「日本経営品質賞」中小企業部門受賞社に聞く1(前編)~万協製薬~

2018年4月17日
グローバリゼーションの進展や飛躍的な情報技術の発達、劇的な人口動態の変化などの要因により、企業をとりまく経営環境は著しく高度複雑化し、不透明性を増している。その様な状況下において、変化に柔軟に対応し、自己変革を通して新しい価値を創出することにより、持続的な競争優位性を築きあげていくことが企業経営にいま、強く求められている。そんな「卓越した経営」のモデルケースとなるのが、日本経営品質賞の受賞企業だ。
 2018年2月23日、東京のイイノホール&カンファレンスセンターにて、2017年度受賞組織への表彰が行われた。2017年度は3社が受賞。その内、中小企業部門での受賞組織のひとつが、三重県で医薬品の分野で顧客先ブランドの外用薬の開発・製造・輸出・販売を主な事業ドメインとする万協製薬株式会社だ。代表取締役の松浦信男氏に話を聞く。

★「日本経営品質賞」中小企業部門受賞社に聞く1(前編)〜万協製薬〜

2017年度の「日本経営品質賞」で中小企業部門受賞した万協製薬株式会社。2009年に続き今回が2度目の日本経営品質賞の受賞となる。写真は2月23日に行われた授賞式で。万協製薬代表取締役の松浦信男氏を囲んで(中央の表彰盾の人物)

■「変革」を生み出す原動力とは

万協製薬は、2009年に続き今回が2度目の日本経営品質賞の受賞となる。驚くべきはその受賞回数なのではなく、同社がその頃と現在では全く別の会社だといっても憚られないほどにドラスティックな変貌を遂げていることであり、そして、そのことが今回の受賞に至った大きな理由の一つとなっている。

今回の受賞の表彰理由の筆頭に挙げられているのが、「スキンケアから医薬への事業変革に成功」というポイントだ。2009年にはスキンケア分野における高い品質の化粧品の開発・製造力を強みとしていた同社だが、その後、市場のグローバル化や国内薬事法厳格化など中小企業にとって逆風が吹く中で、一般医薬品、医療用医薬品を主な事業ドメインとすることに大きく方向転換をはかった。その“賭け”は見事に奏功し、2016年度には売上高も社員数も2009年度に比してほぼ2倍に拡大するまでに至っている。

事業環境が大きく変化していく中で、自己変革を果たすことにより、リスクをチャンスへと変えていく。その手続きと軌跡は、松浦信男氏が敬愛するピーター・ドラッカーの「これからの乱世で組織が生き残って成功するには、自らを変革の促進者(エージェント)に変えていかねばならない」(『ネクスト・ソサエティ』)という教えを正しく体言しているかのようである。変革の原動力について、松浦氏は「飽きること」だと語ってくれた。

受賞理由のひとうが「スキンケアから医薬への事業変革に成功」という点だ。市場のグローバル化や国内薬事法厳格化など中小企業にとって逆風が吹く中で、一般医薬品、医療用医薬品を主な事業ドメインとすることに大きく方向転換。2016年度には売上高も社員数も2009年度に比してほぼ2倍に拡大した

「日本では飽きることが悪いことのように語られがちですが、変化やイノベーションは全てそこから起こっている。会社が活性化していくための前提となる変化の動機は、飽きることから始まっています。私生活でも最近になってスノーボードを始めたんですよ。とにかく新しい挑戦を続けることで、毎日を何とか生きているという感じです」

変化の激しい時代においては、成功の手法はすぐに陳腐化しそこへの拘泥は安定どころか停滞の要因、最大のリスクにもなりうる。

「仮面ライダーシリーズに“再生怪人”って出てくるじゃないですか? 最初に登場した時はとても強くて主人公を苦しめるんですけど、再生されて2度目に出てきた時は弱いんです。一度やった仕事は“再生怪人”と同じなんですよ。もっと凄いことをやりたくなる」

各種サブカルチャーにも造詣が深く、数十年かけてコレクションしてきた約30,000体ものフィギュアを展示する「万協フィギュア博物館」の館長も務める松浦氏ならではのユニークな発言だ。“飽きること”を原動力に、変革を続ける万協製薬。自社の事業を変革していくのみならず、同社は2012年からホールディングスカンパニー制へ移行し、M&Aにより新しいビジネス領域にも精力的に挑戦している。

日本経営品質賞の審査基準である「卓越した経営」。それを実現するために必要なのは、「顧客本位」「独自能力」「社会調和」「社員重視」という4つの要素。受賞に際して「中小企業にとっての希望」とまでの賛辞を贈られた万協製薬は、見事なまでにそれらの要素を高い水準クリアしている

■「卓越した経営」に必要なものとは?

ここで改めて、日本経営品質賞について少しブレイクダウンしておきたい。冒頭にて、同賞は「卓越した経営」を実践し、モデルケースとなる企業に贈られるものだと述べた。ではそれを実現するためには何が必要なのだろうか? そこで挙げられるのが、「顧客本位」「独自能力」「社会調和」「社員重視」という4つの要素であるのだが、受賞に際して「中小企業にとっての希望」とまでの賛辞を贈られた万協製薬は、見事なまでにそれらの要素を高い水準クリアしている。

 まず「顧客本位」と「独自能力」。万協製薬は顧客先ブランドの外用薬の共同開発から製造に至るまでを一貫して手がけており、2016年には年間62品目もの新製品を販売可能にしている。

 この数値は、同カテゴリーの競合他社が年間数品目から10品目程度に留まっていることを考えると驚くべきもので、その圧倒的な顧客対応力において、重要顧客から「パートナー評価1位」との誉れを獲得している。それは、大手製薬会社からしてみれば市場規模が小さい、言わばニッチ領域にある外用薬というカテゴリーに特化し、あらゆる工程における絶えざる改良・改善のプロセスを繰り返しながら積み重ねてきた同社ならではの独自のノウハウと能力があってのものである。

 また、「開発メーカーだったという遺伝子を持っているから、自分たちが考えたものを世の中に問いたい」という根底にある熱い想いも、同社を単なる“下請け”ではなく、共同開発を行う“パートナー”という存在たらしめていることに寄与しているのだと、松浦氏の言葉の端々から強く感ることができた。【後編に続く】

万協製薬の休憩スペースには漫画や卓球台があり、ボクシングができるリングまである。各種サブカルチャーにも造詣が深く、数十年かけてコレクションしてきた約30,000体ものフィギュアを展示する「万協フィギュア博物館」の館長も務める松浦氏

(インタビュー/加藤陽之 構成/藤川貴弘)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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