第2回は、宮崎県日南市のマーケティング専門官、田鹿倫基さんです。地方の行政に「儲ける」というこれまでになかった領域が生まれています。田鹿さんは「儲ける」の先鋒となるマーケティングを導入するために日南市が置いたポストで次々とプロジェクトを企画。地元の中小企業とともに活動するなかで市に「外貨」を呼び込むことに成功しています。そしてマーケティングのプロとしてたどり着いた先は「人事」と「生産性向上」の必要性でした。
地方の行政官と話がしたい! 日南市のマーケティング専門官
第2回は、宮崎県日南市のマーケティング専門官、田鹿倫基さんです。地方の行政に「儲ける」というこれまでになかった領域が生まれています。田鹿さんは「儲ける」の先鋒となるマーケティングを導入するために日南市が置いたポストで次々とプロジェクトを企画。地元の中小企業とともに活動するなかで市に「外貨」を呼び込むことに成功しています。そしてマーケティングのプロとしてたどり着いた先は「人事」と「生産性向上」の必要性でした。
■マーケティングに縦割り行政は似合わない
ーー地方自治体の肩書きで「マーケティング専門官」とはあまり聞き慣れません。
ーー行政が「儲ける」を正面から捉えるとは刺激的ですが、問題はなかったのですか?
ーー実際にはどんな仕事をされているのでしょうか?
ーージャンルが異なる業界を担当していますね。よく言われる非効率な「縦割り行政」とは異なります。
■「お前の代わりはいくらでもいる」という時代は終わった
ーー田鹿さんはもともとは民間出身(リクルートを経て在中国の広告代理店)です。着任当時は地元の中小企業・事業者の状況はどのように映りましたか?
かつて若者が多かった時代にはハローワークと縁故採用で事足りました。高校の場合は学校とのパイプで高卒社員を採用できた。終身雇用も普通だったので、地方の中小企業は「ひと」については困らなかったんです。しかしいま、宮崎県では高校卒業後に半数は県外に流出しています。地元の企業はこれまで、人事、採用を計画的に行ってきたわけではないため、ひとがいなくなって「さてどうしよう?」という状態だったんです。人事の設計ができる経営者が少ないし、そもそも人事まわりでの目標設定ができていない場合も多くあります。そこで私は、県内の人材系の会社を日南市に招き、企業との意見交換から始めることにしました。
ーー地方の中小企業の衰退の根底には「ひと」の問題があるということなんですね。
ーー昨年9月には、首都圏から日南市への人材還流の取り組みとして「オトナのインターンシップ」を実施しています。
ーーほかにも人材についてアイディアをもっていそうですね。
■企業の本音を聞きたければ、現場に足を運ぶこと
ーー外貨獲得の手段のひとつ、インバウンドについても話を聞かせてください。
ーーところで、中小企業や飲食店などのサービス事業者にとって、行政は身近な存在なんですか?
ーーマーケティング専門官の目から見て、ビジネスを考える上で日南市の行政のいい点は何だと思いますか?
田鹿倫基(たじかともき)さん
1984年生まれ。2009年宮崎大学卒業、同年リクルート入社。アドオプティマイゼーション推進室でネット新規事業開発に関わる。2011年アドウェイズ上海法人を経て、2013年に日南市マーケティング専門官に就任。自治体のPR活動、から企業誘致まで幅広い活動を担う。
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