富裕層インバウンドの法則その6

2017年4月13日
これからの富裕層インバウンド戦略に戦略的広報という視点は絶対に欠かせない。自分で調べ、交渉し、企画し、レファレンスも周辺の人脈を駆使して自分で取る。主体的な動きができる戦略的広報経験者(普通の広報経験者ではない)には注目が集まる時代になるだろう。
★法則6:富裕層インバウンド、戦略的広報の時代へ。

 これからの富裕層インバウンド戦略に戦略的広報という視点は絶対に欠かせない。自分で調べ、交渉し、企画し、レファレンスも周辺の人脈を駆使して自分で取る。おまけにメディアとのコネクションには絶対の自信がある。このような主体的な動きができる戦略的広報経験者(普通の広報経験者ではない)には注目が集まる時代になるだろう。

 一言でいえば、戦略的広報の原点はプランニング能力だ。プランニング力が雌雄を決する時代はそう遠くはないと私は思っている。元来日本人は「組み立てる」ことは得意なはずだ。戦後日本の復興はこの能力をもって加工貿易を推進できたから成し得たことではなかったか? しかしながら生産現場で「組み立てる」ことにはかなり訓練をされた労働力があったものの、アイデアを組み立ててプランに落とし込む、と言う意味合いの「組み立てる」ことに訓練されている労働力が圧倒的に少ない。企画の100本ノックみたいな昔話をするつもりはないが、やはりこの手のものは慣れる、つまり思考のフレームワークがプランニング型の人間か否かによって決定的な差がでてしまうものなのだ。

 おまけに特に欧米の富裕層は「ブランドイメージ」に大きく興味を持っている。欧米に旅行に行ってテレビCMを見て感じたことのある読者もいると思うが、ブランドイメージを損なわないための宣伝費を驚くほど使っており、よって、「この国の、この地域の、この○○の、ブランドとは要するに何なのか」という思考回路になっていることが多い。特に欧米富裕層マーケティングにおいては、この「たったひとつの自分を表現する言葉」があるかどうかで大きな差が出てしまうことになる。旅行の意思決定のきっかけにおいては「北海道の冬は、カニと温泉とスキーと、、、」でなく「北海道の冬はスキー」で必要十分なのだ。

 海外富裕層マーケティングを考えていけばいくほどこのように組み立てていく戦略的広報が必ず必要な時代になってくる。それが難しい、となると、次に考えることは、広告代理店経験者の中途採用を真剣に考えてみたらどうだろう? 長時間労働で世間を騒がせている側面は否めないが、マインドセットそのものはかなりのものだ。何を隠そう私も元々電通マン、これからの富裕層インバウンド産業に必要になってくる人材が多く存在することはピンときている。

 例えば私が日本の旅館の戦略広報担当になったら何をやるか? まずは小さなトレードショー開催に向け動き出すだろう。なんらかの展示会に協賛するというよりはむしろ自らが中心的な存在になって動き出すだろうと思う。参考になるものはコネクションズラグジュアリーと呼ばれるトレードショーだ。30対30程度のエギジビター/バイヤーの商談会で、開催場所の文化などにあわせた商談スタイルを企画するものだ。

 東京で開催となると、皇居の周辺のジョギングしながら商談、浅草で人力車に乗りながら、など様々な商談スタイルが目に浮かぶ。参考までに、google検索で様々なハイエンド旅行関連のトレードショーが世界には多く存在していることがわかる。カンファレンス(conference)やトレードショー(trade show)で検索すれば、自分で主催を考える場合の参考になるものが多く見つけられるはずだ。日本文化に根差すアート系のトレードショーや和食に関するそれなどを主体的に実施しようと考え出すと案外、海外富裕層誘致に近づく可能性が強い。

 または、地域連携などのアイデアはBest of the ALPSというアルプス地方の都市の広域連携を参考に組み立てるとよい。ダボスやサンモリッツ、インスブルックやツエルマットなど日本人にも知られている都市もあるが、ムジェーブなどなじみの薄い都市も同広域連携には参加している。冬はスノーデスティネーションとして、夏はトレッキングデスティネーションとして世界の富裕層の集客に成功している。ほとんどパクりの発想でいくのであれば、Best of the FUJIという商品設計を考えればよい。静岡、山梨、それに長野、神奈川の温泉ホッピングを富士山でブランドインテグレーション(ブランドを統一すること)するなどアイデアはいくらでもでてくるはずだ。

