IoTを本気で日本に普及させる! 通信インフラを牽引する異色ベンチャー

「長距離低消費電力」の通信で日本のIoTビジネスを世界最先端に/センスウェイ株式会社

2018年7月30日
「IoTの時代が到来した」。ここ数年来、この言葉を幾度となく耳にしてきました。しかし騒がれているわりには、日本でIoT製品を目にすることはあまりありません。日本のIoTビジネスがなかなか進展しない理由のひとつが、通信インフラが整っていないことにあります。この状況を変える通信サービスで注目されているベンチャー企業があります。昨年、起業した「センスウェイ株式会社」です。

センスウェイ株式会社 代表取締役 執行役員社長 CEO 神保雄三さん。「IoTのラストワンマイルを提供」を掲げ、IoTを実現化するために必要な通信インフラの礎つくりに邁進中

「IoTの時代が到来した」。ここ数年来、この言葉を幾度となく耳にしてきました。IoTとは、あらゆるモノがインターネットにつながる仕組みのこと。それに関わるデバイス、ネットワーク、アプリケーションなどを巻き込み、世界を一新する可能性を秘めたビジネス市場だと言われています。しかし騒がれているわりには、日本でIoT製品を目にすることはあまりありません。日本のIoTビジネスがなかなか進展しない理由のひとつが、通信インフラが整っていないことにあります。この状況を変える通信サービスで注目されているベンチャー企業があります。昨年、起業した「センスウェイ株式会社」です。IoTを実現化するために必要な通信とは何か? 今年の5月に社長に就任した神保雄三さんに聞きます。

IoTの実現化には長距離低消費電力の通信が必要

ーー「これからはIoTだ」と言われていますが、その前提となるのは通信インフラです。

センスウェイは「IoTのための通信プラットフォーム」、回線をベースにした通信事業者です。IoTに必要な通信であるLPWAのLoRaWANによるサービスを提供しています。LPWAとは「Low Power Wide Area(低消費電力・長距離通信)の略称で、LoRaWANはいくつかあるLPWAの通信規格のひとつです。

いま、通信の世界は二極化しています。ひとつは「高速大容量高価格」化。これはブロードバンドサービスですでに顕在化しています。動画をスマホで見るようになり、トラフィックが爆発的に増大していることの必然です。そしてもうひとつがナローバンドによる「低容量低価格」化。LPWAがこれにあたります。

IoTを実現化するために必要なのは、人が日常生活で使うことを基準にした通信サービスではありません。IoTの使われ方としてたとえば電気やガスのメーター検針があります。ここにスマートフォンと同じ通信ネットワークを用いる意味はありません。月に一回でいい、容量も小さくていい、コストがかからないほうがいい、となるわけです。その条件にあてはまるのが、LPWAなのです。

そのLPWAのなかでセンスウェイはなぜLoRaWANを選択したのか? 昨今、オープンでグローバルであることは市場拡大の必須要素です。スマートフォンで例えるとアンドロイドのような存在です。

世界と比べて遅れている日本のIoT。IoTを実現化するためには、スマートフォンと同じ通信ネットワークを用いる必要はない。月に一回でいい、容量も小さくていい、コストがかからないほうがいいーーその条件にあてはまるのがLPWAなのだ

欧米に比べて5〜6年遅れている日本のIoT

ーー騒がれている割には、あまりIoTの製品を目にしません。日本のIoTは普及しているのでしょうか。

日本は世界と比べて遅れていると思います。これは日本にはIoTのためのLPWAの通信サービスがないからです。欧米、特にドイツやフランス、スペインはIoTの通信サービスが広がっており、IoTが社会インフラとして運用されていて日本より5〜6年は進んでいるように見えます。韓国もLPWAの全国ネットワークは2016年にできあがっています。

しかしIoTで重要な役割を果たすセンサーデバイスの製造については、日本が世界の最先端です。日本発のセンサーデバイスは世界の6割を占めているのです。センサーがIoTのどういう場面で使用されているかと言うと、たとえば田舎の別荘や空き家の管理という場面です。「戸締りは大丈夫なのか?」「湿度に異常はないか?」これらのチェックにいちいち人が訪れて確認するのは大変です。人の代わりにセンサーが見守ればいいのです。扉や窓にセンサーをとりつけておき、異常が見つかればセンサーからインターネット経由で連絡がくるという流れです。

ーー日本には優秀なセンサーメーカーがある、ということは、うまくいけばIoTの分野で世界一になる可能性があるということでしょうか?

