事業承継の2017年問題:3 50代のうちに考えておかないと間に合わない

2017年7月13日
【記事のポイント】 ▼つい後回しにしがちな事業承継問題が現実のものになってくる ▼事業承継は会社をよくしていくためのチャンスとしてとらえる ▼後継者育成、税金対策ともに10年スパンで考えるべき ▼頼れる専門家を見つけ、長期戦略で取り組むこと
【事業承継の2017年問題:3】
東京メトロポリタン税理士法人 ティーエムコンサルティング 統括代表
北岡修一さんに聞く

 2017年、団塊の世代が70歳を迎える。中小企業にとって、後継者問題はますます深刻になってくる。多くの中小企業経営者は、跡継ぎや次の社長を誰にするか、株は誰に譲ればいいのかといった、問題に後がない状態で向き合わなければならない。とくに深刻なのは、従業員や社員(株主)を含めても数名から20人前後の家族経営の会社だ。ある程度組織が大きければ、それなりの人材もいるだろうし、社長や後継者は事業の中で決まっていくが、中小企業はそんな企業ばかりではない。

 息子や娘と事業承継について話をしていない。以前に話し合ったが拒否され、それ以後は話していない。会社をたたむにしても従業員へ責任もある。そんな悩みを抱えている経営者のため、事業承継で考えるべきポイントを、HANJO HANJOの人気連載コラムの執筆者でもある北岡修一税理士(東京メトロポリタン税理士法人 ティーエムコンサルティング 統括代表)に話を聞いた。

東京メトロポリタン税理士法人 ティーエムコンサルティング 統括代表北岡修一氏

■自分の株をどうするか? だれに事業を承継するか?

 まず、事業承継を考えるときは、自分の株をどうするかという問題と、だれに事業を承継するかという問題に分けて考える必要がある(北岡氏)という。株の問題は、誰に経営を任せるかが決まれば必然的に決まる。家族に譲るのであれば相続税の問題となり、第三者であればいかに売却するかの問題だ。しかし、多くの経営者は、会社の身売りや事業の終了よりも息子・娘との交渉や説得が問題になっているのではないだろうか。

■つい敬遠しがちだが、事業承継はチャンスでもある

 では、なぜ後継者はすぐに見つからないのだろうか。

「最初から継ぐ意思を見せていないなら、交渉や説得には時間が必要です。独立して家をでていたり、会社に勤めていればなおさらです。家族経営の会社にとって事業承継は大きな問題ですが、まだ先のことだと考えがちで議論や決断を先延ばしにしがちです。加えて、中小企業の経営者は、売上や資金繰り、新製品の開発、顧客の開拓など日々考えなければならない問題も多く、なかなか事業承継問題に向き合う時間もありません」(北岡氏:以下同)

 家族とはいえ、人の人生の問題でもある。やはり簡単にはいかない問題として、時間をかける必要があるということだ。そして、ビジネスをとりまく状況も変わってきている。自分たちが起業もしくは引き継いだときの経営や考え方にこだわりすぎるのも、後継者問題を複雑にしている。経営方針にもいろいろあるので、一概には言えないが、すべてが思い通りにいかなくても、会社や従業員、顧客のためになることなら譲歩することも重要だ。

 交渉や話し合いについて、北岡氏は次のようなアドバイスもする。

「事業承継は、会社をよくしていくため、成長させるためのチャンスでもあります。新しい経営者に事業をゆだねるわけですが、引き受ける側にとっても魅力ある会社、価値のある会社でないと困ります。安定した経営状態、優秀な人材、良好な財務状態といった点に不安や疑念があると引継ぎもうまくいきません。そういった日々の経営の積み重ねが事業承継にとっても重要です。新しい経営者には、それを引き継いでもらったうえにさらに発展させてもらうという考え方です」

■子供に継がせるなら10年スパンで取り組め

 仮に息子や娘の理解がある程度得られたとして、いきなり役員や社長に据えるのもよくないと北岡氏はいう。

「家族といえど、いきなり外からひっぱってきて社長や役員にするのもトラブルの元です。やはり現場を経験させてください。同じ業界で修行を積んでいればいいかもしれませんが、そうでない場合、ポストだけ与えてもうまくいきません。後継者のキャリアにもよりますが、5年、10年と現場で仕事を覚え、従業員との信頼関係を築いておかないと、現場も後継者も苦労します」

 説得、合意から修行期間などを含めると事業承継は10年単位で考えなければならないということがわかる。つい先延ばしにしがちだが、腰を据えて取り組む必要がある。時間をかける理由は、もうひとつある。

「最終的に株式を譲渡して経営権を譲る場合、贈与税や相続税の問題があります。現在は、後継者問題への対策として事業承継税制という優遇措置があります。この事業承継税制を使えば、一定の要件を満たすことにより贈与税が全額猶予されます。また、事業承継税制を使わなくても、年間で110万円以下の株式の贈与は非課税、310万円以下までは最低税率での課税で済みます。株式の評価額によって複数年に分割して贈与すれば税金を抑えることができます。さらには相続時精算課税を使うことにより、2,500万円まで贈与税がかからずに株式を贈与することも可能です。承継後の経営をスムースにし、後継者の負担を軽減する意味でも、このような制度を検討し、活用すべきです」

北岡氏が多くの部分で執筆した『事業の引継ぎ方と資産の残し方・ポイント46』(著・中小企業を応援する士業の会ほか/あさ出版)

■頼れる専門家に早期に相談する

 以上のアドバイスをまとめると、事業承継については考え始めて、実際の行動を起こすのは早ければ早いほどよさそうだ。

「現在、中小企業の経営者がリタイヤする年齢の平均は67歳だと言われています。これを基準に考えると、後継者の育成期間、贈与税対策といった面から、少なくとも10年前、つまり57歳までにはなんらかのアクションを始める必要があります。60歳すぎてから、後継者探しを始めるようだと、お尻が決まった形で不本意な事業承継やリタイヤを向かえることになりかねません。事業承継は10年スパンで考えてほしいと思います。重要な問題だけに、時間を惜しんでいてはだめです。家族との話し合いや説得がうまくいかなかったり、感情的になってしまうようなら、第三者を介して息子や娘の意思、意向を聞いてもらう、こちらの意思を伝える、といった方法もあります」

 北岡氏も、実際にクライアントの事業承継の相談や交渉を手伝うことがあるという。長年、社長とも付き合いがあり、家族と接することもあるので、息子・娘さんに話をしたりするそうだ。ただし、実際の事業承継の手続きとなると、財務状況の分析、株式の適正な評価、必要な税務処理、株式の贈与や譲渡の処理など、相当な事務作業、調査作業が必要だという。「銀行にしろ、税理士にしろ、事業承継について相談するなら、関連知識や実績の有無をチェックして、頼れる専門家に依頼してほしい」(北岡氏)とのことだ。
《中尾真二/HANJO HANJO編集部》

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒト・モノ・カネ・情報」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

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