「せとうちDMO」から考える、地方のインバウンド・マーケティング最前線!

2018年10月19日
2020に向けてさらに加速が期待されるインバウンド。東京や京都だけでなく、地方への集客が観光立国・日本の鍵を握ります。世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」では様々な議論が交わされましたが、今回はそのなかから地方へのインバウンド事例「せとうちDMO」から成功への道筋を明らかにしていきます。(このシリーズは7回にわたって紹介します)

株式会社Intheory 代表取締役 村木智裕さん。DMO設立・運営やインバウンドマーケティング、デジタルマーケティングの支援を行っている

 世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」が2018年9月20〜23日の期間、東京ビッグサイトで開催されました。

 今回の「ツーリズムEXPOジャパン」には世界136カ国の国と地域から1,441もの企業・団体が趣向を凝らした出展を行い、4日間の来場者数は過去最高となる207,000人を記録しました。

 また訪日インバウンドや地域への集客・送客をテーマにしたセミナーが多数開催されました。どのセミナーもほぼ満席となる盛況ぶりで、業界関係者の関心の高さがうかがえました。

 今回の記事では9月20日に開催されたセミナー「せとうちDMOが実践する世界標準のインバウンド・マーケティング」(株式会社Intheory 代表取締役 村木智裕さん/株式会社Chapter White 代表取締役 ホワイト美佳さん)より、インバウンド・マーケティングの実際とDMOの担う役割についてレポートします。

地方のインバウンドを活性化させるDMO

「DMOの運営にはインバウンドマーケティングのセオリーに沿った取り組みが必要です」(村木さん)。「写真とテキスト、あとは面白い切り口さえあれば取材なしでも記事を作ることは十分可能です」(ホワイトさん)

 最初に登壇した村木さんは広島県庁勤務を経て、せとうちDMOを設立。現在は株式会社Intheoryの代表取締役としてDMO設立・運営やインバウンドマーケティング、デジタルマーケティングの支援を行っています。DMO(Destination Management Organization)とは、地域の観光物件や食、文化などに精通し、地域の人や団体と共同しながら観光地域を作る法人のことです。

 村木さんによると、2020年に東京オリンピックを控え、日本に行きたいという外国人旅行者は増えているが、地方がその恩恵を受けることができるか懸案となっています。

 外国人にとって日本は東京や京都の認知度は高いのですが、そもそも地方は訪日外国人の行き先として選択肢に入っていないという現実があります。しかし地方には多くの外国人が訪れて活性化して欲しいという希望もあり、このギャップを埋めるために必要なマーケティングと、地方の事業者が自治体と一緒に観光資源を作るのをマネジメントすることがDMOの役割だと村木さんは言います。「DMOの運営にはインバウンドマーケティングのセオリーに沿った取り組みが必要です」(村木さん)。

 訪日インバウンドを呼び込むには旅行者の購買行動、つまりカスタマージャーニーを踏まえた戦略が必要であると村木さんは話し、訪日インバウンドのカスタマージャーニーマップとして「Dream」「Consider」「Activate」「Travel」「Share」の流れを紹介しました。

成功するマーケティングプラン3つの前提と事例

会場では熱心にメモを取る参加者の姿が目立った

 それでは具体的にどのような戦略を取ればよいのでしょうか。村木さんはマーケティングプランの前提として次の3点を挙げました。まず目標の規模でマーケティングのやり方は大きく変わること、次に潜在顧客をターゲットにすること、最後に購買行動に沿った施策をとることです。

 事例として村木さんは自身が携わっている「せとうちDMO」の施策について紹介しました。まず目標規模によるマーケティングについて、せとうちDMOでは2016年に190万人だった観光客を2020年までに300万人に増やすという目標を立てました。100万人以上増やすというのはとても大きな目標であり、毎年1000人ずつ増やすのとは全く異なる戦略を取る必要があります。まずはここをしっかりと認識することが重要だということです。

 次に潜在顧客のターゲット化。例えばアメリカの人口は約3億人で、顕在化している訪日客はそのうちの120万人です。しかし海外旅行をする人は7000万人います。この7000万人を潜在顧客としてターゲット化するということです。なお村木さんは潜在顧客7000万人のうち、せとうちに関心を持ちそうな顧客が2000万人はいると見ています。

 最後に購買行動に沿った施策、マーケティングプランについて。旅行者は動画やSNS、旅行の口コミサイトや予約サイトといったオンラインと、新聞や雑誌などのオフラインを行き来しながら旅の計画を立てます。したがってどの媒体にどの戦略を載せるかがマーケティング成功のカギを握っているのです。

 成果を出すためには先程のカスタマージャーニーマップの「Travel」にたどり着く必要がありますが、実際にはその前の段階(「Dream」「Consider」「Activate」)の各数字を上げておかないと達成することはできません。なぜならカスタマージャーニーマップは先に進めば進むほど人数が減っていくからです。「Travel」の段階で100万人を呼びたいのであれば、「Travel」の前段階ではその何倍もの人に認知してもらう必要があるということです。

PRは広告費をかけずに編集でアピールする

インバウンドに特化したマーケティング会社Chapter Whiteの代表を務めるホワイト美佳さん。「PRは広告費をかけずに編集でアピールすることが必要です」

続いて登壇したホワイトさんはアメリカの政府観光局ブランドUSAや、マンダリンオリエンタルホテルグループのマーケティング・PRを経て、現在はインバウンドに特化したマーケティング会社Chapter Whiteの代表を務めています。

 ホワイトさんはまず「PR(Public Relations)は広告費をかけずに編集でアピールすることが必要です」と話します。そのためには各国のエージェンシーと連携して、現地の人々に読まれる媒体を選ぶことが必要だということです。「ただし媒体に価値ある情報を書いてもらうためには、活発にリレーションを取ることが必要です」とホワイトさんは続けました。

 このことについて村木さんも「日本は広告による情報発信に依存しています。広告はあくまでも広告であり、特に欧米の消費者は広告と分かると読まない。また予算規模が情報発信量に制限をかけているのでPRをうまく使うことが必要です。日本の広告とPRの比率は9:1ですが、理想は5:5にすることです」と話しています。

 ホワイトさんは「写真とテキスト、あとは面白い切り口さえあれば取材なしでも記事を作ることは十分可能です。そのためにも常に新しい画像を用意・ストックしておく必要があります。PRを確実に行う上で、写真を集めるということは想像以上に重要なことです」と話しました。

 今後も増加が見込まれる訪日インバウンド。地方の企業や自治体は、DMOと連携してマーケティング戦略を取ることで、実現できることがたくさんあるのではないでしょうか。

世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」。世界136カ国の国と地域から1,441もの企業・団体が出展、来場者数は過去最高となる207,000人を記録した

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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