日

    イベントレポート

  • アニメツーリズム〜集客だけでなく地域資源の消費につなげよ!

    2020に向けてさらに加速が期待されるインバウンド。世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」では様々な議論が交わされましたが、今回はクールジャパン・コンテンツのひとつアニメを活用したインバウンドについて。「アニメツーリズム」を地域においてさらにビジネス化するためにはどうすればいいのでしょうか? アニメツーリズム協会のお二方の話から抽出します。

    2018年10月29日

    イベントレポート

  • 「せとうちDMO」から考える、地方のインバウンド・マーケティング最前線!

    2020に向けてさらに加速が期待されるインバウンド。東京や京都だけでなく、地方への集客が観光立国・日本の鍵を握ります。世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」では様々な議論が交わされましたが、今回はそのなかから地方へのインバウンド事例「せとうちDMO」から成功への道筋を明らかにしていきます。(このシリーズは7回にわたって紹介します)

    2018年10月19日

    イベントレポート

  • SNS時代のPR、投稿ネタは「365日、4シーズン、12ヶ月」コンスタントに出し続けよ!

    SNS全盛の今、従来のテレビCMのように不特定多数に情報を流すだけではコアなファンを獲得することが難しい時代であることは明らかです。そこでSNSを上手に活用し、ファン作りへとつなげるために必要なPRのポイントをいくつか紹介します。

    2018年10月3日

    イベントレポート

  • POS革命から顧客革命へ。「失われた30年」を一気に取り戻せ!

    なぜ外食産業の生産性は上がらないのでしょうか? それはイノベーションが起きていないことが原因です。1970年から85年頃にかけてはPOSレジというイノベーションが起きたことにより、飲食業は大きく成長しました。この「POS革命」以降飲食業の店舗運営には何のイノベーションも起きていません。いま必要なのは、業界のアップデートにあたる「顧客革命」をITやテクノロジーの力で実現することです。

    2018年9月20日

    イベントレポート

  • 毛細血管で健康状態をチェック!?/LINEで新卒採用!

    このところよく耳にする「健康経営」。社員の健康管理をきちんと行うことによって、会社の経営の向上につながるという考え方です。株式市場でも「健康経営銘柄」は高いパフォーマンスを示しています。今回のレポートでは、健康経営に向けたサービスや、新卒採用で利用したいLINEの活用法を紹介します。

    2018年8月22日

    イベントレポート