ユニーク社長のロングトーク/Casa 宮地正剛さん Vol.4(最終回)

2018年1月17日
激流のなかにある日本の中小企業。社長の仕事も様変わりを見せています。けれど社長は社長。重要なのはいかにリスクを負って、状況を変えていくかです。自社の意志でビジネスをおこす。アイディアの自由を守る。その姿勢が世の中を変えていきます。そんな社長の仕事に光を当てつつ、そのユニークな個性に迫ります! 第一回に登場願ったのは、家賃の保証や決済、賃貸保証などを中核事業として展開する「株式会社Casa」の宮地正剛さん。その最終回です。

株式会社Casa 代表取締役 宮地正剛さん。一般社団法人賃貸保証機構 代表理事も務める。1972年、香川県生まれ。不動産の情報公開や賃貸サービス向上のための仕組みづくりが必要だと考えて、ITで不動産と金融を便利にしていく、家賃債務保証事業のCasaを立ち上げる

■「ありがとう」は心を変える魔法の言葉

 Casaの玄関に「お客様の声」というものを2年ほど前から掲示しています。かつては「保証会社のイメージはよくわからない」「また督促のイメージがある」・・・そういったお客様が多かったかと思います。当社では「お客様本位」の気持ちを大切に、研修や日頃の業務でお客様の声を大事にしています。しかし以前は、支払い予定だけを確認し、お客様の事情把握や心情理解には十分な応対ができていませんでした。実際にお客様から「相談に乗ってくれない、話を聞いてもらえない」というクレームも少なくはありませんでした。

 そんな中で大きな変化のきっかけになったのがフードバンク(食品ロスを引き取り人々へ届ける活動をしている団体)でした。

 フードバンクの存在を知り、すぐに代表の方に会いたいと連絡を取りました。当社のお客様の中には食事も十分に取れず、生活に困っている方もいらっしゃいます。そういう方に食料品を届けたいと話を持ちかけたところ、快諾していただきました。

 フードバンクを始めてから間もなく、お客様から「ありがとう」の手紙をたくさんいただくようになりました。しかもすべてが手書きで、また心境が細かく書かれていて、胸がいっぱいになるものばかりでした。そして何より手紙をもらった社員が感激し、誇らしい表情になっていました。

 そして自然とお客様の支援に何が有効なのかを考えるようになりました。毎月、現場社員を中心としたCS向上委員会を立ち上げ、業務、専門知識習得の研修などを行うようになりました。まさに「ありがとう」は魔法の言葉だと思います。現在では全社員がフードバンクの食品の箱詰めや配送などをボランティア活動として毎週参加しています。
  • 不動産オーナー用のアプリによるサービス「大家カフェ」。入居者の募集や家賃管理、リフォームなどオーナーの抱えている課題を簡単に解決することができる
  • 入居者向けにさまざまなサービスや情報を提供するアプリ「入居者カフェ」。入居者の生活になじむ内容をこころがけている

■一緒に働くメンバーを選ぶ

 新入社員には「何のために働くのか?」という話をよくします。生活していくために働かなくてはならないのですが、それだけでは面白くありません。家族の扶養などは義務であり目的ではないのです。仕事に目的、意義を持てている人は周囲からの評判が良い人が多いです。それは目的を達成するための目標や手段が明確になっており、目標達成には周囲の協力が不可欠だと理解しているからです。常日頃から周囲や環境に気配りができているので、目標達成のチームビルドができています。

 私が仕事で一番大事にしている価値感は、自分がワクワクするかどうかです。自分が楽しめていないのに、人に感動を与えることは無理です。どこで働くか、何の仕事をするか、会社の規模や条件、待遇面が少しでも良い方がいいのでしょうが、どういう仲間と一緒に働くかでモチベーションも変わってきます。どこで働くか、何の仕事をするかより、「誰と働くか」というメンバーを大事にしています。どんなに差別化のビジネスモデルがあっても、人次第で成功も失敗もします。

■会社の理念を社員の誇りにつなげる

 社員が誇りを持って働くためには、会社の理念やビジョンが必要です。

 会社を設立した当初は、運転資金に余裕がなく、毎日資金繰りに追われていました。社員との対話の時間もほとんどなく、とにかく売上げを確保することに精一杯の毎日でした。取引先とのハードな交渉は私がすべて請け負い、時には条件面で激しい衝突もしました。今では笑い話ですが、毎日どこかの社長と交渉ではなく、喧嘩をしていました。

 そういうハードな営業のおかげで2年目からは何とか売上げを確保できるようになりました。ただ、振り返ると社員の多くが辞めていました。原因は、先々が見えない日常の多忙な日々で、ストレスや不安な毎日に耐えられなくなったのだと思います。そして一番の原因は、私が目の前のことに没頭するあまり、会社の未来をまったく示せていなかったということです。

 そこで3年目にして、遅まきながら企業理念を作りました。そして中期経営計画を作成しようとする訳ですが、これが最初まったくできなかった。市場や競合との差別化、自社の強みなどを書き起こしても、何かパッとしない。毎日、家の壁に何十枚ものスキーム図を貼っては剥がし試行錯誤をしている内に、壁一面が紙や付箋で埋め尽くされていました。当初、苦労したのは存在価値でした。幹部は業界最多の個人データを保有していることが最大の武器だと言っていましたが、私は、評価は相手が決めることだと思います。契約者はデータ量や保証内容を求めていないのです。

 お客様が求めているのは「良い部屋」であり、家主が求めているのは「良い契約者」です。この両者のマッチングビジネスだと思いました。そのマッチングを提供していく上で、入居者の「住」まわりのサービス提供ということで優待サービスなどの「入居者カフェ」の開発、また個人家主向けの「家主ダイレクト」のリリースをしました。

 振り返れば、7年前に業界の健全化のためには、行政との連携は必須と考え、社団法人を立ち上げ、行政に法整備や登録制の必要性というのを説いて回りました。昨年、国交省による登録制が始まったことには感慨深いものがありました。今年、設立10年目にして企業理念を一部見直しました。お客様の住環境と生活文化の発展に貢献することを使命とし、社員一人ひとりが使命感を持って挑戦していくを大事にしています。

 おかげさまで昨年の10月に東京証券取引所に上場しました。これからも社員がワクワクするような夢のある家(Casa)にしていきたいです。
●プロフィール
宮地正剛(みやじせいごう)
1972年、香川県生まれ。2008年、レントゴー保証株式会社(現株式会社Casa)設立。2009年、一般社団法人賃貸保証機構 代表理事就任。住宅業を営む実家の影響を受けて不動産業界に興味を持ち、大学卒業後、材木業が盛んなカナダへ留学。帰国後に不動産ビジネスに携わるようになる。「ユーザー目線で見ると不動産業は不透明感が多い」市場だと感じ、不動産の情報公開や賃貸サービス向上のための仕組みづくりが必要だと考えて、ITで不動産と金融を便利にしていく、家賃債務保証事業のCasaを立ち上げる。

●関連リンク

執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒト・モノ・カネ・情報」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

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