~社内コミュニケーションの秘訣~工場ライブのエネルギー!

2016年9月20日
時代を生き抜く強い中小企業とは何でしょう? すばらしい商品やサービスはもちろんですが、そこにいたる会社のなかでの社員どうしのコミュニケーションが、本当はいちばん大切なのかもしれません。仲間と笑い合える中小企業が、今元気です。「小さい」「予算がない」「時間が足りない」といった悪条件を、彼らはどんな発想で乗り越えていったのか? 明るく楽しい会社やリーダーの活動から、解き明かしていきます。その第一回は、中小企業ブランディングのコンサルタント、エサキヨシノリさんです。彼が様々な会社で展開する「工場ライブ」が、どんなエネルギーを生み出すのか? その秘訣に迫ります。
◆第一回 エサキヨシノリさん(48歳)◆
「情熱の学校」代表。社員にとって会社が「オンリーワン」の存在に思えるようなコンサルティング、仕組みづくりを行なっている。ノウハウは「情熱の学校」主催ビジネスセミナーでも共有している。

「情熱の学校」代表、エサキヨシノリさん

■工場ライブで社長の情熱を伝える!

――エサキさんは中小企業ブランディングのコンサルティングをされていますが、会社(町工場)のなかで音楽ライブを行なう「工場ライブ」もブランディングコンサルティングの一環なんですか?

エサキ 僕は社外の人へ向けたものだけではなくて、社員に対するブランディングもしているんです。ロゴをつくったり、ユニフォームを考えたりしてね。社員を盛り上げる仕組みをいろいろと考えてきました。

 「情熱の学校」が主催する経営者向けのセミナーには、やる気も夢もあるたくさんの経営者がやってきます。彼らの多くはその情熱が社員に伝わらないという悩みを抱えていました。「こういうことがしたいんだ!」という考えが精神論で止まっているので、社員に伝わっていなかったんです。

 人を説得するのにいちばん有効なのは感情論をロジックに落とし込むこと。情熱を目にみえる形にできたら思いは伝わる。だから「この形にする」工程を僕は手伝っているんです。その手段のひとつが工場ライブというわけ。

 ちなみに、こういう話をすると「情熱がない経営者はそもそもどうしたらいいのか」という人がいますが、情熱がなくては中小企業の経営はできません。もしも経営者から情熱が感じられないのであれば、それは日々の忙しさに飲まれて見えなくなっているだけです。

「企業の情熱を、その企業らしく伝える事が大事」(エサキさん)。みんなで盛り上がることが「自分たちはイケている、やればできる!」という自信をもたらす

■乗り気でなかった社員の心を揺さぶり、化学反応が起きた

――「工場ライブ」はどのように始めたのですか?

エサキ もともと工場ライブを始めたのは、社内コミュニケーション促進のためじゃないんですよ。

 僕はね、日本を支えているのは主に40代のおっちゃん達だと思うんです。でも、世間では40代の男性に対する風当たりがめっぽう厳しい。会社でも家庭でも疎まれる存在になっています。だから僕はこの人たちを無償で応援したいと思った。それが工場ライブをしようと思った発端です。でもそのときはまだそこまで具体的なアイデアはなかったので、ライブハウスで中小企業のおっちゃんに向けたオリジナル曲を歌っていました。曲は育ててやった部下が辞める歌や、夢と出会ったときの歌、零細企業の社長を見守る妻の歌など。気がつけば190曲もできていました。
 徐々に評判が良くなってきたころ、僕のクライアント企業へのブランディングの一環として工場ライブをすることにしました。話を持ちかけたら社長さんは快諾してくれましたが、ほとんどの社員は否定的だったようで前日までライブをすることを全然本気にしていなかたようです。

 不安なまま当日を迎えましたが、蓋を開けてみたら、社員の方達が目に涙を浮かべて歌を聴いてくれました。職人の方なんか睨みつけるような表情で。それは真剣に聴いてくれているという意味なんですけど。つまり、感動してくれたんです。それで一旦心をつかんだら、その後はどんどん化学反応が起きて、社員がこれからやっていきたいことのプレゼンなんかもしてくれました。最後は社長も社員もいっしょになって歌うことで会場がいったいに。社員の家族を含むその場にいた全員が「ここはいい会社だな!」と思ったはずです。それが社内ライブの第一弾となりました。

情熱が化学反応を起こし新たな感動を生む「工場ライブ」。社内コミュニケーションにとって重要なのは「ハートをつかむこと」とエサキさんは言う

――工場ライブ実施後、その会社では何の変化があったのでしょうか。

エサキ ライブの後は社内のコミュニケーションが多くなったと聞きます。立派なステージをつくって、みんなで盛り上がることが「自分たちはイケている、やればできる!」という自信になったんです。

 ライブの準備はその会社の社員さんにお願いをしました。準備の段階からみんなで取り組むから心をひとつにできたんですよね。中小企業は大企業のように、適切なフローさえ踏めばみんなが動いてくれるということはありません。ハートをつかまなければ、職人さんたちを動かすことはできない。工場ライブの準備はそのきっかけになるんです。

 中小企業って、大企業以上にコミュニケーションが大事なんですよ。危険なものづくりをしているような現場では、コミュニケーションの不足が命の危険につながる。あいさつをきちんとすることがすごく大切なんです。

 それから、イノベーションを生もうと思ったら、社員が「こんなこと思いついちゃったんですけど」という一言が言える環境をつくらないとだめ。コミュニケーションの促進はいろんな面でプラスが出てくると思います。

――工場ライブ以外にも社内コミュニケーションを活性化させるイベントにはどんなものがあると思いますか?

 月1回社員みんなでご飯を食べるだけでもすごい効果があると思いますよ。みんなでサーブしてみんなで食べる。きちんとした食事をすることでパフォーマンスも上がるでしょう。

 僕が過去に携わったイベントでは、社交ダンス大会をしたこともあります。これはすごく盛り上がりました。

 ただ、表面的にはユニークでも左脳だけにしか訴えかけないイベントでは、イノベーションにつながる社内コミュニケーションの活性化は難しいでしょうね。何か右脳というか直感的な部分に訴えかけるような取り組みも併せて必要なんだと思います。

 日本は今2020年に向けていろいろな事業が盛り上がっているけれど、終わった瞬間にどうなるのかはまったく見えない状況です。すばらしい技術を持つ中小企業が生き残るためには儲け方を考えなくちゃいけない。そのためにも、イノベーションを起こす右脳型の仕組みとそれを通して企業の情熱を、その企業らしく伝える事がますます大事になってくると思いますよ。
《大川祥子/ライター》

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒト・モノ・カネ・情報」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

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