もうインバウンド集客で悩まない! 【第1回】

訪日観光客を5年で40倍にした自治体もやっている、動画プロモーションの始め方

2018年9月7日
インバウンドが増え続けています。全国の地方自治体やDMOなどの関係機関は、幅広い地域からの訪日外国人客を誘致するためにウェブサイトの外国語対応や、集客のためのプロモーションなど、情報発信に追われているはず。新連載では、訪日外国人に対して情報発信をしたいが、有効な手段が分からないというインバウンドマーケティング担当者のために、「今だからこそ実施すべき、動画広告のゼロから100まで」を、分かりやすくハウツーでご紹介していきします。

インバウンドに本当に効果的なのか? 自治体に流行している動画プロモーションをゼロから解説!

 今、2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、訪日外国人旅行者(以下、インバウンド)が増え続けている。日本政府観光局(JNTO)の推計では、2018年1〜4月までの累積値は、前年同期を140万人上回る1,051万9千人(15.4%増)で、2020年までその勢いは続くことが予想されている*1。このようにインバウンド需要が大きく伸びる中、全国の地方自治体やDMO(Destination Management Organization)などの関係機関は、幅広い地域からの訪日外国人客を誘致するためにウェブサイトの外国語対応や、集客のためのプロモーションなど、情報発信に追われている。本連載は、訪日外国人に対して情報発信をしたいが、有効な手段が分からないというインバウンドマーケティング担当者のために、「今だからこそ実施すべき、動画広告のゼロから100まで」を、ニューヨークに本拠を置き、これまでインバウンド動画広告のソリューションで多数の実績を持つGlassViewから、分かりやすくハウツーをご案内したい。

 国内におけるデジタル動画広告の市場規模は、2017年に1,000億円を突破し、2020年には2,000億円を突破する見込みとされている*2。近年、地方自治体の観光プロモーションにおいても、デジタル動画のマーケティング活用は進み、動画戦国時代と囁かれるほどに主流となりつつある。

 連載第一回では、市場が拡大を続け、訪日プロモーション手法として定着しつつある「デジタル動画広告」を正しく理解し、活用できるよう、訪日外国人の集客に役立てるよう分かりやすく “ゼロ”から解説していく。

そもそも、デジタル広告とは?

 さて、動画云々以前に、「そもそも、デジタル広告とは?」、「よく聞くけど、正直よくわからない...」と言う方もいるのではないだろうか。デジタル広告とは、インターネット/コンピューター技術の広告への活用であり、その特徴は、一言で言うなら、双方向に情報が行き来する“双方向通信”にある。TVCM、新聞雑誌などのマスメディアが一方通行の情報発信であるのに対し、私たちがオンラインでよく目にするディスプレイ広告などのデジタル広告は、その裏で複雑なデータのやりとりがされており、ユーザーの登録情報や閲覧履歴に関するログを元に広告露出を決定できる仕組みになっている。その結果、情報を届けたいユーザーだけをターゲティングして、ばら撒きではない、狙いを定めた広告配信が可能になった。

デジタル広告の変遷

 皆様も馴染みのある代表的なデジタル広告は、バナーに代表されるサイトや記事に表示されるディスプレイ広告、GoogleやYahoo! などで検索したキーワードと連動して、広告が表示される検索連動型広告がある。フォーマットも、テキストから静止画へ、静止画から動画へとリッチ化が進み、 YouTubeがその動画プラットフォームとユーザー規模を活用した広告配信サービス(TrueView)を開始したのを皮切りに、2015年頃には、動画広告元年と叫ばれるほどに、デジタルマーケティングにおける動画のポジションは確実なものとなった。さらには、ソーシャルメディアなどのプラットフォームの台頭やスマートデバイスの普及も後押しとなり、FacebookやInstagram、Twitterといったソーシャル大手プラットフォームも続々と動画広告メニューの提供を開始し、今やデジタル動画広告の勢いはとどまる所を知らない。

