2018 観光産業の潮流、押さえておきたい4つの波

2018年1月19日
2017年は数字の上ではいざなぎ景気を超える好景気となりました。2018年はどんな年になるのか。今回は、インバウンドをはじめ観光産業において、今年押さえておきたい4つのトレンドをピックアップ。その変化と進化、そして今年起こる新たな波を紹介します
 2018年が明けましたが、インバウンドをはじめ観光産業において、皆さんは今年どのような展望を持っておられるでしょう。

 2017年は数字の上ではいざなぎ景気を超える好景気となりました。2018年はどんな年になるのか。今回は、今年押さえておきたい4つのトレンドをピックアップ。その変化と進化、そして今年起こる新たな波を紹介します。

■1. トレンド続く、インバウンド。政府目標2020年4000万人への道は?

 まず一つ目は、ここ数年変わらぬビジネスの潮流、インバウンドは今年も見逃せないトレンドとなります。

 2017年の訪日外客数(推計値)は、前年比19.3%増の2869万人超、観光消費は前年比17.4%増で4兆円を突破。好調を維持していますが、訪日外客数の増加率はインバウンド旋風が流行語大賞にノミネートされた2015年をピークにやや鈍化しています。

2017年の訪日外客数は、前年比19.3%増の2869万人超、観光消費は前年比17.4%増で4兆円を突破。好調を維持しているが、訪日外客数の増加率は2015年をピークにやや鈍化している

 2017年の訪日外客数は前年より466万人増加しましたが、うち205万人は前年の509万人から40.3%増となる714万人へ客数を伸ばした韓国人客の増加によるもので、これまで客数で一位をひた走ってきた中国は前年比15.4%増の735万人に留まりました。

 伸び率では東南アジアのベトナム31.2%、インドネシア30%、フィリピン21.9%が高い伸びを見せていますが、数字の上ではまだ30~40万人台。東南アジアでトップのタイは98万人。東南アジア諸国では今後、それぞれ100万人台の大台に載せることも期待されますが、仮に中韓がこれで頭打ちになれば、政府が掲げる2020年4000万人、8兆円という目標に届くかどうか。

 少なくとも観光消費に関しては、2017年1人当たり旅行支出は15万3921円(前年比1.3%減)となっており、たとえ4000万人を達成したとしても実現は厳しい模様です。観光消費の拡大には「コト化」が必要という認識は浸透しているところかと思いますが、インバウントは一つの踊り場に差し掛かっており、プレイヤーにはターゲティングやコンテンツに新たな戦略が求められるところです。

■2. 観光誘導の情報訴求におけるユーザー環境と行動変化

 2つ目は、これもここ数年のトレンドとなっていますが、情報訴求におけるユーザー環境の変化には著しいものがあります。情報通信白書によるとスマートフォンの普及率は2012年末は49.5%でしたが、2013年末には一気に62.6%に上昇、2015年末には72.0%となり、消費者の情報収集や消費行動も大きな変化を見せています。

 たとえば、私が連載を持つメディアでもこうした変化を反映し、読者のデバイスの比率は徐々にPCからスマホやタブレットに移行しており、ある観光レジャー系のメディアのデータ分析では現在、記事にアクセスしてくるデバイスの実に95%がスマホです。

 加えて高いアクセス数を見せた記事の流入先を見ると、LINEニュースなどが大きな影響力を持っていることに気づきます。しかしこうした変化への対応は特に地域観光の分野では大きく遅れており、BtoCでビジネスを行う企業を含めて早期に適切な対処が求められるところです。

 また、インスタなど、SNS映えが地域観光のブレイクやヒット商品を生むことにつながるトレンドも続いています。

 SNS映えする観光情報を発信するスナップレイス社が発表した「2017年のSNS映えスポットランキング」は、同社SNS映えの基準に従って抽出した全国約6,000スポットを対象にしたもので、インスタグラムのほか、ツイッターなど16種のSNS別にその特性やメディア活用法の分析は興味深いところです。

【出典: スナップレイス】
17種類SNS映え:https://snaplace.jp/varioussnsbae/
SNS映えランキング:https://snaplace.jp/2016snsbaeranking/

インバウンドをはじめ観光産業において、2018年に押さえておきたい4つのトレンド。その変化と進化、そして今年起こる新たな波とは?

■ 3.民泊元年 住宅宿泊事業法(民泊新法)6月施行

 今年最もインパクトのあるトレンドといえば、やはり今年6月に予定される「住宅宿泊事業法」、通称「民泊新法」の施行です。すでに民泊事業商戦はスタートしており、楽天グループの民泊事業会社「楽天LIFULL STAY」は昨年末、オランダに本社を置く世界最大のOTA(オンライン宿泊予約サイト) で、229の国と地域で150万軒以上の施設を登録、43か国語で予約可能な「Booking.com(ブッキングドットコム)」との提携を発表。

 同社の強みは通常のホテルや旅館、アパートメントのほか、ツリーハウスやイグルー(雪で作ったシェルター)など、30種類以上の宿泊施設を扱っていることですが、同社が日本を含む世界26か国19,000人以上に対して行ったアンケートによると33%が「民泊物件に泊まりたい」と回答したいうことです。

 今年になりリクルートグループが不動産情報サイト「SUUMO(スーモ)」に掲載する賃貸物件の空き室を民泊用に提供するため、民泊仲介サイトで世界最大手の米「AirbnB(エアビアンドビー)」と提携を発表するなど、民泊新法の成立後、様々な事業者、グループが民泊事業参入ののろしを上げており、各社陣営の枠組みもおおかた見えてきました。

 ヤフーの子会社「一休」はいち早く、民泊宿泊予約サービス「一休.com バケーションレンタル」を立ち上げており、日本全国から厳選された上質な別荘やヴィラ、コンドミニアムや一棟貸切の古民家や町家など、他と差別化するラグジュアリーな物件を取り揃えるなど、他者との差別化を図っています。

 こうした事業者の本格参入はインバウンドだけでなく、日本における宿泊施設や旅のあり方も激変させることでしょう。

■ 4.加速する公共民営化・コンセッション(運営権売却)方式の導入の本格化

 最後となりましたが、4つ目は今後、日本社会のあり方を大きく変える可能性がある公共の民営化、官民協働(PPP)の手法の一つ、コンセッション方式導入の本格化です。

 根底にあるのは人口減少、少子高齢化であり、建設から50年を過ぎた公共インフラの老朽化であり、その解決策として注目されているのがインフラの所有権を公共側が保有したまま、運営権を民間事業者に長期間にわたり付与する官民連携(PPP)の手法の一つ、コンセッション(運営権売却)方式の活用です。

 とこれについて詳しくお話ししたいところですがこのテーマは非常に大きなものですので、続きは次回以降にしたいと思います。 

●関連リンク

執筆者: 水津陽子 - 地域活性化・まちづくりコンサルタント
合同会社フォーティR&C代表、地域活性化・まちづくりコンサルタント。地域資源活かした地域ブランドづくりや観光振興など、地域活性化・まちづくりに関する講演、企画コンサルティング、執筆を行う。2014年地方創生法に関連し衆議院経済産業委員会に参考人出席。著書に「日本人だけが知らないニッポンの観光地」(日経BP社)などがある。

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