~健康経営が生む新ビジネス:1~“チャットで健康相談”にニーズ

2017年2月16日
【記事のポイント】 ▼健康と病気の間のグレーゾーンを対象に“チャットで健康相談” ▼ストレスチェック代行サービスを切り口に健康経営をPR ▼ストレスチェック開始1年、結果の活用サポートにビジネスチャンス

■健康経営ビジネスで健康に不安を抱える従業員向けサービス

 従業員の健康と労働生産性における関係性が着目されたことで、企業の経営課題の1つとして健康経営の重要性が高まっている。その追い風となっているのが、2015年12月からスタートしたストレスチェック制度(改正労働安全衛生法)だ。これによって事業者は法的な側面からも、従業員の健康を考える必要が出てきた。

 近年ではこのようなニーズにこたえるべく、健康経営を促進するサービスが次々と登場している。法人向けヘルスケアプラットフォーム「Carely」もその一つだ。16年3月のサービス開始後、わずか3カ月でユーザー数が3500を突破。同年12月には利用企業数50社、ユーザー数1万アカウントに達し、その勢いは増すばかりだ。

社内に分散した健康情報を一元管理できるのがCarelyクラウド

 Carelyは“オンライン保健室”をうたっており、従業員の健康相談にチャットで24時間応じる「Carelyチャット」と、健康診断・ストレスチェックの結果など従業員1人ひとりの健康情報を一元管理する「Carelyクラウド」がサービスの中心となる。規模の大きい企業であれば保健室に産業医や保健師を置くこともできるだろうが、中小企業は月に1度程度のペースで産業医を招くのが一般的。そこにビジネスチャンスを見出した。

「保健室を設けるほどコストをかけなくても、ICTの活用によって低コストで従業員の健康管理に力を入れられる点が、中小企業の方々に喜ばれているようです。手軽に健康相談が可能なことから、最近では大企業の方からもお声掛けをいただいています」

 サービスを提供する株式会社iCARE代表取締役CEOの山田洋太氏はこのように話すが、そこでポイントとなるのが“チャット健康相談”の立ち位置だ。治療が必要な病気の人を”黒”、不必要な健康な人を”白”とした場合、健康経営ではその中間にあたる不健康な”グレー”ゾーンへのケアがニーズとして高まっているという。

「医師に相談するタイミングがなく、自分で調べても納得できる解決策が見当たらない。そんなときに有用なのがチャットでの相談だったわけです。診断や治療は行わないので医療行為にあたらず、それでいて医師やトレーナーといった専門家に相談できることから、利用者や導入企業から好評をいただいています」

一般内科と心療内科の医師で、産業医としても活躍してきた山田氏だからこそ、培ってきた経験と知識が、その人の置かれた環境や働き方にあったアドバイスにつながる

「夜なかなか寝られないのはどうすればよいか」「医者から尿にばい菌が入っていると言われたがどうすればよいか」「太り気味で痩せたいがどうすればよいか」など、相談内容は多岐にわたり、ときには医者並みの専門知識が求められるものある。1人1人のパーソナルな相談に応じることで、その人の置かれた環境や働き方にあったアドバイスがもらえるサービスとして、その評価は高い。

不眠や胃痛、めまい、健康診断などの検査結果、病院選びなど、健康に関して誰に聞けばよいかわからないことを気軽に質問できる点で人気のチャット相談

■顧客の心に刺さったストレスチェック代行サービス

 健康経営への意識は企業によって温度差があり、「従業員の健康が労働生産性の向上につながるのは本当か」、「健康経営にカネやヒトを回せるほど余裕がない」といった声もあるという。そこでCarely普及のカギを握ったのが、ストレスチェックや健康診断の業務代行サービスだ。

「健康診断やストレスチェックへの対応は、企業にとって負担となります。中規模で事業所の多い企業では、担当者が人事や労務といった業務も兼ねていて、とても手が回らないのが実情です。そこで、まずは業務代行サービスで担当者や部長クラスに直接切り込み、チャットやクラウドに話を広げるという進め方が効果的でした」

 代行サービスによる負担の軽減は、担当者にとってその効果が目に見えて分かりやすい。その上でチャットを使ってもらうことで、メリットを実感してもらうことが、従業員への周知に繋がるという。このため、チャットを使いなれたIT系企業を中心に、人事・労務の担当者や部長クラスを狙い撃ちする営業スタイルが功を奏しているようだ。

 導入企業のひとつ、プライベートジムを全国展開するRIZAP株式会社では、店舗が各地に点在することから管理が難しかったところ、Carelyの導入で健康診断の受診率が100%近くにまで向上。過去の健康診断結果も含め、全国各地の従業員のデータをクラウドで一元管理できるため、人事担当者の作業も効率化したという。

■ストレスチェック開始1年後に見えたビジネスチャンス

健康経営の普及によって、企業に従業員の健康状態を把握しようという動きが増えている

 同社が実施したアンケート調査によると、会社のストレス度を可視化できたものの、「その結果を活用しきれていない」、「活用の仕方がわからない」という企業側の実態が見えてきた。そこで同社が新たなニーズとして今注目しているのが、ストレスチェックの結果の活用サポートだ。

「例えば、相談数の多い症状に不眠症や睡眠不足がありますが、対策をアドバイスしても中々理解していただけません。そこで、考えているのが同じ悩みを抱える従業員を集めて行う、オフラインによる研修サービスです。これにより連帯意識が生まれ、『他の人と同じように自分も頑張らなければ』と相乗効果が期待されます」

 ストレスチェック制度の開始から約1年。オンライン保健室をサービスとして提供する中で、健康経営の次なるビジネスチャンスが見えてきた。そこに刺さるサービスを考えることが、次のビジネスへと発展していくことだろう。
《加藤宏之/HANJO HANJO編集部》

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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