カリスマ社長の奥様、会ってみたいその魅力!/Vol.1嶋田奈生子さん(東京 島田商店)

2017年10月2日
カリスマと呼ばれる社長には、影に陽に支える奥様がいます。経営が苦しい時期の相談相手として、社員や取引先とのコミュニケーターとして、表舞台に登場することがなくても、いい会社にはいい社長夫人がいます。そんな素敵な奥様に、話を聞いてみたいと思いませんか? 笑いあり涙あり、思わず身を乗り出したくなるような意外なストーリーを紹介します。連載の第一回はケミカル溶剤の製造や販売を手がける島田商店(東京都墨田区)の代表取締役社長、嶋田淳さんの奥様、嶋田奈生子さんです。

嶋田奈生子さん。「経営者の妻って自分も責任を負わなきゃいけない立場になりますよね。その分やりがいがあります。一緒に歩める感じがするんです」

■出会いは母の営む飲食店

 奈生子さんが嶋田社長と結婚したのは3年前。出会いは奈生子さんの母親が経営する香川県の飲食店だったそうだ。

「彼は出張の度に母の店に来てくれていたみたいなんです。たまたま私が店の手伝いをしているときに彼が来店。以前から母に『面白い子がいるのよ。あの子は社長になるらしいんだけど、きっとうまくいくよ』と彼の噂を聞いていたのですが、その時は目も合わせてくれないし、話してもくれなくて『シャイな人だな』と思っていました」

 しかし奈生子さんのことが印象に残っていた嶋田さんは宿泊先にチェックイン後、店に電話。用件は「無事にホテルにつきました」という報告だけだったが、機転をきかせた奈生子さんのお母さんが電話を替わり連絡先を交換したそうだ。その後、遠距離恋愛を経てゴールイン。奈生子さんは生まれ育った香川の地を出て、東京での新婚生活が始まった。

■母を見て学んだ自分も責任を負わなくてはならないという覚悟

 嶋田さんは島田商店の三代目社長。結婚当時は社長就任前だったが、やがて跡を継ぐことは決まっていた。経営者の妻として生活することに不安はなかったのだろうか。

 「うちは父も兄も会社経営をしていたのであまり不安はありませんでした。むしろサラリーマン家庭の生活を知らないので、そっちの方が不安だったかもしれません」

 しかし、いよいよ嶋田さんが社長に就任する段にはさすがに緊張感があったようだ。

 「やっぱり実際に社長就任となると責任の重たさが違うじゃないですか。社員さんのご家族のことも考えなくちゃいけなくなる。『この人に何かあったときは、今の生活を捨てて自分も外に働きにいかなくては……』という覚悟はありました。今思えば、うちの母もそういう覚悟で父と一緒にいたのだと思います。社長夫人ってきくとキラキラしたイメージを抱かれることがあるかもしれないですが、実際には地味な役割ですよ。おかみさんのように経営者を支えるのが妻の役割だと思います」

 奈生子さんは経営者の父を支え続けた母の背中を見て、自然と経営者の妻としての覚悟を学んでいた。

 「経営者の妻って自分も責任を負わなきゃいけない立場になりますよね。その分やりがいがあります。一緒に歩める感じがするというか。うちの母は好き放題やっていた方ですが(笑)、父の話はよく聞いていたように思います」

奈生子さんと嶋田淳社長。「笑顔を心がけています。あとは陽気に振る舞うこと。家ではできるだけ彼を笑わせるようにしています」

■否定もアドバイスもせずに話を聞くことが役割

 経営者の夫を支えるとは、具体的にどのようなことをしているのだろうか。

 「なんでも話は聞くようにしています。心がけているのは否定とアドバイスをしないこと。彼はその日あったことを淡々と話すこともあれば、少し感情的になりながら外ではなかなか言えない本音を吐き出すこともあります。でも話をしながら考えを整理していっているのがわかるので、『そうだね、そんなことがあったんだ』って受けとめることが一つの役割ですね」

 事業に対するビジョンも、嶋田さんはまず奈生子さんに話すことで考えを整理しているそうだ。

 「基本的には彼がいいと思ったことは『全部やった方がいいよ』って背中を押そうと思っています。もともと彼は地に足をつけているタイプなので無茶なことは言わないですし。もし無茶なことを言ったら? それでも『やってみなよ』って言うと思いますね。彼のことを信用しているから。もしうまくいかなくても、この人ならどうにか生きる術をみつけてくるだろうなっていう。私、無人島に何か一つだけ持っていくとしたら嶋田淳にします(笑)。生き残るための道をみつける力があるんですよ」

