事業承継税制が大幅に改正される

2018年1月11日
平成30年度税制改正では、事業承継税制が10年間の集中期間を設けて、大幅な緩和措置を取っています。この10年間で集中的に事業承継をして欲しい、ということです。今回は、平成30年改正の事業承継税制を取り上げます。
あけましておめでとうございます。

 平成30年、平成も残り1年ちょっととなってきました。元号も変わりますが、税制改正においても、代替わりが焦点となっています。私も昨年、事業承継の本を出し、これを私の1つのテーマとしています。実際、自分自身もそろそろ事業承継をしていく段階に入ってきた、というのもあります。

 そんな中、平成30年度税制改正では、事業承継税制が10年間の集中期間を設けて、大幅な緩和措置を取っています。この10年間で集中的に事業承継をして欲しい、ということです。私も今年は、さらにここに力を入れていきたいと考えています。そんなこともあり今回は、平成30年改正の事業承継税制を取り上げてみたいと思います。

 事業承継税制とは、先代経営者から株式を後継者に移す際の、贈与税や相続税を軽くして、事業承継をしやすくしよう、という税制です。今までの事業承継税制は、対象株式の2/3まで、相続税の納税猶予はその内の80%まで、となっていました。したがって、掛け合わせれば、実際には50%強しか納税猶予がされなかったのです。

 それが、改正後の事業承継税制では、全株式を納税猶予の対象とし、贈与税や相続税を全額納税猶予する、という内容になっています。すなわち、事業承継には税金をかけない、ということです。まさに、大盤振る舞いの税制ですね!

 また、今までは承継後5年間、雇用を8割維持しなければなりませんでした。承継後に従業員数が2割超減ってしまうと、猶予されていた税金を一気に払わなければならなかったのです。

 昨今の人材採用が難しい状況や、事業構造の変化で従業員数が減る可能性がある会社は、怖くて事業承継税制をとても採用できる状況ではありませんでした。それが改正後は、従業員数が8割を下回ったとしても、すぐに納税猶予を打ち切ることはせず、その理由などを記載して提出すれば、納税猶予を継続することができるようになるのです。これも事業承継税制を使うためには、非常に大きな改正ですね!

 その他にも、先代経営者以外からの株式の贈与も納税猶予の対象になったり、3人までの後継者を対象とすることができたり、使い勝手を良くする改正がされています。事業承継が課題の会社は、是非、新事業承継税制を検討してみる価値がありますね。

 ただし、新事業承継税制を使うためには、平成30年4月から5年間の間に、認定支援機関の指導・助言を受けて、事業承継計画を作成し、都道府県に提出しなければなりません。その上で、平成30年から10年以内に事業承継をする必要があります。新事業承継税制は、10年内の集中期間の事業承継に限定する、ということです(この認定支援機関には弊社も登録しておりますので、是非ご相談ください)。

 せっかくの優遇制度、是非活用していきましょう。

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執筆者: 北岡修一 - 
東京メトロポリタン税理士法人 統括代表。25歳で独立以来、税務会計業務を基本としつつも、経営診断、人事制度の構築支援、システム導入支援などコンサルティング業務にも携わってきた。現在は「会計理念経営」を掲げ、「会計を良くすると、会社が良くなる!」をモットーに、誠心誠意、中小企業を支援している。主な著作に『社長の「闘う財務」ノート ~ 社長の数字力が会社を鍛える』(プレジデント社)、『事業の引継ぎ方と資産の残し方・ポイント46』(共著/あさ出版)がある。

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