「組み立ててプランに落とし込む」のにはトレーニングが必要だ、という事実を忘れてはならないだろう。でもそのトレーニングは、「調べること」から入るケースがほとんどだ。だから意識の高い人材が社内にいればいますぐ無料で始められることでもあるのだ。当社が開始している「富裕層インバウンドビジネス研究会」は、このようなテーマをひとつひとつ掘り下げようとしているものだ。3か月で9万円の研修商品で、2017年7-9月に第二期が実施される。いくつかの気づきをインバウンドビジネスに取り込みたい事業者様におすすめしている。なお、富裕層インバウンドビジネス研究会については、以下のサイトを参照されたい。http://rpartners.jp/inbound/ibk/

●関連リンク

執筆者: 増渕達也 - ルート・アンド・パートナーズ代表取締役
1992年、東京大学卒業後、(株)電通入社、2002年、富裕層向け雑誌の草分けであるセブンシーズを発行する(株)セブンシーズ・アンド・カンパニー代表取締役に就任。2006年、富裕層向けライフスタイルマネジメントサービスを手掛ける(株)ルート・アンド・パートナーズ設立、現在に至る。2013年にはシンガポールに進出。日本、アジアを中心に富裕層ビジネスを手掛け、富裕層マーケティングに関する造詣が深い。「HighNetWorth Magazine」編集長、富裕層インバウンドビジネス研究会も主宰。

増渕達也新着記事

  • 富裕層インバウンドの法則その8

    「こんなに深い歴史があるのになぜ外国人はこの街に興味を持たないのだろう?」それは「翻訳がなされていないから」ということに起因する。日本語を英語や中国語にという翻訳ではなく、「相手の頭に残るような形にしてあげること」なのだ

    2017年7月5日

    増渕達也

  • 富裕層インバウンドの法則その7

    富裕層マーケティングと言うと、相手が特殊な人種だ、という議論になりやすい。しかし、富裕層インバウンドを考えていく場合には、「その国と言葉で捉えた日本」という視点や「その国と日本の歴史的関係性」から目を離すことはできない

    2017年5月19日

    増渕達也

  • 富裕層インバウンドの法則その5

    最近購読しているメールマガジンに見入ってしまった言葉があったので今号でぜひ考え方として紹介してみたい。曰く、「顧客を創る顧客」を創るのが顧客視点の経営の本質である、と。

    2017年2月28日

    増渕達也

  • 富裕層インバウンドの法則その4

    富裕層インバウンドが本格的になればなるほど「通訳案内士」の存在感も増してくるはずだ。なにせ、外国人の旅行ガイドは法制度上原則彼らしかできないのだから。富裕層インバウンドツーリストと通訳案内士のマッチングサービスは妙味のあるビジネスになるだろう。

    2017年1月23日

    増渕達也

  • 富裕層インバウンドの法則その3

    自社で人を出して毎日リサーチさせる「効率的なムダ」を観光協会や自治体も予算を振り向ける時期にきている。「想定ターゲットを絞りきる因数」を見つける、だれでも明日からできることーー富裕層インバウンドを捉える視点の有用な考え方としておさえておきたいところだ。

    2016年12月15日

    増渕達也

  • 富裕層インバウンドの法則その2

    富裕層インバウンドの法則その2。今回は一般的な外国人旅客に人気のある商品から外国人富裕層へのアナロジーを考える。外国人旅行者に大変人気のある商品は、日本酒テイスティング、相撲朝稽古見学、ローカルバーホッピングの3つ。1点1点アナロジーを考えていこう。

    2016年11月25日

    増渕達也

  • 富裕層インバウンドの法則その1

    富裕層ビジネスは、日本では2000年代前半に話題の言葉でランキング1位となって以来、二極化への企業活動対応という意味からも無視できない言葉になっている。「富裕層インバウンド」という、21世紀の新型キーワードが生まれてくることは時代の必然だったと言えるだろう。

    2016年10月24日

    増渕達也