好景気でも不景気でも、会社は赤字を出してはいけない

2017年5月9日
経営者であれば「好景気であっても、不景気であっても、絶対に赤字は出さない。必ず利益を出す」という強い信念で経営をしなければならない。業績を景気のせいにしている経営者は自分の能力のなさを自らひけらかしているようなもので、情けない。
 好景気であったり、不景気であったり、流行りすたりがあったり、世の中は日々変化の連続である。当然、好景気であれば業績はよくなるだろうし、不景気であれば業績は上げづらくなる。ヘタをすると赤字になってしまうかもしれない。

 しかし、経営者であれば、「好景気であっても、不景気であっても、絶対に赤字は出さない。必ず利益を出す」という強い信念で経営をしなければならない。
業績を景気のせいにしている経営者や管理職をよく見かけるが、それは自分の能力のなさを自らひけらかしているようなもので、聞いていて本当にみっともないし、情けない。

 好景気であれば利益が出て、不景気であれば損が出る。これでは、景気が経営しているようなもので、そこに経営者の手腕はまったく発揮されていないと言ってよい。経営者はいてもいなくても同じ、ということになってしまうではないか。

 松下幸之助氏は、「不景気でもよし、好景気であれば、なおよし。商売上手な人は、不景気に際してかえって進展の基礎を固めるものだ」という言葉を遺している。

 好景気、不景気とは、どうしてもあるもの。永遠に好景気が続くということはありえず、いつかは不景気の波が必ず訪れる。波があることが最初からわかっているのだからこそ、経営者は景気動向を業績の理由にしては絶対にならない。「商売は時世時節(ときよじせつ)で得もあれば損もある――と考えるところに、根本の間違いがある」。これも松下幸之助氏の言葉だが、本当に経営に対する厳しい姿勢が表れている。

 経営者は言い訳をせず、どんなときでも必ず利益を上げなればいけない。そういう覚悟・気持ちがあれば、経営者の行動は変わってくる。その例をあげてみよう。

 あの日本電産の永守重信社長は、リーマンショック後の2008年12月の売上が、直近のピークだった9・10月の5割強となり、黒字が維持できるか、赤字に陥るか企業存亡の危機を感じたという。

 そこで永守社長がとった行動は、何と図書館にこもり1930年頃の世界大恐慌に関する書物をむさぼり読んだ、というのである。まだその頃は、リーマンショックなどとは命名されていなかっただろうが、永守社長はこの落ち込みは世界大恐慌に匹敵するものだ、と瞬時に察知したのだろう。その感性はさすがというしかない。

 その上で、12項目におよぶ「不況対策指針」をわずか数日で作り上げ、社内に発表したのである。その内容は、在庫圧縮などはもちろん、人命、健康、法令順守に反すること以外は、すべてでコスト削減を徹底するよう指示するものだった。

 製造業では、工場の稼働率が7割程度を下回ると一般的には赤字になるが、永守社長はこれが5割になったとしても黒字を出せる体質にするという、とてつもなく高い目標を掲げたのである。リーマンショックのように、通常ではあり得ないくらいの危機に直面した時には、普段では出てこない収益改善策が次々に出てくるものだと言う。まさに、火事場の馬鹿力のようなものだ。

 その結果、当期の黒字確保はもちろん、不況下で鍛えられたコスト体質は、景気が回復すると超高収益体質の会社に生まれ変わったのだ。何と、不況を利用して会社を強くしたのである。

 経営者はこのくらいたくましくないといけないと思う。好況でも不況でも必ず利益を出す。不況であれば会社を強くするチャンス、と見て好況時にはできないことをやるのだ。

 景気や環境のせいではなく、すべては自分に責任があるということを肝に銘じることだ。逆に言えば、すべては自分たちで変えることができるということ。だからこそ、経営者は常に闘争心を持って、闘い続けていかなければならない。

 赤字になるというのは、すなわち、経営者があきらめたとき、だけなのである。

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執筆者: 北岡修一 - 
東京メトロポリタン税理士法人 統括代表。25歳で独立以来、税務会計業務を基本としつつも、経営診断、人事制度の構築支援、システム導入支援などコンサルティング業務にも携わってきた。現在は「会計理念経営」を掲げ、「会計を良くすると、会社が良くなる!」をモットーに、誠心誠意、中小企業を支援している。主な著作に『社長の「闘う財務」ノート ~ 社長の数字力が会社を鍛える』(プレジデント社)、『事業の引継ぎ方と資産の残し方・ポイント46』(共著/あさ出版)がある。

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