マニュアルを革新する! 会社独自のノウハウを「見える化」で組織は進化する

マネジメントの第一歩は具体性と再現性からはじまる

2018年7月6日
マニュアルと聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか? 電化製品やPC関連、あるいは接客のための読みづらい手引書・・・。しかし、そんなマニュアルのイメージを一掃し、新たなビジネスサービスとして提供している会社があります。「2.1」は会社に眠っている独自のノウハウをマニュアルによって可視化〜習慣化させ、業務の効率化や社内コミュニケーションの活性化をサポートすることで注目を集めています。
マニュアルと聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか? 電化製品やPC関連、あるいは接客のための読みづらい手引書・・・。ではマニュアル人間ではどうでしょう? 自分自身で判断ができない使えない人物と考える方が多いかもしれません。しかし、マニュアルに関するそんなネガティブなイメージを一掃し、新たなビジネスサービスとして提供している会社があります。「株式会社2.1」は会社に眠っている独自のノウハウをマニュアルによって可視化〜習慣化させ、業務の効率化や社内コミュニケーションの活性化をサポートすることで注目を集めています。今年5月には、宮崎市に日本初の「RPAマニュアルセンター」を設立したことでも話題を呼びました。株式会社2.1 代表取締役の中山亮さんに聞きます。

株式会社2.1 代表取締役の中山亮さん。会社に眠っている独自のノウハウをマニュアルによって可視化〜習慣化させ、業務の効率化や社内コミュニケーションの活性化をサポートすることで注目を集めている

マニュアルを活用、更新することで組織は進化する

ーー今年の5月、2.1は宮崎市に日本初の「RPAマニュアルセンター」を設立しました。(編注:RPAはロボットによる業務自動化のこと)

宮崎県や宮崎市が雇用の多様化を推進するなかで、立地協定というかたちで私たちにお声がけいただきました。2.1はお客様の業務マニュアルを「外から、ゼロから」つくる日本初の会社です。マニュアル制作に必要なスキルセットでは、宮崎と東京とで人材の質は変わりません。だから東京のお客様でも宮崎にいながらの遠隔作業で大丈夫なのです。そういった点が宮崎県・宮崎市の要望に合致しました。

ーーマニュアルというと電化製品やPCソフトを思い浮かべます。2.1のサービスと違いがあるのですか。

私たちの事業は、営業や総務なども含めお客様のあらゆるジャンルのマニュアルを作成することです。接客や製造工程のマニュアルだけではありません。そのほかにも、育てにくい、採用しにくいと言われている属人的な職種〜営業、コンサルタント、管理職〜についてのマニュアルも作成します。そういった職種や業務内容を可視化するのが私たちの大きな特徴です。

日本の会社を見渡したとき、業務の言語化、体系化、そこにかかる手間についての技能を有している社員がほとんどいないことに気づきます。仮にいたとしても、その結果を実測化できていない場合が多い。したくてもできない状況もあります。そこで代わりにその工程を実行する存在として2.1を起業したのです。

今年の5月、2.1は宮崎市に日本初の「RPAマニュアルセンター」を設立した。働き方改革や人手不足で需要の高まるRPA。それを作動させるために必要なマニュアルづくりを行う。写真は宮崎市役所での立地調印式の様子(真ん中が中山さん、右が宮崎市長)

ーー「マニュアル整備によるマネジメント支援」とうたっていますね。

2.1はいわゆる「マニュアル制作会社」ではありません。マニュアル自体は全体の中のひとつの手段でしかありません。私たちのマニュアル支援サービスは4つのKPIをもとにしています。「生産性を上げる」「採用コストを下げる」「引き継ぎで損失を出さない(事業リスクを出さない)」です。これらの目標の到達に向けてマニュアルを制作しています。マニュアル本を納品して終わりということではありません。マニュアルPDCAを回すーー「可視化」→「仕組化」→「習慣化」ーーことで組織進化の歯車とします。

マニュアル作成=「可視化」後、会社の皆さんにマニュアルを使っていただくために、使わざるを得ない状況をつくります。初期段階のマニュアルは、作業や業務が上手な人の話をもとにしているので、新人にとっては「大学生用を小学生に使え」と言われているようなものです。乖離があるのです。そのために社員の皆さんに読んでいただきバージョンアップする時間をつくります。次にマニュアルを認知していただく期間を設けます。マニュアルを読もうという意識は、マニュアルがあることを知っていないと生まれません。そしてそこに何が書かれているかが意識下にないとできません。マニュアル使用対象者にしっかりと読んでいただく時間をつくるのです。これが「仕組化」です。

その先は「習慣化」です。マニュアルに頼らざるをえない状況になると自ずと使いたくなります。「マニュアルと現場は違う」という声を聞くことがありますが、私たちの仕事はその乖離をなくすことにあります。そのために、毎週一回、依頼先とミーティングを持ち、徹底的にヒアリングし更新を加えます。そこでは「皆さんは口を動かしてください。私たちは皆さんの手足になります」と伝えています。それぐらいやらないと会社が期待するマニュアルになりません。

