銀行が変われば、地域も変わるーー持続可能な信金を目指して/横浜信金

2017年6月15日
【記事のポイント】 ▼「ヒト、モノ、カネ、情報」の仲介機能を持つことで、地域の銀行はいま、中小企業のビジネスサポートを手厚くしている ▼人材不足を補うためにウェブのダイレクトリクルーティングを活用すべきである ▼地域銀行が提案する金融の新しいビジネスモデルに注目
 中小企業や地域経済の要となるのが、土地に根ざした金融機関である。しかしいま、人口減少に伴う市場の縮小などが地域銀行のあり方を変えようとしている。そんななか、横浜信用金庫(以下、横浜信金)はインターネット人材サービスのビズリーチと業務連携して、横浜信金の取引先に、ビズリーチが提供する無料の採用ホームページを作るシステムを紹介するなどして、中小企業の人材確保を支援することになった。中小企業にとっての大きな問題である「IT」「採用」をともにカバーする今回の提携、単にコストや利便性といった眼前の問題解決を超えて、「地域にとっていま金融機関はどんな存在であるべきか?」についても包含する意味のあるプランではないだろうか。金融仲介機能を通して地域や企業の抱える課題を解決し、地元経済の持続的な成長に貢献することーー今回の提携にあたっての横浜信金の意図を、理事で業務推進部長の大地邦夫氏と業務推進部の田島達也氏の二人に聞いた。

横浜信用金庫 理事、業務推進部長の大地邦夫氏(左)と業務推進部の田島達也氏(右)。「地域にとって“持続可能な信用金庫”を目指したい」と語る

■「ヒト、モノ、カネ、情報」の情報仲介機能を持った金融機関へ

ーープレスリリースでは「横浜信用金庫がITによる中小企業の採用支援で地域産業活性化へ」というコピーが目をひきます。「IT」「採用」「地域産業活性化」ーーこれらは、いままさに中小企業が抱える問題や今後の目標と言えますね。

大地 当金庫の営業部隊は300人程います。日々お客様のところに通っているなかで、融資をはじめ色々な相談を受けます。私たちは資金繰りとか借り入れなどについては、もちろん専門分野なのですが、「ヒト」のことなどの具体策については、なかなか対応ができませんでした。

ーーテレビドラマなどでは、自転車で営業周りをする地域銀行の行員に、町工場の経営者が「誰かいい人紹介してよ」と依頼するような場面をよく見ますが・・・

大地 それはテレビの世界ですね。私たちが実際に聞かれるのは「どこかにいい技術者いない?」というような具体的で目的を持った人材探しです。しかしそう言われても私たちにはつてもツールもありませんでした。

田島 経営の四大資源は「ヒト、モノ、カネ、情報」と言われますよね。そのうち銀行は「カネ」について特化してきました。しかし、いまの時代、地域の金融機関はそれだけではやっていけなくなっています。当金庫はお客様の要求に応えるために、「カネ」以外のほかのことも仲介機能として持ちたいと考えました。そのなかのひとつ「ヒト」についてが、今回のビズリーチさんとの業務提携なんです。

大地 当金庫では、私たちを補完してくれるような様々な分野の会社、例えば不動産業などとも提携しています。ありとあらゆる業種、と言ってもいいかもしれません。経営者は色々な問題を抱えていますが、「ヒト」の問題は皆さん共通の問題と言ってもいい。だからいま、採用支援をクローズアップしました。

中小企業はひとの採用に対してあまりコストをかけられませんよね。宣伝広告に何百万、何千万円と出せるわけではありませんし、自社ホームページのリニューアルだって大変です。コストをかけずに全国からひとを採用できるような外部のサービスをうまく活用できるなら、人手不足、人材難の手助けになるんじゃないか。それが「横浜信用金庫×ビズリーチ」の始まりです。

ーー直接的には銀行の儲けにはつながらないのではないですか?

大地 企業が成長するにあたって一番の疎外要因は「ヒト」の問題だと思うんです。そこを解決すれば、うまく企業が成長していく可能性は高い。当然設備投資なども増えていき、やがては私たちに戻ってきますよね。これまでの低金利勝負の融資ではなくて、企業にいつも必要とされる金融機関とならなければいけない。だから今回のサービスでは料金は取らない予定です。

田島 最終的な目標は地域の活性化に置いています。そのためには企業自身もひとの採用をがんばらなければいけない。自社でのホームページづくりは人材確保の第一歩となるはずです。ダイレクトリクルーティングと呼ばれるような、企業の主体的、能動的な採用活動によって人材確保ができるようになってくれば、地域は今よりもっと強くなり、経済が上向いてくると思うんです。そこに私たち、地域の金融機関が「仲介者」として存在している、というイメージです。

今回の業務提携は中小企業の大きな問題である「IT」「採用」をともにカバーするもの。写真は、横浜信用金庫理事長の大前茂氏(左)と株式会社ビズリーチ代表取締役社長の南壮一郎氏(右)

■地方銀行は新しいビジネスモデルを作らなければ生き残れない

ーーいま、横浜の中小企業の採用関連はどんな状況ですか?

大地 首都圏特有の問題として、新卒は大企業に流れていってしまうことでしょうね。中小は新卒を採用したくてもマッチングができない状況ですね。

田島 「横浜都民」という言葉があるくらいですからね。

ーー今回の施策はそういった問題を解決できそうですか?

大地 ダイレクトリクルーティングではメールのやり取りも企業と求職者で直接行われます。そのプロセスでミスマッチングというようなことは比較的抑えられるのではないでしょうか。特定の地域に求人広告を出しても、やりたいこととやってもらいたいことが合わなかったりすることがよくあります。ダイレクトリクルーティングで事前に、お互いの情報をやりとりしておけば、ミスマッチングをさけるだけでなく、時間や労力、コストをかけないで済む方法になると思います。

田島 求職側と求人側のニーズとシーズのマッチングが見える化すること=可視化というのが大きなポイントですね。

横浜地域の中小企業の採用支援を行う新たなプランを発表した横浜信用金庫。ビズリーチとの連携により、横浜地域の企業に無料の採用ホームページを作るシステムを紹介する

ーー横浜信用金庫はあと数年で100周年を迎えます。

大地 日銀の金融緩和から始まって、いまどこの金融機関も楽じゃないですよね。いままでの銀行員がもしかして勘違いしていたのではないか、と思うんです。お客様が求めているのは金融だけだと思い込んでいたのではないか、と。でも実は販路拡大だったり、ビジネスマッチングだったりするかもしれない。そういった課題が解決され売上があがるなら、お客様にとって金融機関なんかどうでもいい存在と言われてもおかしくありません。それが金融競争によって低利であれば借りてもらえる事態が発生してしまい、どんどん過剰になっていったことで、どこの金融機関も収益が下がってしまった。これまでとは違うビジネスモデルを作っていかないと、“持続可能な信用金庫”として地域に貢献できないんじゃないでしょうか。

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執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

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