プログラミング不要で導入可能! チャットボット徹底攻略【後編】

2018年10月17日
お客様からの問い合わせへの対応や各種手続きの受付に、「チャットボット」を利用する企業が増えています。前編では、チャットボットに何ができるか、また既にビジネスで活用されているチャットボットの事例をいくつか紹介しました。後編では、チャットボットでできることと、作成ツールを紹介しましょう。

 前編では、チャットボットに何ができるか、また既にビジネスで活用されているチャットボットの事例をいくつか紹介しました。後編では、チャットボットでできることと、作成ツールを紹介しましょう。

チャットボットでできるさまざまなこと

 チャットボットではどのようなことができるかをあらためて整理してみました。

Q&A対応

 あらかじめ登録されたQ&Aデータベースの中から、お客様の質問に対して適切な回答を探し、返信します。前編で紹介したニッセンの「ミコト」が一例です。メールや問い合わせフォームに比べるとお客様は気軽に質問ができ、会話によってお客様が本当に知りたいことを引き出してより適切な回答ができます。

手続き支援

 お客様と会話しながら必要な情報を取得し、業務処理を実行します。前編で紹介したクロネコヤマトの「再配達依頼ボット」が一例です。入力項目が多かったり、条件分岐が複雑な場合でも、1つずつ段階を踏んで情報を入力していただくので、必要な情報を漏れなく取得し、間違いのない手続きができます。

情報・コンテンツ配信

 チャットにより情報を企業からお客様に配信します。新製品、新サービスの告知やクーポンの配信に利用されます。従来はメールマガジンなどで行っていた情報配信を、チャットで行うというものです。お客様が返信すると、その返信を元に情報提供したり、手続きに誘導したりします。お客様起点ではなく、自社起点で会話を開始する機能といえます。

情報取得(アンケート)

 お客様のご意見をより積極的に聞きたい場合にもチャットボットは活用できます。クーポン情報などを配信するチャットボットで、アンケートの質問を配信し、会話形式でいくつかの質問を順番にすることができます。回答内容による条件分岐で質問の流れを変えることもできます。多くの入力項目があるアンケートフォームに比べ、チャットによる会話であれば負担を感じずに回答できます。

商品のおすすめ

 Q&A対応、アンケートなどの応用で、商品のおすすめもできます。お客様とのやりとりの中で、お客様の回答と商品データベースを照合し、関連性の強い商品を「おすすめ」として紹介します。あるいは、既に購入履歴や会話履歴のあるお客様であれば、その記録からおすすめ商品を選び、チャットにより定期的に情報配信することもできます。お客様へのセールスを自動化する機能といえます。

雑談、会話

 特に目的があるわけではなく、会話そのものを楽しむボットです。情報発信用のチャットボットへのフォローを維持する、ウェブサイトへの訪問機会を増やす、ブランドに親しみを持っていただくなどの意図で運営されます。

 雑談を目的としたチャットボッは、AI開発を行う企業が、データ収集の目的で運営する場合もあります。LINEとマイクロソフトが開発したチャットボット女子高生AI「りんな」は、女子高生りんながLINEのトークやTwitterで会話をしてくれるという設定のチャットボットで、2015年から運用されています。マイクロソフトとLINEは、りんなとユーザーの会話データを学習してAIを進化させています。また、マイクロソフトはりんなの技術を「りんなAPI for Business」としてLINEビジネスコネクトのユーザー企業に対して提供しており、LINE上で動作するチャットボット開発に利用できます。LINEでは、さまざまな企業や団体が「りんな」を利用したサービスを展開しています。

用途によってタイプを選ぶ

 チャットボットの動作の仕組みは、大きく「ルールベース型」「機械学習型」の2つに分けることができます。

 「ルールベース型」とは、あらかじめ人間が設定した規則に従って回答するボットです。基本の動作は問いに対して用意された回答を返すことです。応用としては、回答の代わりに選択肢を提示することで、シナリオに従って会話を続けることができます。
 
 ルールベース型のチャットボットでは、あらかじめ想定された問いに対しては必ず正解が決まっており、正しい情報を提示できます。一方で、想定外の質問には答えが用意されていないため、回答ができず会話が続きません。
 
 「機械学習型」とは、問いと答えを対にしたデータ(教師データ)を大量に用意してボットに学習させ、教師データに問いを与えたときにも統計的に正しそうな回答を返すボットです。「学習」で何をやっているかを簡単に説明すると、教師データの「問い」と「答え」にあたる文章を単語に分解し、それぞれに出現する単語間の関連の強さを計算します。これにより、教師データに含まれない問いが入力されたときも、関連がありそうな単語が含まれる回答を「この問いに対する回答である確率が高い回答」として抽出することができるのです。
 
