生牡蠣を世界ブランドに変えるコンサルティング!挑戦こそが企業を再生させる

100万円での起業から上場企業を買収してわかったこと、守り続けるべきこと/TRYFUNDS

2018年6月13日
欧米に比べて保守性が語られることが多いのが日本企業です。しかし、そんな日本の企業文化に、風穴を開けようとするスタートアップのコンサルティング企業があります。それは「挑戦」と「蓄積」を組み合わせた社名を持つ「TRYFUNDS(トライファンズ)」です。いま手がけるのは上場後わずか2年で債務超過に転落していた牡蠣の生産販売会社の立て直しです。そこには一体どんな挑戦があるのでしょうか。
欧米に比べて保守性が語られることが多いのが日本企業です。海外進出や人材登用をはじめ、日常のビジネス作法もなかなか変わらないのが実情です。しかし、そんな日本の企業文化に、風穴を開けようとするスタートアップのコンサルティング企業があります。その名は「TRYFUNDS(トライファンズ)」。「挑戦」と「蓄積」を組み合わせた造語です。そのTRYFUNDSがいま手がけるのは、上場後わずか2年で債務超過に転落していた牡蠣の生産販売会社の立て直しです。そこには一体どんな挑戦があるのでしょうか。株式会社TRYFUNDSの丹野裕介代表取締役に聞きます。

「この世界は挑戦の連続でできている。だから意志ある挑戦が、次なる未来を創り出す」と語る、TRYFUNDS 代表取締役 丹野裕介さん。社名は「挑戦」と「蓄積」を組み合わせたもの

安全にかける情熱、自分たちで意志を貫くことへの共感

ーーなぜ債務超過に転落していた「ゼネラル・オイスター」のバックアップを考えたのですか。

独自の技術(牡蠣の浄化技術や育成技術)で特許を取って「世界一安全な牡蠣」を生産するという方向性、志が私の胸に刺さったんです。たとえ会社の経営状況が危なくなっても、その根幹部分はやめなかった会社だというところに感心したのです。

牡蠣は「生で食べると“あたる”」という認知があるにも関わらず、一般に流通している唯一のなまものと言っていいでしょう。多くの会社が海から採ったそのままの状態の牡蠣を出荷しているなか、ゼネラル・オイスターは富山で牡蠣を浄化してから流通させています*。しかも国の基準の数倍というクリアレベルですから、あたることはほぼありません。

赤外線殺菌で安全性を確保する手法もありますが、それだと味が死んでしまうと言われています。しかも、ゼネラル・オイスターは店頭での販売価格も競合と変わらない、一個350円から500円台で出しています。ゼネラル・オイスターのみが「味とクオリティ」を担保できているのです。これら一連の工程をすべて自助努力でやっています。安全にかける情熱が全然違うのです。(*ゼネラル・オイスターは生産から店頭販売までの6次産業企業)

債務超過に転落していた「ゼネラル・オイスター」だが、TRYFUNDSのバックアップにより優良な企業へと蘇ろうとしている。「「世界一安全な牡蠣」を生産するという方向性、志が私の胸に刺さったんです」(丹野さん)

――情熱と冷静のバランスが経営的にはマイナスに働いたのでしょうか。

実はこの方式をやめれば収益は一気に改善するんです。でもそれだと社会的存在としての意味をなさない。ゼネラル・オイスターが潰れてなくなると、今後危険な牡蠣が世の中に溢れることを認めてしまうことになります。

フランスでは生牡蠣は一度絶滅しています。種牡蠣が水質汚染で消えてしまったのです。いま日本の種を使って生産している状態です。魚介類を生で食べる文化は、西洋ではオイスター(牡蠣)から始まっていますが、その牡蠣があたるあたらないかでいま、危険な場面を迎えているわけです。西洋初のなまもの文化が途絶えるかもしれないのです。

こういった背景を考えると、いかにゼネラル・オイスターの存在が際立っているかが理解できると思います。国際出願をしていますので、ゼネラル・オイスターの特許技術はグローバルにおいても独占的なものになっています。その意味では、ゼネラル・オイスターの特許技術は日本の国益にもなりうるくらいの可能性を秘めているのです。

究極的にフェアな会社であることに忠実でありたい

TRYFUNDSでは、何を目指すべきかを、「ビジョン」「ミッション」「バリュー」という言葉に置き換えて整理し、企業の経営状況を分析する。再生フェーズでは必要以上に人件費を削る傾向があるが、その方策はとらない。「何よりも人に対しては真摯に考えています」(丹野さん)

ーーコンサルティング、あるいは経営参加する場合には、何から手をつけるのですか。

依頼のうち70%は事業やプロジェクトをさらに前進させるためのものです。残り30%は抜本的な救済を求められる場合です。今回はその30%だったわけです。

まず会社の経営状況を冷静に分析し、この会社は一体何なのか、何を目指すべきなのかということを、「ビジョン」「ミッション」「バリュー」という言葉に置き換えて整理します。

「ビジョン」はビジネスを行っている本質的な理由でその企業の存在意義になります。「ミッション」はビジネスを行う上での戦略的目標、「バリュー」はビジネスを進める上での行動指針というふうに弊社では定義づけをしています。これができれば、あとは社内での浸透を図るのみです。

赤字の会社の救済をする場合は、一般的には個人個人のやれることを明確化して「やれること」を減らしたり、ヒトやモノの削減で支出を減らして利益率を向上させることが多いのですが、そうすると縮小均衡になってしまいます。しかし私たちは社員個々人の権限をふやすことで、成長したい・成果を出したいと思ってもらうことを目指し、有機的に範囲を広げていったほうがいいと考えています。