2.1がマニュアル制作において掲げるのは4つ。「生産性を上げる」「教育コストを下げる」「採用コストを下げる」「事業リスクを出さない」。本を納品して終わりではなく、マニュアルPDCAを回すーー「可視化」→「仕組化」→「習慣化」ーーことで組織進化の歯車とする(図版は「マニュアルPDCA小冊子」より)

RPA導入に必要な業務のマニュアル化

ーー今回のRPAマニュアルセンターですが、RPAとマニュアルの関連が正直、よくわかりません。

RPAやAIをつくる会社はいくつもあります。しかしRPAやAIのソフトはあってもそこに入力するべきデータがないことが多いのです。RPAをプログラミングするためには、自社の業務が可視化されていないとできません。つまりRPAを作動させるためには先んじてマニュアルづくりが必要なのです。

RPAは決まった動作を24時間365日ずっと行うシステムです。メディアでよく取り上げられる製造業でのロボット作業は一部の事例にすぎず、パソコンでのエクセル表作りなどの制作もRPAの主たる役割です。

2.1で導入しているRPAの実例をお話ししましょう。営業の現場では、商談で2回目のアポが入った瞬間にお客様のホルダーが自動的につくられて、ひな形の提案書がお客様の名前に変わってパソコン内に格納されます。自分で入力しても1分程度の作業では?と思うかもしれませんが、「塵も積もれば山となる」です。毎日の小さな作業が目に見えて軽減されていきます。機械化できる作業は機械に任せることで、営業など人にしかできない仕事に集中できるようになるのです。

RPAのためのマニュアルですが、RPAのソフトと移管する業務の中味、その両方がわかっていないと組織に対する実装はできません。なぜならロボットと人間では作業を行う工程が異なるからです。2.1の強みはその両方を知っている点にあります。

ーー二つの文化を知る「翻訳者」の存在がRPAを簡易なものに変えていくのですね。

RPAのためのシステムが納品されても使い方がよくわからない、あるいは外部のエンジニアに常駐してもらわざるをえない場合が往々にしてあります。一方、システム開発会社の方も言語化できていない内容を前提につくるから仕方ない部分もあります。しかし私たちが理想としているのは、社内の誰もがRPAで作業できる環境にすることです。

「正しいマニュアルを忠実に行動できれば、属人的な仕事はなくなり、より経営は安定する」と語る中山さん。とことん話し合い、観察し、詳細に分析することで、どんな人にもある独自のノウハウを見つけ出し、 個人が意識しない行動も可視化することで、具体性と再現性が生まれる

マニュアルの意味を再定義する

ーー「マニュアル人間」という言い方があります。マニュアルというとどこかネガティブな雰囲気が漂います。

創業当初、「中山さんがやろうとしているのはマニュアルとは違うよね」とよく言われました。でも例えば「スキルマップ」と言い換えたら、何を意味するのかよくわからなくなってしまいます。そこで2.1のビジネスミッションとして掲げたのが「マニュアルの再定義を行う」です。「読み手の力量やスキルで変わらない」「可視化で水準をつくる」支援ツールという点で新しい意味をもったマニュアルととらえています。

ーー中小企業のために役に立つ、という視点もうかがえます。

前職の外資系保険会社はがちがちのマニュアル教育で有名でした。そこで営業所長をしていたときに、法人のお客様から「御社のマニュアルを見せてくれないか」とよく言われました。そのときに「マニュアルは案外自分たちでは作れないものなんだ」と気づいたのです。社員が何でもやらないといけない中小企業には特に難しい分野です。マニュアルづくりで中小企業のお役に立てればという思いが強くなりました。

自分自身の苦い経験を可視化してわかったこと

ーー自社の業務工程を話すことに抵抗を覚えるお客様はいませんか。

私自身の経験を振り返ると、自分の弱みを可視化することでそれを克服できるのを実感していました。大学卒業後に勤めた会社でマネージャーとして数名の部下を管理していました。しかし管理職としてうまく立ち回れなかった。自分は人を管理することが苦手だという気持ちが残りました。しかし、その後の転職先で営業所長になったとき、その気持ちにリベンジしようと自分自身の可視化と部下の可視化を行ったのです。そのことによって、自分の苦手が克服され、部下との関係も順調になっていきました。

中小企業の経営者の多くは「自分の姿を見せれば、社員はわかるはずだ」と思いがちです。しかし経営者が自分自身の可視化ができないと、社員はそれぞれの解釈をするだけです。そこでコミュニケーションの齟齬が生まれてしまっている。2.1のビジョンに「コミュニケーション変革で人々を幸せにする」とあるのは、その差を埋めたいがためです。

ーーちょっと変わった社名です。その由来を教えてください。

日本の出生率を「1.42から2.1」へというところから命名しました。前職は出生率がビジネスに大きく影響する保険業界でした。そこで女性を取り巻く環境を目の当たりにしました。「社会に根深い問題を解決するような事業をつくりたい」「女性が安心して出産育児できるような環境を提供したい」ーーそういう想いが2.1という社名につながりました。

社員はいま15名です。結果的ですが女性ばかりです。面接で社名の話をすると泣きだす女性もいます。経済に貢献する目的は当然ありますが、社会性のある会社であり続けようと思っています。

ちょっと変わった社名は、日本の出生率を「1.42から2.1」へというところから命名された。「社会性のある会社であり続けたい」(中山さん)



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執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

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