中小企業経営者にとっての自宅は「賃貸」か?「購入」か?(続編)

2018年3月1日
前回のコラムでは、借上げ社宅制度を使って給与を家賃にできるのであれば、所得税(所得税+住民税)にすることで、仮に月額家賃を60万円とした場合、自宅を賃貸にしたほうが10年間で1,148万円も得することをお話ししました。
 前回のコラムでは、借上げ社宅制度を使って給与を家賃にできるのであれば、所得税(所得税+住民税)にすることで、仮に月額家賃を60万円とした場合、自宅を賃貸にしたほうが10年間で1,148万円も得することをお話ししました。

 今回は経営上ではよくある意思決定の考え方をしてみましょう。短期的(住宅ローン控除有効期間)な損得ではなく、意思決定の材料にするうえで長期的な損得という考え方をつけ加えると、 住宅ローン控除がなくなる10年後には、1,548万円さらに損得が異なることになります。

 20年間で、「総額1,548万円ー400万円(最初の10年間)+1,548万円(その後の10年間)」。つまり2,696万円、賃貸のほうがお得だということになります。

 しかし、この年間のフローだけで意思決定してよいのでしょうか? エグジット(出口戦略)をしっかり想定して意思決定しなければ、結果として損することも往々にしてあります。

 さらに経営として意思決定する上でのストックの概念で考えてみましょう。

 購入をストック面でみてみます。20年間で60万円/月の返済を続けていると、支払総額は年間720万円、20年間で1億4400万円になります。半分が利息、元本返済が半分と仮定しても7,200万円の返済が終わっていることになります。

 20年後も買った金額と同じ金額で売れた場合には、7,200万円の現金が入ってきます(個人の居住用住宅売買特例等あれば税金はほとんどかかりません)。

 賃貸と比較すると賃貸にはストックがないので一気に逆転して購入の方が、「7,200万円ー2,696万円」、つまり4,504万円得するという結果になります。

 仮に20年後に4,504万円まで値下がりした場合でも、差し引きトントンということになります(実は時間的価値があるので1年目から154万8,000円の得をしたほうが価値は高いのですが・・・)。将来、不動産(購入した自宅)がいくらで売れるかはだれにもわからないので、そのあたりはあまり期待しても意思決定材料としてそぐわなくなることも念頭に置いておきましょう。

 色々な視点から材料を出して意思決定する際には、自身がなにを重要に考えているかをまず見極めることです。

 人生最大の買い物といわれる自宅ですが、経営者はそれ以上の意思決定を迫られる機会が度々あります。様々な視点から意思決定のための材料を集めることをお勧めします。

『忙しい社長を救う経理改革の教科書』/幻冬舎・経営者新書/李日生、普川真如 共著

●関連リンク

執筆者: 李 日生 - プレジデントタイム株式会社 代表
慶應義塾大学経済学部卒業後、公認会計士試験合格、監査法人トーマツ国際部に入社・配属。国際企業(商社・通信事業会社・運輸会社等)の連結会計やM&Aを担当、中小企業の経営コンサルティングも数百社経験する。現在はプレジデントタイム株式会社、神宮前アカウンティングファーム株式会社、株式会社H HOLINGS、有限会社ルーベ、神宮前会計を主宰。会計・税務・経営・飲食・不動産等、実際の経営者として代表取締役視点で多岐に及ぶ経験を重ねている(「頭でっかちの机上の空論が大っ嫌い」を自認)。近刊に『忙しい社長を救う経理改革の教科書』(幻冬舎)がある。

コラム新着記事

  • こんにちは。クラウドサービス「カイクラ」の江尻です

    株式会社シンカ代表取締役社長の江尻高宏さんによる連載。今回は看板サービスであるクラウドCTIの名称変更という大発表です。使い慣れたサービス名を、江尻さんは今なぜ変えるのでしょうか? その決断に至る心のあやを語ってくれました。

    2019年11月18日

    コラム

  • 特撮ドラマ『仮面ライダーゼロワン』 AIは人類にとって敵なのか味方なのか?