人件費も「正当化、フェア」という視点で捉えています。再生フェーズでは必要以上に人件費を削る傾向がありますが、その方策はとりません。人件費カットは人材流出につながりかねません。それよりも会社を良くしようという意欲をもっている「火種社員」をみつけるようにしています。何よりも人に対しては真摯に考えています。

例えばゼネラル・オイスターでは、会社の行動指針などを決めるために自由参加の討議会を実施しました。100人程度の会社なのに50人もの社員が自ら手をあげて参加しています。そういう風になると会社に勢いがついてきます。

信念が世の中に広まったとき何兆円産業は生まれる

2012年にTRYFUNDSを起業して友人と向かったのがブラジルだった(写真は当時のもの)。「TRYFUNDSとは何か?」を考え続けたという

ーーTRYFUNDSのスタート地点はブラジルでした。

6年前に100万円で起業しました。そのうち50万円で、立ち上げに参加してくれた友人とふたりでブラジルに向かいました。ブラジルはリーマンショックから急速に回復していましたし、日本には競争相手も少なかったので、きっと獲れるマーケットがあると思ってのことでした。すでにネットワークを保有していたこともあり、幸運にいくつかの仕事が取れました。そこで気付かされたのは、大義を成し遂げるには、挑戦(トライ)を蓄積していく(ファンズ)しかないということでした。私たちの社名である「TRYFUNDS(トライファンズ)」はそこから生まれたのです。辛ラーメンで糊口をしのいだ2年のあいだ「TRYFUNDSとは何か?」を定義するために会話を続けました。そして「信念が世の中に広まったときに何兆円産業になる」ということで友人と一致したのです。ブラジルで作った事業計画はいまも手元に残っています。当時といまで方向性は何も変わりません。

これまでに成功させたコンサルティング事例も含めて、自分の想像を超えた出来事が起こってきました。たまに「中東の王族とのビジネスに成功した!」という話を聞きますよね。もちろん詐欺も多く、眉唾に聞こえるかもしれませんが、でも現実に挑戦を重ねているとそういうことは起こっているのも目にしています。

ポジション(役職)が人を作るわけではありません。人がポジション(役職)を作る。TRYFUNDSを創業して、このことを理解しました。私の経歴を振り返って、もともとあったものはありません。

ーーTRYFUNDSは企業の海外進出に関するコンサルティングが有名です。

実績の積み重ねでその評価をいただいていますが、海外にしぼっているわけではありません。よく「1カ国に特化した方がいいよ」「どうして一業種にフォーカスしないの」と言われるのですが、それは私たちの目指すところではありません。「その会社にとってのベストとは何か?」を考えることが重要なのです。だから相談の初期段階では、私たちはポジショントークをしません。会社のなりたちが「挑戦をカルチャーに」です。最も質の高い挑戦をするためには、何をどこでどのように行えばよいかを考え抜くという点で、究極的にフェアな会社であることに忠実でありたいと思っています。

ーー日本の中小企業はなかなか外に出たがりません。

海外だと思うからダメなんです。海外に行くのが目的なのではなく、中長期的にどこでやれば一番収益が上がるかという点を考えればいいんです。例えばベトナムのホーチミンの真ん中にお店を出した方が東京より利益があがる、といった風に具体的に考えればわかりやすくなります。そうすれば国内での地方進出とさほど変わりません。「ライトプレイスでライトサービス」を提供すればいいんです。英語ができるできないも関係ありません。

――今後、力を入れていきたいプロジェクトはありますか。

ITサービスとファンドがこれからの大きなサービスになりそうです。いま手がけているのが世界各国のM&A情報を集約したマッチングサイトです。サイト上には世界各国からの「買ってください」という会社が規模の大小を問わずいっぱい登録されています。簡単に海外の会社が買えるんです。例えば中小企業を1店舗で建てることも買って海外に出せることもあります。

いま手がけているのは世界各国のM&A情報を集約したマッチングサイト。サイト上には「買ってください」という会社が規模の大小を問わず登録されている

ーーそれなら日本にいながら「ハノイで1店舗買おう」という気にもなりますね。

「距離を近づけるのはITで、手のかかるものはアナログで」と言っています。身の丈を超えそうな場合は私たちが応援します。もしお金がかかるのならば、ファンドを用意します。

常に王道を歩め

ーーこの部屋にはTRYFUNDSの行動指針となる6つのフレーズが偉人たちの肖像とともに掲げられています。

「夢中になれる行動力」(アインシュタイン)と「王道を行く覚悟」(ディズニー)。このふたつがメインになります。これがあれば組織は大丈夫です。黙っていても人はついてきます。その後に続く4つは、率先して責任を求める「開拓者の魂」(コロンブス)る、一般的な常識にとらわれず新しい価値を創りだす「革新的な発想」(エディソン)、あらゆる協業者が動きやすくなる仕組みづくりをするために必要な「人を巻き込む力」(キング牧師)、価値を最大化することに「強い情熱とこだわりを持つ」(フォード)です。

それぞれのフレーズに対して「PLAY」「DRIVE」「LEAD」といるレベルを設定しています。普通の会社だと役職ごとにレベルがありますが、TRYFUNDSではこの3つがそれにあたります。

「PLAY」は自らがプレイヤーとして成果を出せる人。「DRIVE」は他の人が考えていることをさらに上のレベルに浮上させられる人。「LEAD」は社会や会社が向かうべき方向のグランドデザインを描ける人。私はLEADとして王道を作る立場です。そこは決してずれることはありません。

TRYFUNDSが掲げる6つの行動指針のうち、メインになるのが「夢中になれる行動力」と「王道を行く覚悟」だ。さらなる会社の発展のために「私は王道を作る立場」と丹野さんは語る



執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

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