不況のときには経費を押さえ、好景気に備える

2017年8月29日
人件費の削減は、リストラよりも全員の給与の一律カットのほうがいい。そして、全社一丸で頑張るというほうが、会社の力になるはずである。リーマンショックのときは、そのような対応を行った会社が多かった。その際に特に印象に残ったのは、日本電産の永守重信社長である。
 いい時期もあれば悪い時期もあるのが経営だが、不況で業績が落ち込み、赤字転落が見込まれたり、資金繰りが厳しくなったときはどうしたらいいのだろうか。

 まず、やらなければいけないことは、原価や経費を徹底的に節減することである。売上が減るのだから、経費も減らしていかなければ即赤字、即資金難になってしまう。これは、社員全員の知恵を絞ってやるべきだ。

 こうしたとき、人件費を節減する、リストラするということをすぐに行おうとする会社があるが、リストラは最終手段である。絶対に安易にやるべきではない。

 人件費の削減に関しては、リストラよりも全員の給与の一律カットのほうがまだいいと思う。「皆で協力して、この苦境を乗り切ろう!」と、一定期間給与を皆でカットする。そして、全社一丸で頑張るというほうが、会社の力になるはずである。リーマンショックのときは、そのような対応を行った会社が多かった。

 リーマンショックの際に特に印象に残ったのは、日本電産の永守重信社長である。永守社長は、リーマンショック後に5割まで受注が落ち込んだ年末に、1930年頃の世界恐慌に関する書物をむさぼり読んだそうである。

 そして、年が明けた元旦に、12項目の「不況対策指針」を打ち出した。在庫圧縮はもちろん、人命・健康・法令順守に反すること以外は、すべてでコスト削減を徹底するという内容だった。 ただし、「雇用は天守閣」と定め、正社員の雇用は絶対に守るということも同時に打ち出した。さらには、不況時にコスト削減を徹底する、生産性を改善することにより、売上が50%減っても利益が出る体質を目指したのである。

 永守社長が掲げた<コスト削減+雇用を守ること>が徹底されたため、日本電産は減収になっても赤字に陥ることはなかった。また、売上がピーク時の75%まで回復すれば元の利益に戻り、100%戻れば利益は以前の倍になるという企業体質までもつくり上げた。まさに、永守社長は不況を活用して企業の体質を大幅に改善したわけである。

 永守社長のように不況と闘う強い意思があれば、赤字回避のみならず、企業体質を飛躍的に成長させることまでできるのだ。「こんな不況じゃうちの会社もものすごい赤字になってしまう・・・」と弱腰になっていないで、「何とかしてやる!」「これをきっかけに成長してみせる!」と、闘う覚悟を決めるべきだ。

 不況は企業にとって、高収益体質に転換する絶好のチャンスとも言えるのである。

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執筆者: 北岡修一 - 
東京メトロポリタン税理士法人 統括代表。25歳で独立以来、税務会計業務を基本としつつも、経営診断、人事制度の構築支援、システム導入支援などコンサルティング業務にも携わってきた。現在は「会計理念経営」を掲げ、「会計を良くすると、会社が良くなる!」をモットーに、誠心誠意、中小企業を支援している。主な著作に『社長の「闘う財務」ノート ~ 社長の数字力が会社を鍛える』(プレジデント社)、『事業の引継ぎ方と資産の残し方・ポイント46』(共著/あさ出版)がある。

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