 ちなみに、米国ビジネスコンサルティングのForresterによれば、「1枚の写真は、1,000語を語るが、1分の動画は180万字に値する」という。つまり、動画は写真と同じ表示時間でもより多くの情報を伝えることができ、記憶と印象に残りやすい点でテキストや静止画に比べて広告効果が高いと言える。

デジタル動画広告を始める前のウォーミングアップ

 一言に動画広告と言っても、フォーマットや配信方法、ターゲティング手法は様々で、目的に応じた使い分けが必要だ。正しい手法を選択するには、まずは、ウォーミングアップが必要である。以下、失敗しない動画広告を始めるためのウォーミングアップ法を、4W2Hというフレームワークを使って解説していきたい。

4W2H
What、何のためにやるのか?(広告目的)
Who、誰に向けて情報発信するのか?(ターゲット)
When、いつやるのか?(訴求時期)
How、どんな内容・クリエーティブで訴求するか?(訴求内容)
Where、どこに広告を出すのか?(メディアの選定)
How much、予算はいくら必要か?(予算)

以下、詳細。

What、何のためにやるのか?(広告目的)

 動画広告に限らず、マーケティング施策を打つ前にまず立ち止まって考えたい。なぜ、この施策が必要なのか。プロモーション後どうなっていると良いのか。そのために、今打つべき施策は何で、どんな選択肢があるのか。自治体や事業会社ごとにそのブランドステージは異なり、認知を高めたい、興味関心を深めて欲しい、比較検討のショッピングリストにあげてもらうこと、など課題は様々である。施策を打つ前に、まず必要なのは「自分たちの現状を正しく把握し、適切なゴールを定めること」である。例えば、インバウンドプロモーションにおいては、地方自治体によってその認知度と課題には差があり、“まちの名前を知らない人に対して、まず自分たちのまちの名前を知ってほしい”のか、 もしくは、“ある程度知名度はあるから、知名度よりここにしかないまちの魅力について知ってもらい、目的地として検討して欲しい”のか、”すでに一度訪れた観光客にリピートしてもらいたい“のか。このように、まずは、今いる “立ち位置(as is)”と”実現したいこと(to be)”を客観的に分析することで、打った施策が終了したときに何を達成していると良いのか、誰に対して情報発信すべきなのか、そのゴールを達成するために一番適切な手法が何かを定めることが出来る。

 ローマは一日にして成らずと言うが、マーケティングも同じことが言える。自ブランドを知らないユーザーを取り込みたい場合は、まず知ってもらわないことには話が始まらない。知ってもらったら、次は好きになってもらう。そして何かあったときに、自ブランドをパッと頭に思い浮かべて比較検討の対象にしてもらえるようになって初めて、予約や訪問などコンバージョンに至る。このように、マーケティングとは、コツコツとコミュニケーションを続け、選んでもらう必然を作る作業であり、そのプロセスを以下のリストに整理したので、どの段階が一番まちの現状に近しいか、チェックリストとして、活用して頂ければと思う。

• 認知:存在を知ってもらいたい(無関心層→潜在顧客層)
• 興味関心:知ってくれた人に、さらによく知ってもらい、好きになってもらいたい(潜在顧客層→顕在顧客層)
• 比較検討:好きになってくれた人に、検討対象として意識されたい(顕在顧客層→見込顧客層)
• コンバージョン(成約):慎重な吟味を経て、予約や問い合わせなどの具体的な行動をとってもらいたい
執筆者: 岩本香織 - GlassView Japan合同会社COO
ニューヨークに本拠地があり、グローバルでブランディング動画広告配信ソリューションを提供するGlassViewを日本に展開。入社以前は、日産自動車のグローバル商品戦略マーケティング部門を経て、消費者インサイトアナリストとして、世界戦略車を担当。広告主視点に立ったメディアプランニングやKPI設定、市場のニーズに即したB2Bやインバウンドプロモーションに特化したメニュー開発にも携わる。慶應義塾大学総合政策学部卒。台湾生まれ、日英中台湾語を話すマルチリンガル。

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