■ニュース深掘り!■事業継承に補助金、独立開業の新常識

2016年8月18日
人や物をネット上で結び付けるマッチングが最近、B to Bの領域でさまざまなビジネスを生み出している。その恩恵は既存の事業に限ったことではない。7月にリリースされた新サービス「店タクどっとコム」では、事業継承を望む飲食店と独立開業希望者をマッチング。店舗物件探しや改装、備品や什器の準備といった、独立開業のハードルを大きく下げている。
 他にも、独立開業にあたっては、人材募集や宣伝PRなどにもマッチングが活用できる。タブレットPOSやクラウド予約システムなど、ITによる支援も効果的だろう。資金面についても近年では中小企業やその開業を支援する補助金が増えた。

 独立開業の夢を実現するには、まさに状況が整いつつあるといえるだろう。では、実際に開業しようとしたときに、まずはどのような支援を利用すべきなのか? 「マイナビ独立」を展開するマイナビ 転職情報事業本部 FC・独立開業支援部 部長の竹内将人さんに話を伺った。

マイナビ 転職情報事業本部 FC・独立開業支援部 部長 竹内将人さん

■“店の引き継ぎ”という新たな独立開業スタイル

――“店の引き継ぎ”というスタイルにおける独立開業希望者向け支援サービスの中で、特に推奨できるものは何ですか?

マッチングサービスは現在さまざまなジャンルに進出しており、人材の確保から食材の仕入れまで、開業にともなう問題をサポートしてくれる

竹内 全国各地に開設されている「事業引継ぎ支援センター」を利用するのもひとつの手法だと思います。これは事業承継の公的相談窓口として経済産業省が全国47都道府県に設置している機関で、後継者不足に悩む高齢化の進む経営者と、起業家や経営資源を引き継ぐ意欲のある中小企業などとのマッチングを行うのですが、中には飲食業や小売業も登録されているようです。

 例えば、あるお弁当屋さんは年齢的に体力・気力面で限界を感じてお店をたたもうと商工会議所の職員に相談したところ、事業引継ぎ支援センターとの連携により、事業を引き継ぎたいという希望者が見つかって、今も店が残っているという話もあるそうです。そのお弁当屋さんにとっては、これまで一緒に頑張ってくれた従業員の雇用を守ることができますし、後継者にしてみれば、店舗物件や設備・什器をはじめ食材の仕入れ先から固定客までをそのまま引き継ぐことで、安定した経営状態で独立開業できます。昨今ではフランチャイズチェーンにおいても、直営店として軌道に乗った店を譲るスタイルも注目されており、リスクをより抑えた独立開業が可能だといえるでしょう。

――民間でも「店タクどっとコム」というサービスがスタートしたように、今後は“店の引き継ぎ”が独立開業の新たなスタイルとして注目されそうです。その他では独立スタイルとして、どのようなケースが一般的ですか?

竹内 難易度ではフランチャイズが最も手軽です。新店舗の開設からその後の運営に至るまで、商品の陳列、接客方法、人材募集、宣伝などさまざまな面でノウハウを持っています。

 ある意味ではその成功ノウハウを、加盟金を支払うことで購入できるのがフランチャイズというシステムですので、そのシステムやフランチャイズ本部の指導に従っていくことが成功への近道といえる訳です。やるべきことを1つ1つ地道にこなすタイプの人に向いているといえるでしょう。業種はコンビニエンスストアをはじめ、ラーメン店や居酒屋、たこ焼きなど、飲食や小売だけでもさまざまなチェーンが事業展開しています。

閉店した店舗の設備や内装がそのまま残された居抜き物件を、ネット上で検索できるサービスも登場している

――似たようなスタイルに代理店がありますが、これはどのような特徴があるのでしょうか?