 嶋田さんも認める聞き上手な妻、奈生子さん。しかし、ときには話を聞いているうちにアドバイスの一つでもしたくなることはないのだろうか。

 「私のアドバイスなんていらないでしょう。専門家でもなんでもないですから。彼自身のことは理解していますけど、仕事のことはほとんどわからないので偉そうなことは言えないんです。もし、何か言いたくなっても、話している彼の中には多分答えがあるので、喧嘩になるのもそれがぶれるのも嫌なのでアドバイスはしないですね」

 会食の多い嶋田さんが夜に自宅で食事を摂るのは週2日ほど。奈生子さんが妊娠するまでは晩酌をしながら話を聞くことが多かったそうだ。しかしどうしても一緒にいる時間は短くなってしまいがちなので、そのぶん朝食や昼食は一緒に摂り、会話の機会を設けている。ちなみに朝食はさっぱり、昼食はカロリー高めの食事を用意して力を出せるようにしているそうだ。

 また、奈生子さんは人脈作りにも一役買っている。お酒や人と会うことが好きだという奈生子さんは交流の場を作ることが得意。経営者同士のイベントに夫婦で招待されると顔を覚えられ、最近では嶋田さん抜きで会合に出かけることもあるのだという。

 「私が目立ちすぎることはあまりいいことではないと思っているので、しゃしゃりでないようにはしています。でも彼が人前に出ることが多いので自ずと出番が増えてしまいました」

もうすぐ二人には初めての子どもが生まれる。「社員のお子さんが自慢できる会社になればかっこいいなって思いますね」

■関わる人が幸せになる会社になることを願って

 奈生子さんから見て、嶋田さんはどのような経営者に映るのだろう。

「 “末っ子長男”なのでプライベートでは甘えん坊で打たれ弱い。妙にもじもじしちゃって初めて行くお店に自分から入れないことすらあります。私に『先に入った方がいいよ』なんて言うんですよ。仕事のときはどうしているのかと思うくらいなんですが、スイッチが入ると別人になります。バリバリガツガツと肉食系になるというか」

そんな嶋田さんの妻として心がけていることは何か。

「朝は絶対に喧嘩をしないようにしています。前の晩にどんなに口論をしても朝はリセットをする。やっぱり嫌な思いを抱えたまま会社に行くのはよくないと思うので。新婚時代は衝突が多く、仕事中の彼にLINEで文句を言い続けたことがありましたが『仕事で考えなきゃいけないことがあるのにこういうこといわれると集中できないから』って言われてそれからは改めました。彼はもっと大事な決断をしているときなんだと気づいたんです。極端な話ですけど、朝送り出して無事に帰ってくるかわからないかもしれないじゃないですか。それが最後の別れになることもありますから、離れるときは笑顔を心がけています。あとは陽気に振る舞うこと。家ではできるだけ彼を笑わせるようにしています」

 奈生子さんが気遣う対象は経営者の夫だけではない。現在嶋田夫婦は本社の近くに住んでいるが、奈生子さんはできるだけ会社の敷地には入らないようにしているという。

「社員さんに気を使わせるといけないので、あまり顔は出さないようにしています。会社の前で会ったらご挨拶したり、旅行へ行ったんだってねって話をしたりはしていますが。偉そうにしないことは本当に気をつかっています。でも理想はみなさんに『聞いてよ!』って社長の愚痴を言われる奥さんになることですね」

 いつかは社員と打ち解けられるよう、じっくり時間をかけているようだ。そんな常に経営者の妻としての意識が強い奈生子さん。将来会社がどのようになっていくといいと考えているのだろうか。

「社員のお子さんが自慢できる会社になればかっこいいなって思いますね。『うちの父ちゃん島田商店で働いてるんだぞ』って。仕事を通じて出会った人、関わった人みんなが笑顔になる、幸せになる会社になってほしいです」

 奈生子さんの明るい笑顔に支えられて、島田商店の社長・嶋田淳氏は今日も環境保全のための事業に取り組んでいる。
《大川祥子/ライター》

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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