~社歌に出会う旅2~地元密着ビジネスにみる社歌の新活用法/地域や関係者との絆づくりに

2018年2月16日
東京都世田谷区三軒茶屋。駅から徒歩10分の間に5軒もの不動産会社が並ぶエリアに、株式会社Orioはある。競合ひしめく地元密着ビジネスにおいて、口コミによる来客が多いという同社に、社歌の新たな活用法を探る。

Orioは東京・三軒茶屋にある不動産会社。社歌には不動産業を紹介するフレーズも少なく、店内も撮影されていない。あくまで地元愛を歌うのみだ。不動産会社激戦区ならではの差別化戦略ともいえるだろう

■社歌動画を、地域や関係者との思い出コンテンツに

 お話しを伺ったのは、不動産会社Orioの店長でルームアドバイザーの廣瀬樹里子氏。同社は社歌をサイトやSNSなどで紹介し顧客とのコミュニケーションに活用している。しかし特にユニークなのは、バーチャルだけでなくリアルな関係作りにも活用している点だ。

 「弊社は仕事柄、いろいろな方とお会いします。なので社歌を作って動画にしようと決めた時に、あとあと"みんなで動画撮ったよね"と思い出になるものにしたかったんです」。実際、同社の社歌動画にはいろいろな人が登場する。その中には社員はもちろん、知人や関係者、三軒茶屋の住人も多い。去年の忘年会では社外の人も招待し、サプライズ上映したところ、いい曲だね、お芝居もいいね、そんな声があがったという。

 社歌は社内で作るのが一般的。しかし、昨今では対外的なプロモーションに活用する企業も増えている。顧客や関係者とのコミュニケーションを促すという観点でいえば、協創というスタイルには新しい可能性を感じる。

Orio社歌動画『家に帰ろう』

■あえて会社を打ち出さない、地域密着ならではの戦略

 社歌や動画を作るにあたり、もう一つ大切にしたことがあるという。それは『会社を打ち出しすぎない』ということ。社歌といえば会社や事業を歌ってナンボだが、そこにはOrio社ならではの狙いがあった。

 「弊社はあくまで地域密着の事業です。まずは、会社そのものに興味をもっていただけることを大切にしました。Orioの社名よりも、イメージを届けたい。地元を大切に考えているという世界観や雰囲気です。そこから興味をもってもらって来店いただければ」。

 確かに社歌には不動産業を紹介するフレーズも少なく、店内も撮影されていない。あくまで地元愛を歌うのみだ。自社よりも地域を大切にした社歌に、不動産会社激戦区ならではの差別化戦略が見て取れる。結果、顧客からは、アットホームでいいね、という反応があっただけでなく社員の間でも、より地域に根差して頑張ろう、動画の世界に近づこう、という意識が芽生えたという。狙いを明確にし振り切った内容が、社内外のブランディングに奏功している。

Orioが社歌動画で大切にしたのは『会社を打ち出しすぎない』ということ。不動産という地域密着型のビジネスにおいて、社名よりも「地元を大切にしている」というイメージを優先させた

■きっかけは「社員の団結」。制作はプロに依頼

 「そもそも社歌をつくろうと思ったきっかけは、やはり社員の団結を強めるためでした」。知り合いの会社から紹介され、作詞はshu&ワラビサコ両氏、作曲はシーラ氏というプロに依頼。以前に社内で30秒程度のジングルを作ろうと苦戦した経験から、あえて外部に発注したという。

 「要望は、ゆったりしていて、耳に残って、暑苦しくないもの。社内で流しても疲れないようにです。あとは、家っていいな、というざっくりな依頼しかしていません(笑)」。

 同時に、顧客にも配慮した。来店する人の多くは顧客同士の紹介で、職業や年齢も千差万別。誰もが聴きやすく、なおかつ会社の雰囲気を知ってもらえる歌を心がけたとのこと。仕上がりはアットホームで落ち着いた曲調になり、歌詞も一発OK。発注から納品まで実質的に約二カ月程度で、今では店内BGMとしても使っているという。社員と顧客、両方に向けた曲作りはそれだけ難易度も高まる。社内に適任者がいない場合は、プロに頼むのも賢い手段だといえよう。

社歌をつくろうと思ったきっかけは社員の団結を強めるため。以前に社内で30秒程度のジングルを作ろうと苦戦した経験から、あえてプロの作家に発注した

Orioでは社歌をサイトやSNSなどで紹介し、顧客とのコミュニケーションに活用している。社歌動画にはいろいろな人が登場し、リアルな社内外の人間関係作りにも活用されている

■苦戦した動画作り。その経験が次の活用につながる

 とはいえ、すべてがトントン拍子に進んだわけではない。動画の制作にあたり、当初は写真によるスライドショー形式を試みたという。しかし自分たちでは温かい表現にならず、クオリティが上がらなかった。結局、動画に路線変更。ストーリーをつけること、コストを抑えること、一般人の写り込みなどに腐心した。一部はプロの手を借りつつも二カ月を要したという。

 「でも、自分でもできるようになりたいと思うようになりまして。今後は社歌を店頭のデジタルサイネージでも流したいと思っているんです。すべて流すと長いので、少し短くできるように編集ソフトを使ってチャレンジしています。意外と良いものができそうです」。
 一度完成したものを、自分たちの創意工夫でアレンジできるのも社歌の便利なところ。PCとソフトがあれば、簡単に二次利用・三次利用することもアイデア次第で可能になる。

 過程で社内にコミュニケーションが生まれるのは、社歌の重要な効能。実際、そのような狙いで社歌を作る会社も多い。しかし社外まで巻き込んで作ったOrio社は、地元密着ビジネスにおける新しい可能性を示している。

 インスタ映えマーケティングが象徴するように、今やバーチャルだけでなく、リアルの場での体験が企業のブランディングに効果を発揮する時代。社歌づくりをイベントにする、完成曲を店頭でも活用する。そんな"絆づくり"に活かすという発想は、コミュニティが重要になる中小企業にとって大きなヒントになりそうだ。

Orio店長でルームアドバイザーの廣瀬樹里子氏。「仕事柄、いろいろな方とお会いするので、社歌を作って動画にしようと決めた時に、”みんなで動画撮ったよね”と思い出になるものにしたかったんです」

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒト・モノ・カネ・情報」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

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