竹内 フランチャイズと比較すると加盟金などの初期投資費用が少なく、開業できることが特徴です。営業や販売員としての経験があり、商品・サービスを売り込むためのノウハウを持ち、人脈作りに長けているような人に向いているといえるでしょう。頑張り次第でやったらやっただけの収入が得られるというのも特徴のひとつといえます。フランチャイズほど業種は多くありませんが、小売では携帯電話やウォーターサーバーなどで代理店制度を導入しています。

 ただ、最も自由度が高いのは、個人で一から開業するケースです。続いて、代理店というイメージでしょうか。フランチャイズは自由度が低く、事業引継ぎに関しては引き継ぐ側の条件がさまざまですので、一概にはいえません。より低いリスクでの独立開業を目指すのならば、フランチャイズなど、ある程度確立されたシステムを選んだほうが良いといえます。

■開業資金の負担を支援する公的サービス

――独立開業時の大きなハードルはやはり開業資金。資金面での支援サービスをお教えください。

喫茶店などの飲食店では事業を引き継ぐことで、改装などの手間が省けるほか、調理設備や什器の準備も最低限で済む

竹内 やはりスタンダードなのは日本政策金融公庫でしょう。「新規開業資金」や「女性、若者/シニア起業家資金」など、条件に応じて多彩な融資制度があり、原則第三者保証人は不要です。

 また今期の公募期間は既に終了していますが、中小企業庁の「創業・第二創業促進補助金」では、創業時の経費の一部を助成してもらえるほか、同じく中小企業庁の「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」では、例えば地産品を使った新メニューや商品など、革新性のある事業に対して経費の一部を助成しています。

――地方自治体にも支援サービスがありますか?

竹内 地方自治体でも独自の支援を行っています。例えば、東京都新宿区では区内での創業希望者に対して低利の融資を紹介する「創業支援融資制度~新宿区中小企業向け制度融資~」、空き店舗を活用する創業希望者に対して利子と保証料を全額補助する融資を紹介する制度「商店街空き店舗活用支援資金(空借)」を実施しています。このような、商店街の活性化に向けた制度は、群馬県桐生市でも「中心市街地空き店舗活用支援資金融資制度」という名称で実施されています。

 独立開業しようとする地域でどのような公的支援を受けられるか探してみる価値は大いにあるはずです。申請時期や内容に変動がある可能性がありますので、詳しくは各自治体に問い合わせてみてください。

ラーメン店や居酒屋など、業種によってはフランチャイズを利用して開業するケースもある。開店から運営に至るまでのノウハウを得られることが大きな利点となる

――こうした支援サービスを活用することはもちろん、予算を可能な限り低く抑える上でポイントとなるのは何ですか?

竹内 特に飲食は改装費のほかにも厨房機器や水回りの設備、食器などに費用がかかり、初期投資がかさむケースが珍しくありません。ですので、元が飲食店だった物件を借り、そのまま厨房機器や内装を利用する“居抜き物件”をはじめ、厨房機器や水回りの設備、食器を中古で用意するなど、どこでどのようにコストカットできるかを細かくチェックしたいところです。

 また、ランニングコストで大きな負担となるのは人件費ですので、セルフサービスにしてホールスタッフの人数を削減したり、各テーブルのコンロでお客さま自身に食材を焼いて調理してもらうスタイルにしたりして、店員の人数を最小限にするという工夫も有効です。

必要な知識をまとめた書籍も複数出版されているので、開業時にはぜひ参考にしたい

<Profile>
竹内将人(たけうち・まさと)さん
92年に株式会社毎日コミュニケーションズ(現マイナビ)入社。就職情報事業、人材紹介事業を経て、07年より転職情報事業に携わる。14年には転職フェアの企画・運営部署にて独立・開業の可能性を模索し、「マイナビFC&独立・開業EXPO」を初開催。同年10月にFC・独立開業支援部が発足し、15年8月に「マイナビ独立」を立ち上げる。
《加藤宏之/HANJO HANJO編集部》

●関連リンク

執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒトモノコトカネ」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

ニュース深堀り!新着記事

  • ■ニュース深堀り!■お土産やサニタリーに広がるハラル対応

    ハラル対応の動きが中央から地方へ、食品からさまざまな商品・サービスへと展開するなかで、今後新たな商機が増えると予想される。そこに中小企業にとってのチャンスはあるのか? あるとすればまず何から始めればいいのか? 「やまだ屋」や「廣榮堂」などのハラル認証取得のサポートを手がけ、認証団体の選定・手続きなどのコンサルティングを行なうハラル・ジャパン理事の佐久間朋宏さんに話を伺った。

    2016年10月20日

    ニュース深堀り!