 機械学習型のチャットボットの生命線は、教師データの量と質です。学習させる質の良いデータが大量にあれば、機械学習型チャットボットはさまざまな質問に柔軟に対応し、かつ高い正答率を期待することができます。しかし、大量のデータを準備することが難しい場合、的確な回答を返すチャットボットを構築することは困難です。
 
 このように、「ルールベース型」と「機械学習型」にはそれぞれ一長一短があります。「ルールベース型」は、一問一答形式で対応できるFAQの回答や、決まったフローがある手続き支援などのチャットボットに適しており、「機械学習型」は、雑談や会話などに適しているといえます。また、ユーザーが自由に入力する「問い」の言い回しを認識するために、機械学習型のチャットボットを採用する場合もあります。

 中小企業でチャットボットを利用する場合、教師データの準備が大きなハードルになるケースがほとんどです。チャットボットの利用目的を決め、発生する問い、対応する答え、質問を提示する順序や分岐のロジックを明確化できれば、ルールベース型のチャットボットは比較的構築が容易なので、まずはそちらから取り組むことをお勧めします。

使われるためには設置場所が大事

 もう一つ、考慮しなくてはいけないのは、「どこにチャットボットを設置するか」です。折角作成してもお客様に利用していただけなくては意味がありません。よく見かけるパターンとしては以下の3つがあります。用途や、現状のお客様がアクセスする導線を考慮して選択します。

【自社サイト】
 企業サイトやECサイトなど、お客様が訪れるサイトに設置するパターンです。最近増えている、サイトにブラウザでアクセスすると、ページの左下にチャットの小窓が開く形式のものが代表的です。Q&A対応やアンケートなどはこのパターンで対応することが多いです。また、申し込み手続きなどを行うページがあれば、入力支援用のチャットボットをそのページに設置することもおすすめです。
 
【SNS(LINE、Facebookメッセンジャー、Twitterなど)】
 チャットボットのアカウントを作成し、お客様のアカウントと会話するパターンです。LINEやTwitterの場合は、あらかじめお客様のアカウントからチャットボットのアカウントをフォローしてもらうことで、会話が可能になります。Facebookメッセンジャーの場合は、Facebookページをお客様にフォローしていただくことで、メッセージを相互に送れるようになります。
 フォローしてもらった状態であれば、任意のタイミングでこちらから情報を送信し、会話を開始できます。雑談、情報配信に適したパターンです。前編で取り上げたクロネコヤマトの再配達依頼は、LINEを使用しています。

【企業アプリ】
 すでにアプリを提供している場合、アプリ内にチャットボットへの入り口を設けることもできます。


 チャットボットはお客様対応の省力化とコスト削減に利用できますが、最近注目されている用途が、社内向け用途です。社内の人事、総務、経理、IT部門などへの問い合わせをチャットボットを利用して自動化したり、出張費の申請手続きなどを効率化できます。

比較的簡単に扱えるチャットボット作成ツール

 プログラミング不要でチャットボットが簡単に作れるツールをいくつか紹介します。無料で試せるツールもありますので、一度自分で簡単なチャットボットを作成してみるのがお薦めです。
 FAQ対応に特化したチャットボット作成ツールです。エクセルで作成したQ&A一覧から、チャットボットを作成できます。LINE、Facebookメッセンジャー、自社ウェブサイト埋め込みのいずれにも対応しています。人が返信することも可能なので、ある程度まではチャットボットに応答を任せ、難しい質問には人が答えるといったハイブリッド運用が可能です。
 ルールベース型のチャットボット作成ツールです。ブラウザ上で、会話の流れを入力してくことで、チャットボットを作成できます。FAQ、コンテンツ配信、商品案内に活用できます。LINE、Facebookメッセンジャー、自社ウェブサイト埋め込みのいずれにも対応しています。質問文の解釈にはAIを導入しており、表現が多少ゆれても正しく応答できます。
 ルールベース型のチャットボット作成ツールです。会話の履歴を記録しており、お客様との過去のやりとりに合わせた情報発信が可能になります。また、履歴を記録するので、アンケートや申込手続きをチャットで行うことも可能です。LINE、Facebookメッセンジャー、自社ウェブサイト埋め込みのいずれにも対応しています。
 社内問い合わせに対応専用のAIチャットボット作成ツールです。CSVファイルによるルールベースの対話データの登録と、対話型の学習に対応しています。ドメイン制限によりアクセスを社内に限定することができます。
 他にもさまざまなツールが続々登場しています。経済産業省の「IT補助金」の対象となるツールもあります。自社業務の効率化をぜひ検討してみてください。
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★板垣朝子の連載コラム

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執筆者: 板垣朝子 - Organnova(オルガノーバ)主宰
独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野およびサイエンス分野を中心を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannovaを立ち上げる。

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