~健康経営が生む新ビジネス:3~オフィス訪問の野菜販売が好調!

2017年3月29日
【記事のポイント】 ▼訪問型サービスでは、導入から運用までの手軽さが普及のポイントとなる ▼配送や商品加工は専門業者に任せ、ビジネス規模を急速に拡大させる ▼先達のいる宅配事業も、ターゲットをビジネスに変えれば活路が見える

■野菜をきっかけにした健康経営のススメ

 最近、経営者の間で注目を集めている健康経営は、職場の生産性向上に従業員の健康から取り組もうとするもの。その健康を維持するための手法として、日々の食生活に注目する動きが増えている。

 「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」は、オフィスに配送した生鮮野菜を食事やおやつ代わりとして提供するサービス。契約事業者のオフィスに専用の冷蔵庫を置き、定期的(現在は週2回)に生鮮野菜を届ける。メニューはそのまま食べるプチトマトをはじめ、ドレッシングと一緒に容器に入ったサラダ、それだけで1食分を担うサラダごはんタイプまでさまざまだ。

 2014年4月にサービスを本格化すると、契約事業者数は2017年3月の時点で累計400社を突破。サービスを提供する株式会社KOMPEITO代表取締役社長の川岸亮造氏によると、その数は間もなく500社に迫ろうという勢いだ。

地方の農家が栽培する有機野菜が消費者へ直接届く流通の仕組みを模索する中でOFFICE DE YASAIが誕生したと、KOMPEITO代表取締役社長の川岸亮造氏は語る

「野菜には健康的なイメージがあるので、手軽に食べられるようになれば、従業員が健康に気遣うきっかけになります。経営者としても従業員の健康を気遣っているというメッセージを発信することができ、健康経営の第一歩として利用しやすいサービスといえるでしょう」

 料金は事業者が全額もしくは一部を負担するプランを用意しており、福利厚生の一環となっている。専用の冷蔵庫をオフィスに置くだけという手軽さも、経営者にとってはサービスの魅力の一つになっているようだ。

OFFICE DE YASAIではオフィスで手軽に生野菜が食べられる

■得意分野を持つ企業と連携してビジネスモデルを確立

 OFFICE DE YASAIのビジネスモデルには、さまざまな事業者が関わっている。まずは、野菜の生産者となる農家だが、ここで注目したいのは、サービスローンチ当初、敢えてサイズが小さすぎる規格外品を仕入れていたことだろう。正規品よりも仕入れ値が安いのはもちろん、トマトやキュウリなどは“小さすぎる”からこそカットなどの加工をせず、そのまま容器に入れて販売できる。これがコスト削減につながっているのだ。

 2014年11月にはキユーピー株式会社と資本提携を結び、同社の加工工場の利用が可能となった。従来は扱えなかった加工が必要な野菜、同社の正規品もメニューに加え、商品のラインアップは大幅に強化されたという。それは、同時に商品の安定供給にもつながった。

 一方で契約農家は規格外品を卸すだけでなく、正規品の卸を拡大する機会を手にすることになる。キユーピーにとっても自社のマヨネーズやドレッシングをオフィス向け販売することになり、三者それぞれにメリットが生まれた。

キユーピーの女性社員や、顧客のベンチャー企業の総務・広報女性社員の声を採り入れて開発し、今年の1月から新発売した「カラダ満足パワーサラダ」はそれだけで食事になるボリュームがウリ

 また、当初オフィスへの配送は自社スタッフが自転車やバイク、車で行っていたため、サービスエリアは都内の一部エリアに限られていた。しかし、2016年4月には朝日新聞販売所(ASA)と業務提携し、その配達網を活用することでエリアを徐々に拡大している。配送の外注化はコストが発生するものの、エリア拡大のための投資と比べた上で、川岸氏は前者を取ったという。朝日新聞販売所にとっても朝刊と夕刊を配達する間の空き時間を活用できるため、パートナーとしての相性は良い。

「弊社は規模が小さな企業で、資本力にも限りがあります。だからこそ、得意分野を持つ企業や農家にできるだけ任せて、弊社自身はコアな部分に専念しました。そうすることでここまで成長できたのだと思います」

オフィスの片隅に省スペースで設置できる専用冷蔵庫に野菜商品を入れて保管

ミニトマトやスティック野菜のほかフルーツも商品にラインアップ。コンパクトサイズの手軽さもウケているとか

■従業員への試食の成果で、担当者や経営者を攻略する

 時代のニーズをつかんで着実にビジネスを広げるOFFICE DE YASAIだが、実はそのきっかけは健康経営ではない。当初は“農業の活性化”をキーワードに、無農薬の有機野菜を産直販売するビジネスモデルを目指していた。しかし、供給を安定化されるためには一定の需要を確保しなければならない。一般家庭向けの宅配サービスでは「Oisix(おいしっくす)」や「らでぃっしゅぼーや」などが先行しているため、後発組としては競争力に劣ると判断したのが、オフィスをターゲットとする現在の事業につながったという。

「当初は、会社帰りに途中で野菜を買う代わりに、オフィスで野菜を買ってもらえるようにと、頒布会のような販売モデルを想定していました。しかし、いろいろと意見を聞いてみると、自宅に持ち帰らずにオフィスで手軽に食べたいという声が多くて、『オフィスグリコ』のような設置販売型に狙いを定めたのです」

 このような意見を集められたことには、同社がインキュベーションオフィスを拠点にしていたことが大きい。さらに、川岸氏は前職のコンサルタント時代からつながりのある企業にアプローチし、商品の試食やトライアルを繰り返している。そこで分かったのが、まずは商品を食べてもらうことと、オフィスで気軽に野菜を食べられる環境を体感してもらうことの重要性だ。

 OFFICE DE YASAIでは導入前にオフィスを訪問して、無料の試食会を開催している。そこで従業員が気に入れば、事業者側の担当者は経営者への説得がしやすく、導入の動機付けにもなる。試食会後にはアンケートも行い、その結果を検討材料として事業者にフィードバックしているようだ。営業活動としては各種の展示会に出展しているが、そこでも可能な限り試食をしてもらうよう努めているという。

 このような取り組みが実を結び、OFFICE DE YASAIは本格的にサービスを開始したその月のうちに新聞やテレビに取り上げられ、企業からの問い合わせが一気に増えた。食という手軽に体験できるテーマで、その魅力を事業者や経営者に最大限伝える。その上でオフィスの負担は冷蔵庫を設置するだけという手軽さが、同サービスでは契約数の急増につながった。これは、他の食をテーマとする健康経営ビジネスでも、大いに参考になる手法といえるだろう。

PR効果を高める工夫として、イベントの際には必ず“トマトの被り物”をまとい、会場内で目立つように心がけているという川岸氏

《加藤宏之/HANJO HANJO編集部》

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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