IoTをより簡単に使えるものにするために、早く回線を整える必要があります。そうすれば、欧米や韓国に比べて出遅れているIoTの領域を巻き返せるかもしれません。欧米はIoTのデータ活用について議論をしていますが、日本はその前段階で止まっている。私たちはその状況を変えたいと思っています。ちなみにセンスウェイという社名は「センサー」が通る「ウェイ(道)」から名づけました。

日本には優秀なセンサーメーカーがあり、IoTの分野で世界一になる可能性がある。センスウェイという社名は「センサー」が通る「ウェイ(道)」から名づけられた(写真はレンタルの室内用基地局「G-BOX」)

日本のIoTビジネス普及に向けて

ーー「IoTのラストワンマイルを提供」「新たな社会インフラを創出」*というフレーズをHPで拝見しました。そこにどんな意味、目標、未来を込めたのでしょうか。

少子高齢化と人口減少。これら日本が抱える最大の社会問題に対して、政府は「ソサエティ5.0」ーーICTやIoTによる製造業の革新や生産性の向上によって「社会のありよう」を変えるーーを提唱しています。しかしIoTと言っているのにも関わらず、まったく普及していません。IoTと念じるだけでは社会は変わりません。その礎を皆さんと協力して作っていきたいと思っています。
(*編注:「ラストワンマイル」は、主に通信業界で使われている言葉。通信事業者と利用者を結ぶ最後の区間という意味)

ーー神保さんは今年の5月、社長に就任されました。

会社の創立時(2017年)は専務でした。前職でIoT向けの通信ビジネスに興味を持っていたのですが、「今しかない!」と思いセンスウェイに参画しました。今年の4月にはLoRaWAN通信サービスであるSenseWay Mission Connectの記者発表を行いました。そのタイミングで準備期間を終え、ビジネスフェーズへと移行しました。現時点では一都三県ですが、年度末には人口カバー率60%を網羅する予定です。もちろん最終的には全国へと拡大させます。

IoTの通信プラットフォーマーとして通信ビジネスを中核におきながら、当面はその周辺のサービスやマッチング、コンサルティングも行なう予定です。IoTのビジネスは私達が提供するネットワークだけではなく、センサーデバイスの開発・生産、アプリケーションの開発、データ解析、そしてセンサーデバイスの設置や管理などの運用まで幅広く網羅する必要があります。私達はお客様の要望に応じて、お客様が得意なビジネスに集中できるよう足りない要素を支援したり、パートナーとのマッチングによって早期にビジネスを起動できるようにします。

発表会で予想を超えた反響

「Senseway Mission Connect」は、LoRaWANによるネットワークを、個人・法人を問わず誰でも活用できるプラットフォーム。Webページで登録するだけで通信サービスが利用でき、Webの管理画面で接続したIoTデバイスの管理もできる

ーー記者発表の後、かなりの反応があったとか。

私たちの予想を超えた反応をいただきました。発表会直後に「IoT/M2M展」という展示会にブースを出したところ、来場者から「センスウェイって有名だよね」と話しかけられることもありました。

完全な独立系としてまったくのゼロから会社を始めました。誰も知らないわけです。「なんだこの会社は?」と思われていたかもしれませんが、「LoRaWAN=センスウェイ」という認識が徐々に高まってきているように感じます。

ーーセンスウェイの出発は神保さんの50歳という節目とも重なりました。

センスウェイは私にとっても新たな挑戦です。ベンチャーというと、若者が起業する、あるいは技術ドリブンといったイメージがありますが、そればかりではありません。ビジネスには人のつながりや経験が重要です。前職では数多くの出会いがありました。そのなかで得た経験則をセンスウェイの進化につなげていくつもりです。

完全な独立系としてまったくのゼロから始まったセンスウェイだが、「『LoRaWAN=センスウェイ』という認識が徐々に高まってきているように感じます」(神保さん)

  • ■ニュース深堀り!■高付加価値を実現、IoTの養蜂革命!

    IoT(モノのインターネット化)。パソコンやスマホといったデバイスのみならず、様々な製品をインターネットにつなげ、あらゆる場面で”便利さ”を増していく動きが加速している。夏の暑い日、外出先にいながらも、スマホからインターネット経由でエアコンのスイッチを入れておく――そんな生活を実現しているのもIoTの技術だ。この先進技術の導入による改革の動きが、一次産業の現場でも起きている。8月開催の「はちみつフェスタ2016」では、養蜂家のためのIoT&AIデバイス「Bee Sensing」が出展され、多くの来場者から注目を集めている。

執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

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