「貯める相続」って間違えていませんか?(ファミリービジネスのすすめ)【後編】

2018年6月19日
「オーナー経営者が貯金によって老後を過ごすのは間違い」。では、何をもってオーナー経営者は老後を考えればいいのでしょうか。前編では「ファミリービジネス」の有用性を語りましたが、今回はその具体的な方法についてお話しします。

 前編では「オーナー経営者が貯金によって老後を過ごすのは間違い」ということをお話しました。では、老後のお金の運用として何が正しいのでしょうか。「ファミリービジネス」にその解があります。後編では、「貯金パターン」と「ファミリービジネスパターン」の2つを比べることによって、より具体的に見ていきたいと思います。

 一家=ファミリーの財産を最大化するためには、2世代・3世代で考えることが肝要です。近代における経済の仕組みを前提にすると、相続税の支払いを最小化したいからといって、実際の経済活動を歪めるようやり方は誤りであることを理解する必要があります。

 退職金や自社株の売却代金で一気に現金を手に入れたとしましょう。この時にすべきことは、ファミリーの財産の最大化やファミリーの財産を保護するための資産管理会社を設立することです。そしてファミリーのためだけに資産を運用していくべきです。

 ここで「貯金パターン」のAさんと「ファミリービジネスパターン」のBさんの場合を例に考えてみましょう。

 退職時に2億円の現金を手にした65歳のAさん。都内にある自宅は1億円の評価額、85歳の寿命までに20年間、毎年約1000万円を使うとしましょう。子どもが資産を相続する時、自宅に対する相続税額は小規模宅地の評価減等を使用すると、税金はかからないことになります。20年後に、ファミリー全体では評価額=1億円の自宅だけが残ります。
 
 同じく2億円の現金を手にしたBさん。Aさんと同じく65歳で会社を引退します。やはり都内に1億円の評価の自宅があります。そして新しくファミリービジネスとして不動産で資産管理会社を始めます。金融機関から2億円を調達して4億円の不動産を購入します。年間5%で経営すると、年間収入は2000万円。生活費とするのは役員報酬の1000万円です。1年間の生活費はAさんと同じです。

 借りた2億円は、30年間毎年約900万円の返済計画を組みます。すると85歳時での借入金額は約8000万円となります。しかしその時手元には、価値4億円の不動産管理会社、そして1億円の評価の都内自宅が残ることになります。Aさんと同じく都内の自宅は小規模宅地の評価減等を使用できるので、相続税はかかりません。(資産管理会社の持ち分の評価については、20年かけて贈与や売買をすることによって後継者にしっかりと引継ぎをしておくことを忘れないでください。)

 最終的にBさんは、ファミリー全体では1億円評価の自宅及び、不動産価値4億円の事業用不動産と8000万円の負債ということになります。差引額は4億2000万円のプラスです。仮にBさんが95歳まで長生きした場合、負債はすべて返却していることになるので、ファミリー全体では1億円評価の自宅及び、不動産価値4億円の事業用不動産がまるまる残ります。(家族からも長生きすることが望まれるので、その意味でもファミリーに恩恵がありますね。)

 AさんとBさん、どちらの老後相続対策がいいのか? 一目瞭然、単純明快です。メディアでは「老後生活に一体いくら貯金しなければならないか?」なんていう扇情的な記事や番組があふれていますが、そんなものに惑わされてはいけません。

 中小企業経営者の皆さん、勇退することが終わりではありません。ファミリーのために、そして自分のために、ファミリービジネスという新たなステージで生涯現役を貫いてください!
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執筆者: 李 日生 - プレジデントタイム株式会社 代表
慶應義塾大学経済学部卒業後、公認会計士試験合格、監査法人トーマツ国際部に入社・配属。国際企業(商社・通信事業会社・運輸会社等)の連結会計やM&Aを担当、中小企業の経営コンサルティングも数百社経験する。現在はプレジデントタイム株式会社、神宮前アカウンティングファーム株式会社、株式会社H HOLINGS、有限会社ルーベ、神宮前会計を主宰。会計・税務・経営・飲食・不動産等、実際の経営者として代表取締役視点で多岐に及ぶ経験を重ねている(「頭でっかちの机上の空論が大っ嫌い」を自認)。近刊に『忙しい社長を救う経理改革の教科書』(幻冬舎)がある。

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