    「AIは人類にとって敵なのか味方なのか?」と気になる人に是非オススメしたいのが日曜朝9時から放送されている『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日系)だ。主人公はAI企業の2代目社長! アンドロイドが社会に普及した世界を舞台に、暴走したアンドロイドを止めるため、仮面ライダーゼロワンに変身して戦う物語だ。

    2019年11月8日

    コラム

  • 株式会社シンカができるまで Vol.6 ~ベンチャーはこうして世に羽ばたく~

    株式会社シンカ・江尻高宏さんのコラム、シリーズとして会社創業時から現在にいたる汗と涙の道のりを振り返ります。何が成功を導いてくれたのか? 何が足りなかったのか? どんな出会いがあったのか? どんな発想で切り抜けたのか?・・・ベンチャー企業創業者だからこそ語ることのできるリアルストーリーです。第6回は前回に引き続き人材採用についてです。2人目以降は順調に採用できるはず・・・と思いきや、まったくうまくいかなかった創業初期の人材採用を振り返ります。

    2019年10月28日

    コラム

  • 斜めから見る〜今月の一冊 ⑩『マリア・シャラポワ自伝』

    ビジネスでは他人とつながったほうが良い結果が出る──この指針はあらゆるケースで全面適用に近づいているようにみえます。しかし本当にそうなのでしょうか? それでグローバルなサバイバル競争を勝ち残れるのでしょうか? ひとりきりになったときに、普段からどうすればよいのかーー今回おすすめしたいのは、個人の競争戦略の教本として読み応えだっぷりな『マリア・シャラポワ自伝』です。

    2019年10月15日

    コラム

  • 映画『記憶にございません!』ある日突然、自分が総理大臣をやることになったら?

    国民的映画監督の三谷幸喜が今回映画の題材に選んだのは総理大臣。しかも記憶を失った総理大臣! 着想のきっかけは「ごくごく普通の人間が、突然総理大臣になったらどうなる?」だったといいます。主人公を演じる中井貴一の悪戦苦闘は、若い頃の理想を見失ってしまったビジネスパーソンへのメッセージにもなっています。

    2019年9月30日

    コラム

  • <シリーズ>「地方創生」2期へ! 1期を検証する④

    地方創生戦略の重点項目の一つ、デジタル活用共生社会「society5.0」。しかし、地方に行けば、情報リテラシーの格差が見られます。スマートフォンやSNSの普及により新たな人とのつながりやバーチャル・コミュニティが形成される一方、リアルな地域のつながりは希薄化、地域コミュニティ力は減退しています。今回は地域SNSを使い、新たな地域のつながり、コミュニティの活性に挑む、若き起業家の挑戦に着目、地域におけるデジタル活用の手法を追いました。

    2019年9月24日

    コラム

  • 株式会社シンカができるまで Vol.5 ~ベンチャーはこうして世に羽ばたく~

    株式会社シンカ・江尻高宏さんのコラム、シリーズとして会社創業時から現在にいたる汗と涙の道のりを振り返ります。何が成功を導いてくれたのか? 何が足りなかったのか? どんな出会いがあったのか? どんな発想で切り抜けたのか?・・・ベンチャー企業創業者だからこそ語ることのできるリアルストーリーです。第5回は会社を興した後、初めて社員を採用した時の気持ちが揺れ動いた日々を振り返ります。

    2019年9月19日

    コラム

  • アパレル業界を変えるIT戦略! 熊本発ベンチャー、シタテルが描く「服の未来」【Vol.3】

    アパレル業界は、メーカー、工場ともにテクノロジー化が遅れており、在庫問題や工場稼働の不均衡、手作業による工数の増加など様々なビジネス上の課題を抱えています。そんななか、服を作りたい人と縫製工場を橋渡しする衣服の小ロット生産サービス「sitateru」が注目を浴びています。優れた技術力を持つ縫製工場の「時間・技術・資源」のデータ管理を行い、服を作りたい人と縫製工場を橋渡しする、衣服の小ロット生産サービスです。「sitateru」を提供しているのは、熊本発ベンチャーのシタテル株式会社。アパレル業界の課題をテクノロジーでどう解決するのか? シタテルCTOの和泉信生さんによる連載、その最終回です。

    2019年9月9日

    コラム