~社内コミュニケーションの秘訣~社歌はジョニー・B・グッド!

2016年9月23日
時代を生き抜く強い中小企業とは何でしょう? 素晴らしい商品やサービスはもちろんですが、そこにいたる会社のなかでの社員同士のコミュニケーションが、本当は一番大切なのかもしれません。仲間と笑い合える中小企業が、今元気です。「小さい」「予算がない」「時間が足りない」といった悪条件を、彼らはどんな発想で乗り越えていったのか? 明るく楽しい会社やリーダーの活動から、解き明かしていきます。第二回は、中小企業の聖地、東京・墨田区の「島田商店」の嶋田淳社長です。第一回で登場したエサキヨシノリさんとの「社歌ライブ」を通して社内がどう変わっていったのか? その秘訣に迫ります。
◆第二回 嶋田淳さん(40歳)◆
株式会社島田商店代表取締役社長。大学卒業後、渡米NYへ。学位取得の最中に9.11.のテロに遭い緊急帰国。その後株式会社島田商店環境事業部の配送・製造係りを経て営業部へ。2008年取締役に就任。2010年社内改革を開始、新規事業を始め5年で社内売上2位に。2015年7月に代表取締役に就任。島田商店は1928年に嶋田さんの祖父が創業。現在は事業の9割が水・空気・土壌に関するケミカル溶液の製造・販売・配送である。

株式会社島田商店・社長、嶋田淳さん

■社員研修としての社歌ライブ。社長は一切の口出しをやめた

――どのような経緯で社歌ライブをすることになったのですか?

嶋田 知人の経営者を通してエサキヨシノリさんを紹介されたことがきっかけです。「企業の研修を目的に、社内でライブをさせてくれるところを探している人がいる」と聞きました。オプションで社歌も作ってもらえるとのことだったので、これ幸いとお願いしたんです。ほとんどの中小企業同様、うちには社歌がありませんでしたから。

 社歌はどんなことを伝える曲にしたいか、エサキさんに思いを伝えてオリジナル曲を作ってもらいました。校正は一切なしです(笑)。だから完成するまでどんな社歌になるのかまったくわからない。なかなかスリリングでした。

 社歌ライブ(「PASSION FACTORY LIVE TOKYO @島田商店」)の実施は半年前に社員に伝えたのですが、ほとんどの社員がドン引きしていました。だから一旦「忘れてくれ」と言って(笑)。1カ月前にライブの準備を始めるようお願いしました。

 準備を始めるまで、社長はいったい何を考えているのだ? 何をさせたいんだ? って、顔をしていましたが、今回のライブは研修の一環ですから準備活動はすべて社員に任せました。僕は一切口出ししないことにして、リーダーの選任だけをしたんです。どうなることかと思いましたが、結果的によくまとまって素晴らしいステージを作ってくれました。舞台も黒幕も全部工夫して手作りしてくれたんですよ。椅子もぴっしりきれいに並べて。大したものでしょう。

「情熱の学校」エサキヨシノリさん(左)と嶋田淳さん。インタビューは、島田商店プロデュースによる環境ショールーム「Melting Pot(メルティング ポット)」(墨田区)にて行った

社歌ライブ「PASSION FACTORY LIVE TOKYO @島田商店」でギターソロを弾く嶋田社長。GO JUNNY GO !

――しかし業績が堅調だった島田商店が、なぜ社歌ライブという名の研修を必要としたのでしょうか。

嶋田 ちょうど5年間かけて会社の改革を図っていた時期の最終期だったんです。確かに島田商店の業績は堅調だったけれど、その分社員が慢心して電話にちゃんと出なかったり、挨拶がおざなりになっていたりしていました。これは5年くらいで変えないと会社が潰れるぞと思ったんです。

 そのころ、すでに労働評価の改革や組織構築の改革は済んでいました。年功序列をやめて評価基準を明確化したり、新卒の社員をたくさん雇ったり。社長の私も公平に評価を受けようとリーダーに評価付けをされていたんですよ。

 でもあと少し、何かみんなをとりまとめてモチベーションを上げる仕組みが必要だった。そのタイミングで持ち上がったのが社歌ライブの話だったんです。

■「ジョニー・B・グッド」風のかっこいい社歌が社員の自信に

――実際に社歌ライブをしてみて社員にどんな影響がありましたか?

嶋田 これはもう映像を見てもらうとよくわかるんですけど、大盛り上がりでした。社歌は「ジョニー・B・グッド」みたいな曲を作ってくださいとお願いしたので本当にかっこいいものが上がってきた。何度も自分の名前が出てきて初めはとても照れましたが聞いているうちに、これは「俺の歌」だと思いました。

 うちの事業は、環境改善や環境保護に使用される薬品の販売が中心です。だからあまり会社を象徴するようなプロダクトがない。仕事に誇りを持ちにくく、理解してもらえない面があるんです。でもこうして歌になると、家族や知人に何をやっているのか知ってもらうことができる。YouTubeなどのメディアに出ることも自信につながったみたいです。いろいろなステークスホルダーが「あの映像見ましたよ」っていってくださるとことから会話が広がって、「島田商店ってこんな風に認知されているんだ」って思って。

 今回の社歌ライブは毎年恒例の社内バーベキューとは別でライブの一環として実施したんですよ。恒例のバーベキューにはお取引先。同様のイベントとして地域のみなさん、社員の家族などが集まってくれます。そういった方々が一緒に社歌を聞いてくれたのはとても良かったですね。

はじめドン引きしていた社員も大盛り上がり! 研修の一環としてのライブ、準備活動はすべて社員に一任。舞台も全部工夫して手作りし素晴らしいステージが

■社歌ライブを通し、外部の人と交流することで自分の会社が見えてくる

――社歌ライブをしたことは、何か実益に結びつきそうですか?

嶋田 社員が自主的に行動することの大変さと面白さに気づいたことは大きいと思います。少ない人数で働くということは、外からの情報が入ってきにくいということでもあります。だから井の中の蛙になりがち。自分の働き方を外から俯瞰してみることができないんです。でも、これからは中小企業だって世界に目を向けていかなくちゃいけない。そういうときに、より多くの人と交流をする機会を作ることはとても大切だと思いますね。

 最近、うちでは売上向上のための施策は社員にあらゆる業務をぶん投げているんです。僕はほとんどタッチせず、ひたすら新しい事業開発に取り組んでいます。きちんと幹部を作ってピラミッド状の組織を作っていけば、社長がいなくてもいい会社になるんですよ。そのためには、小さなことも情報共有しやすい「場」を作っておくことが必要でした。社歌ライブやバーベキューは格好の場になりましたね。
《大川祥子/ライター》

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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