TVドラマ『dele』 二人の軽妙な会話が作り出す、今までにない“新しい”バディもの

デジタル遺品というモチーフを通して、現代的な不安が一気に広がっていく面白さ

2018年8月24日
テレビ朝日系金曜深夜の『dele』はデジタル遺品を題材とした連続ドラマだ。物語の舞台は、依頼人が設定した時間を超えてパソコンやスマホに触らないと通知が行き、デジタル遺品を消去してくれる会社。この会社を経営する車椅子のプログラマー・坂上圭司(山田孝之)と、会社に雇われている何でも屋の真柴佑太郎(菅田将暉)の二人が、デジタル遺品の消去を依頼した故人のことを調べるうちに意外な真相にたどり着くというのが、本作の見所だ。

デジタル遺品を消去してくれる会社「dele.LIFE」を経営する、車椅子のプログラマー・坂上圭司を演じる山田孝之(©テレビ朝日)

圭司の相棒で何でも屋の真柴佑太郎を演じる菅田将暉(©テレビ朝日)

 テレビ朝日系で金曜23時15分(*一部地域を除く)から放送されている連続ドラマ『dele』はデジタル遺品を題材としたドラマだ。

 デジタル遺品とは、故人のパソコンやスマートフォンに残された情報のこと。日記や帳簿のような文字情報のデータだけでなく、写真や映像など、デジタルデータをパソコンやスマホに入れて持ち歩くことは今や当たり前で、特別なことではない。
 
 物語の舞台は、依頼人が設定した時間を超えてパソコンやスマホに触らないと通知が行き、デジタル遺品を消去してくれる会社「dele.LIFE」。

この会社を経営する車椅子のプログラマー・坂上圭司(山田孝之)と、会社に雇われている何でも屋の真柴佑太郎(菅田将暉)の二人が、デジタル遺品の消去を依頼した故人のことを調べるうちに意外な真相にたどり着くというのが、本作の見所だ。
 原案と原作小説を執筆し、脚本家としても参加しているのが小説家の本多孝好。毎回、脚本家と監督が変わっていく一話完結のスタイルで、同じく小説家で、近年はテレビドラマの脚本も執筆する金城一紀も参加している。
 
 研ぎ澄まされた映像と音楽が印象的なストイックな作品で、それが贅沢な味わいとなっているのだが、何と言っても一番の見所は、山田孝之と菅田将暉の軽妙なやりとりだろう。

相手を無視して早口で淡々と喋る坂上に対し、難なく会話を合わせる真柴の関係はとても魅力的で、一見仲が悪そうに見える二人のバディものとして、とても面白い。

 見ていて思い出すのは、70年代に放送された伝説的なドラマ『傷だらけの天使』(日本テレビ系)に出演していた萩原健一と水谷豊。この作品も1話完結で、探偵事務所の調査員の小暮修(萩原健一)が弟分の乾亨(水谷豊)の軽妙な掛け合いと二人の人間関係が何より魅力的だった。

 ただ、修と亨の関係が兄弟分だったのに対して、坂上と真柴の関係はいろんな見方ができて一言では言えないものとなっている。

第5話(8月24日放送)のゲスト、柴咲コウと圭司を演じる山田孝之(©テレビ朝日)

 仕事上、二人は社長と従業員の関係だが、真柴のコミュニケーション能力の高さゆえか、対等なパートナーにも見える。二人は意見がぶつかることはあっても、仕事に対してはお互いに団結する。

 面白いのは依頼人の個人情報に対する二人の考え方の違いだ。坂上は依頼人と直接、会うことは良しとせず、仕事上のやりとりはモニター上だけで行う。同時にデジタル遺品の中身に対しては関心を持たずに、基本的に中身を見ることなく消去する。

 対して真柴は、他人とどんどん関わり、どんどん厄介ごとを抱え込んでいく。故人のデジタル遺品を見たいと言うのも、いつも真柴だ。

 もちろんそれは、故人の死因や抱えていた悩み(例えば、両親とのわだかまり)を解消するためなのだが、そんな真柴の行動を坂上はいつも止めようとする。

 この二人の依頼人に対する距離感は、そのまま二人の性格の違いであると同時に、この仕事に対する考え方の決定的な違いだと言える。

よくあるドラマなら、坂上が人間嫌いの冷たい男。真柴を人間味のある優しい青年として描いてしまうだろう。しかし見ていると必ずしもそうとは言い切れないのが本作の面白さである。

この仕事をずっとしている坂上は人と関わることの辛さ、人間が多面的で、表には出せない闇を抱えているということを、嫌という程、知ってしまったのだろう。

第5話(8月24日放送)のゲスト、橋本愛と佑太郎を演じる菅田将暉(©テレビ朝日)

 相手の事情に踏み込まない優しさというものもあるのだと、坂上を見ていると思う。同時に、真柴の優しさもよくわかる。勢いで突っ走ってしまうという若さゆえの甘さもあるのかもしれないが、そんな真柴のことを坂上が見守っているという側面が見え隠れして、そういう時に二人は仕事のパートナーとして理想的な関係だと思う。

 坂上と真柴のとらえどころがない関係を見ていると、今までにない新しいバディものを作ろうという志の高さを感じる。
 それにしても、見ていて考えこんでしまうのは、自分自身のデジタル遺品の処理についてだ。

筆者は1990年末からパソコンを使い始めて、その都度、パソコンを切り替えてきた。パソコン上には断続的に書かれた日記もあれば、CD-Rやハードディスクドライブに保存された映像等もある。過去のメールを辿っていけば、仕事はもちろんプライバシーも含めて全て丸裸になってしまうと思うと死んでも死にきれないが、かといって今すぐ自分で情報を整理するなんてとても不可能だ。

 逆の問題もある。突然、自分の身に不幸があった時に、パソコンやスマホのロックを解除できないことで、残された人たちに迷惑をかけてしまうのではないかということだ。パスワードも一箇所にまとめてノートに書いているわけではないので、それも整理しておかないと。
 特に自分は一人暮らしなので、もしも自分が死んだ時に、すぐに身内や第三者(本作の「dele.LIFE」のような)に伝わるような仕組みに登録した方がいいのではないかとも考える。そういった現代的な不安や心配事が、デジタル遺品というモチーフを通して一気に広がっていくのが本作の面白さだろう。
■金曜ナイトドラマ『dele/ディーリー』 
テレビ朝日系 毎週金曜 23時15分~ 放送(*一部地域を除く)
テレ朝キャッチアップ(オンライン動画配信サービス)にて、放送終了後に最新話配信中

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執筆者: 成馬零一 - ドラマ評論家
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。WEBマガジン「ich」(イッヒ)主催。主な著作に『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の評論家』(河出書房新社)がある。
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