アメリカでウケる日本の「モダン匠」を探して/「インテリア ライフスタイル」

「Wabi Sabi」に続く新たな潮流は何か?「プラクティカル」がキーワード

2018年6月27日
日本をはじめ世界中の優れたプロダクトを紹介する国際見本市「インテリア ライフスタイル」(5月30日~6月1日)を訪ねました。今回で2回目の開催となる本展示会、編集部に誘いの声をかけてくれたのは、アメリカ人のマーケッター、スティーブ・瀬戸さんでした。スティーブさんは、日本の伝統を継承する「モダンな匠」たちの商品をアメリカ人向けにネット販売するための視察で訪れたのでした。

日本の伝統を継承する「モダンな匠」たちの商品視察で訪れたスティーブ・瀬戸さん。ロサンゼルス出身、日系四世のアメリカ人。スティーブさんがアメリカ向けにセレクトする商品の基準は「日常的な使いやすさ」「クオリティー感」「デザイン」の3つ

 日本のインテリア業界で今、「メイカーズ」が次々に登場し、そのブームはますます広がっています。メイカーズとはMakers、つまり作り手のことです。日本でメイカーといえば、主に(工業製品の)製造業を意味してきましたが、それが複数形になると、手作り(やそれに近い)もの作りを行う人々や企業を指すようになってきました。そのムーブメントを決定づけたのが、クリス・アンダーソンが書いた『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』(NHK出版/2012年)です。
 「僕らはみんな作り手(メイカーズ)だ。人間は生まれながらにメイカーズで、もの作りへの愛情は、多くの人々の趣味や情熱の中に生きている。それは、工房やガレージやおたくの部屋の中だけのことではない。料理が大好きな人はキッチン「メイカー」で、オーブンがその工房だ。植物が好きな人は、ガーデン「メイカー」だ。編み物、裁縫、スクラップブック作り、ビーズ編み、クロスステッチ―どれも、もの作り(メイキング)だ」(『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』より)
 そんな日本発の優れたメイカーズを紹介するブースを用意した国際見本市「インテリア ライフスタイル」(5月30日~6月1日/東京ビッグサイト)を訪ねました。今回で2回目の開催となる本展示会、編集部に誘いの声をかけてくれたのは、アメリカ人のマーケッター、スティーブ・瀬戸さんでした。ロサンゼルス出身のスティーブさんは日系の四世。近々、日本の伝統を継承する「モダンな匠」たちの商品を、アメリカ人向けにネット販売する予定で、そのための買い付けに東京へやってきたのです。

インテリア・デザインの国際見本市「インテリア ライフスタイル」。デザイン性の高いジュエリー、ファッション雑貨からキッチンツール、フード、ハイエンドな家具に至るまで、デザイナーやものづくりに携わる多くの人々のアイデアや技術が詰まったプロダクトが大集結した

 「アメリカでは、すでに『Wabi Sabi』(わびさび)は認知されていて、その次に来る日本的なプロダクトが望まれています」(スティーブさん)。そこで注目したのが「Modern Takumi」。伝統的な手仕事のクオリティを維持しながらも、現代のライフスタイルにフィットした新しい製品を作り出している新世代のメイカーズたちです。
 スティーブさんがアメリカ向けにセレクトする商品の基準は3つ。まず「日常的な使いやすさ」。日本の伝統的な製品はややもすると、繊細すぎて日常使いができないことがあり「プラクティカル(実用的)ではない」(スティーブさん)とのこと。次にあげたのは「クオリティー感」。「日本」を感じてもらうためには、商品を触ったときの感触を意識下に残せるかが鍵を握ります。そして3つ目が「デザイン」。アメリカで見つけることのできないデザインであるかどうか。これは実際に当地で生活してみないとわからないかもしれませんが、日本で受けているものが必ずしもアメリカで人気を得るわけではありません。
 いくつもの催しが開かれている今回の「インテリア ライフスタイル」展のうち、特別企画「For Here or To Go?」のコーナーでの展示に、「モダンな匠」を探しました。そのなかでスティーブさんを刺激した商品をいくつかご紹介していきましょう。

「大成紙器製作所」は、紙の道具「紙器具(しきぐ)」を提案するブランド。商品群のなかからスティーブさんが選んだのは「POCHI-PON」。使い方の提案次第でアメリカでも人気が出る可能性大

 まず足が止まったのは「紙」の商品です。紙に関する文化、多様性、加工の巧みさは日本の伝統芸であり、アメリカではあまりお目にかからないジャンルでしょう。東大阪にある「大成紙器製作所」は、紙の道具「紙器具(しきぐ)」を提案するブランド。「『紙器具』とは、紙が私たちの暮らしに寄り添う道具として考え、その価値を再発見し『伝える・収める・設える』を理念とすることでつくられていく新しい日用品です」(パンフレットより)。まさにアメリカの求める「モダンな匠」に合致するコンセプトです。
 商品群のなかからスティーブさんが選んだのは「POCHI-PON」。筒型のぽち袋です。通常の使い方はぽち袋と同様、1000円札などのお金を入れて手渡すものですが、「アメリカでは口紅や大切な小物を入れて使うといった提案ができれば、女性に受ける気がします」(スティーブさん)。

今治でマフラーとショールをブランド化している「みやざきタオル」。クオリティーに加え、色数の多さが特長。アメリカでは色数が多いほうが選びやすくて好まれる

 マフラーやショールなど直接肌に触れる商品は、クオリティー感が重要です。その点でスティーブさんは日本製品は人気が出るはずとにらんでいます。日本一のタオル産地である今治でマフラーとショールをブランド化しているのが「みやざきタオル」です。創業は1896年、いわゆる「百年企業」です。1999年からタオルだけでなく、オリジナル生地でマフラーを作り始めました。
 「クオリティーは最高ですね。それと色の多さ(約150色、商品により色数は異なる)。アメリカでは色数が多いほうが選びやすくて好まれます」。アメリカ人向けと考えたときに頭においておかなければいけないのは、「サイズ感。日本人サイズだとやはり小さいので、そこをビジネス的にどう解決するかが私にとっても課題です」(スティーブさん)。

「伝統と革新」を体現するのが安土桃山時代創業の香の老舗「薫玉堂」。最新作のバスソルトやハンドクリームの他にフレグランスオイルやキャンドルも。まさに「モダン匠」な品揃え

 匠といえば忘れてはならないのが京都です。安土桃山時代創業の香の老舗「薫玉堂」は、創業から420年にわたって時代の香りを作り続けてきました。まさに「伝統と革新」を体現するブランドです。スティーブさんが惹かれたのもやはりその部分でした。薫玉堂が新しい商品として販売するのは、バスソルトやハンドクリームです。そのほかにもフレグランスオイルやキャンドルもあります。
 「アメリカのキャンドルの香りは安っぽいものが多いので、日本の伝統を感じさせるクリーンな香りは好まれるはずです。特にギフト向けに喜ばれると思います。薫玉堂は製造過程を美しい写真で表現していますが、ストーリーや歴史、本物を感じさせるところもPRとして優れています」(スティーブさん)
 今回はスティーブさんが特に気になった3つのメイカーズを紹介しましたが、ほかにも数多くの「アメリカ人にウケる」商品がありました。今回の「インテリア ライフスタイル」展が2回目であることを考えると、この市場はこれからどんどん伸びるということもいえそうです。「海外進出はまだまだ」と先延ばしにせず、日本の外に目を向けてみてはいかがでしょうか。新たなビジネスの可能性が見つかるはずです。
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執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

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