ダイバーシティ経営の第一歩は「女性の発想」を取り込むこと

外国人の登用? でもその前に/総務・人事・経理ワールド

2018年8月15日
政府が掲げる「働き方改革」の一環として注目を集めている「ダイバーシティ」。新しいビジネスを考えるためには多様性が必要です。そして仕事のやり方をシフトしないと生き残ることが難しい時代とも言えます。ビジネスに新しい風を入れる、そのためにも企業にとってダイバーシティは避けて通れない課題なのです。
 企業・自治体・病院などの総務・人事・経理・経営者を対象に、組織運営に必要なサービスが一同に集結する展示会『総務・人事・経理ワールド』が2018年7月11〜13日の期間、東京ビッグサイトで開催されました。

 今回の『総務・人事・経理ワールド』では、議論が活発になっている働き方改革や健康経営、RPA活用などをキーワードにさまざまな製品・サービスが展示され、3日間で61,000人以上が来場。職場の抱えているさまざまな課題に対する意識の高さがうかがえる盛況ぶりでした。

 また各分野の第一人者による多数のセミナーも連日開催され、最新の業界動向や事例を学ぶべく、多くの人が聴講に訪れました。

 今回の記事では7月6日に開催されたセミナー「経営戦略としてのダイバーシティ・マネジメント」(NPO法人 J-Win理事長 内永ゆか子さん)の講演より、企業が生き残るために必要なダイバーシティへの取り組みについてレポートします。

NPO法人 J-Win 理事長 内永ゆか子さん。「新たなビジネスを考えるには、違った発想やバックグラウンド、異なる強み・弱みを持つ人が集まり、一つの方向性に対して切磋琢磨する必要がある」と語る

日本のダイバーシティ・マネジメントは遅れている?

 政府が掲げる「働き方改革」の一環として注目を集めている「ダイバーシティ」。多様性を意味するダイバーシティは性別や年齢、国籍、障害の有無だけでなく、価値観や雇用形態などの違いを受け入れ企業活動に活かす考え方です。

 しかしダボス会議を主催する世界経済フォーラムが毎年発表している男女格差の度合いを示す指数「ジェンダーギャップ指数」によると、2017年の日本の順位は144カ国中114位、主要7カ国(G7)の中では最低でした。第2次安倍内閣が発足した2012年は98位だったので、その頃と比べてもずいぶんと順位を下げていることがわかります。日本のダイバーシティ・マネジメントは世界と比べて遅れているのでしょうか? どうやらそういうことではないようです。

 今回のセミナー講師である内永ゆか子さん(NPO法人J-Win理事長)によると「過去数十年に比べ世界中でダイバーシティへの注目が急速に進み、プライオリティも高くなっています。そのため、結果的に日本の順位が落ちてしまっているのです」とのこと。

 その背景にはこの世の中の変化のスピード、特にビジネスのスピードの変化にあります。これまでは成功しているビジネスモデルがあれば、コストを下げて機能を上げることで何とか競争に勝つことができましたが、現在のように変化の激しい時代ではそれは通用しません。ビジネスモデルを変えていく必要があるのです。しかし新しいビジネスモデルを考えるべきトップエグゼクティブはすでに限界を感じ始めています。それはなぜでしょうか?

 「トップエグゼクティブに着いている人は、過去にビジネスで成功してきたから今そのポジションにいるのです。過去の成功体験を持った人が新しいビジネスを考えられるかというと、その確率は低くなります。確率を上げるにためには、違った発想やバックグラウンド、異なる強み・弱みを持つ人が集まり、一つの方向性に対して切磋琢磨する必要があります」(内永さん)

企業・自治体・病院などの総務・人事・経理・経営者を対象に、組織運営に必要なサービスが一同に集結する展示会「総務・人事・経理ワールド」

女性を活用できない企業が外国人登用するのは時期尚早

 新しいビジネスを考えるためには多様性が必要だということはわかりました。しかし具体的にはどこから手をつければ良いのでしょうか? 内永さんは「もっとも安全な多様性のグループは女性だ」と強調します。

 「なぜなら女性は同じ日本人であり、言葉が一緒。同じ教育を受けていますし、会社の仕事もかなりのレベルで男性と同等です。女性に足りないのはデシジョンメイキング(意思決定)です。デシジョンメイキングをしていないということは成功体験をほとんど味わっていないということです」(内永さん)

 ダイバーシティというと女性以外にも外国人の活用というイメージがありますが、内永さんは外国人をダイバーシティとして登用するのは難しさがあると注意を促します。それよりもまず女性を活用するほうがずっと効果的であると語ります。ただしここで言う「女性の活用」とは単に女性の地位を上げることではなく、新しい発想を取り込むための第一歩として活用すべきだというのです。

 「女性活用すらできないのに、外国人を登用するのはとても難しいことです。世の中の変化というのは止まることがありません。いかに自分たちが早く変化していけるか、またそういう人たちを集めることができるかというのが、これから企業が生き延びていくためにとても大切な要素です」(内永さん) 

ダイバーシティというと外国人の活用というイメージがあるが、それよりもまず女性を活用するほうがずっと効果的であると内永さんは語る。「女性活用すらできないのに、外国人を登用するのはとても難しいことです」

仕事のやり方をシフトしないと生き残ることは難しい時代に

 女性活用の例として内永さんは以前勤めていたIBMの事例を取り上げました。内永さんが入社した頃はシェアトップだったIBMも1993年に赤字転落。そのときに会長としてIBMを立て直したのがルイス・ガースナー氏でした。ガースナー氏は経営改革の一つとして世界的にダイバーシティを推進し、特に日本においては女性の活用を最優先課題として命じました(当時の日本IBMは国内でも女性活用が進んでいる企業として認知されていましたが、世界中のIBM全体では最下位でした)。

 当時唯一の女性役員だった内永さんは女性社員の活用に関する諮問機関の責任者として、女性のキャリアアップを阻害している要員を調査・分析したところ、「キャリアの将来像が見えない」「仕事と家事、育児とのバランス(ワークライフバランス)」「オールドボーイズネットワーク(男性社会における暗黙のしきたり)」の3つの要因があったそうです。その要因に対する解決策としていちばん大事なのは「トップの腹落ち」とのことでした。これは人事部だけで問題を解決しようとするのではなく、必ずトップの人間がダイバーシティに対して理解・納得をしなくてはならないということです。

 最後に内永さんは「女性活用化を推進する風土づくりとして、企業方針として女性活用を明確に宣言し、促進のためのアファーマティブアクション(積極的に差別を是正する措置)
が必要です」と締めくくり、セミナーは終了しました。

 現在は新しいビジネスが次々に生まれ、旧来のビジネスはどんどん淘汰される時代です。それは仕事のやり方をシフトしないと生き残ることが難しい時代とも言えます。ビジネスに新しい風を入れる、そのためにも企業にとってダイバーシティは避けて通れない課題なのではないでしょうか。

ダイバーシティ経営を実行する上で大切なのは「トップの腹落ち」。人事部だけで問題を解決しようとするのではなく、必ずトップの人間が理解・納得をしなくてはならない

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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