  • ■ニュース深堀り!■高付加価値を実現、IoTの養蜂革命!

    IoT(モノのインターネット化)。パソコンやスマホといったデバイスのみならず、様々な製品をインターネットにつなげ、あらゆる場面で”便利さ”を増していく動きが加速している。夏の暑い日、外出先にいながらも、スマホからインターネット経由でエアコンのスイッチを入れておく――そんな生活を実現しているのもIoTの技術だ。この先進技術の導入による改革の動きが、一次産業の現場でも起きている。8月開催の「はちみつフェスタ2016」では、養蜂家のためのIoT&AIデバイス「Bee Sensing」が出展され、多くの来場者から注目を集めている。

    2016年10月17日

    ニュース深堀り!

  • ■ニュース深堀り!■町工場主役のインダストリアルツーリズム

    地方再生のひとつの方法論として「インダストリアルツーリズム」が注目を集めている。これは“産業観光”ともいわれるもので、たとえば小規模事業者も含まれる工場地帯などが、地域ぐるみで複数の工場を開放して見学会などを催す取り組みだ。

    2016年10月5日

    ニュース深堀り!

  • ■ニュース深堀り!■コンパクトシティー、地元企業に商機は?

    少子化や東京一極集中などの動きにともない、地方からの人口流出が止まらない。都市部でも商店街がシャッター通り化するなど、空洞化が大きな問題になっている。その対策として、政府が地方都市における中心市街地の活性化を目指して推進しているのが「コンパクトシティー」構想だ。16年9月には「コンパクトシティー形成支援チーム会議」で、子育て施設の設置、クラウドファンディングを活用した空き屋・空き店舗などの再生推進が議論されている。

    2016年9月21日

    ニュース深堀り!

  • ■ニュース深堀り!■集客に成功するSNSの正しい使い方

    企業PRにLINEやTwitter、FacebookなどのSNSが積極的に利用され始めている。16年8月16日にICT総研が発表した「2016年度 SNS利用動向に関する調査」でも、SNS利用者数は17年には7000万人を超える見通し。テレビや雑誌が苦境にある中で、企業によるプロモーションの場はリアルからウェブへと拡散し続けているが、その中においてもSNSがトレンドとして注目度を高めている。

    2016年9月2日

    ニュース深堀り!

  • ■ニュース深掘り!■中野から考える、都市部の駅前再開発

    東京・中野の駅前が大きく姿を変えようとしている。01年に移転した警察大学校の跡地には、13年から14年にかけて明治、帝京平成、早稲田の3大学のキャンパスや施設が次々と建ち、キリンホールディングスの本社も移転してきた。お昼時などには街に学生たちがあふれ、一時は食事どころを探して歩く姿も見られたほどだ。この先もさらに駅前を中心とした再開発が計画されており、16年8月25日には中野サンプラザを含む周辺地域の再整備事業に向けて、野村不動産を代表とする事業協力者グループが選定されたばかりだ。

    2016年9月1日

    ニュース深堀り!

  • ■ニュース深掘り!■東京再開発に見る中小のビジネス機運

    ブラジル・リオから五輪旗が持ち帰られ、20年の五輪開催がぐっとリアリティを帯びてきた東京。オリンピックに向けて現在、あちこちで大型の駅前開発が進んでいる。ここ最近でいうと、16年8月に「浜松町駅周辺地区土地区画整理事業」の手続きが完了したが、これによって世界貿易センタービルの建て替えを含む再開発が、いよいよ本格着工することになった。このような関連ニュースが、ほぼ毎月のように東京のどこかから発信されている。

    2016年8月30日

    ニュース深堀り!

  • ■ニュース深掘り!■DMOの課題は予算、その対応は?

    地域の観光事業を取りまとめるDMO。彼らの運用や設立に役立てるために、観光庁は観光協会などを対象にアンケート調査「国内外の観光地域づくり体制に関する調査業務の報告書」を実施。その結果を16年7月に発表した。そこで、最も大きな課題として挙げられていたのが「予算」の不足だ。

    2016年8月26日

    ニュース深堀り!