次に来るのはバスのシェアリング、目指すは旅行業の民主化

連載「成功する新業態」/ワンダートランスポートテクノロジーズ

2018年5月17日
今、ビジネスを大きく成功させるために必要なのは、パイを奪い合うことではなく、新たなパイを生み出す「新業態」の開発です。では、どうすれば成功する新業態を生み出すことができるのでしょうか? 急速に広がるシェアリングビジネスに登場したのが、貸切バスの手配を手がける「ワンダートランスポートテクノロジーズ株式会社」です。代表取締役の西木戸秀和氏に話を聞きます。

イベントだけでなく、乗り物に乗る時間や行為=「移動」も利用者にとって重要な価値だ。その移動をもっと快適に、もっとラグジュアリーな空間で提供するため、交通に特化したサービス『busket』が生まれた

目指すのは“旅行業の民主化“

 ワンダートランスポートテクノロジーズ株式会社は、誰でも簡単に貸切バスを手配しツアーの作成をすることができる貸切バスオンデマンドサービス『busket(バスケット)』を提供する企業だ。

 例えば個人で音楽フェスやスポーツの応援、ボランティアのためのバスツアーなどを企画したとしよう。バスを借り、参加者を集め、乗客から料金を回収……という流れが一般的のように思えるが、実は旅行業の登録を受けていない者が乗客から直接料金を回収してしまうと旅行業法違反となってしまう。

 『busket』はこの個人や小規模団体のバスツアー企画をサポートするオンラインサービスだ。ツアーの企画者が利用したいバスの種類や利用時間・距離などをオンライン上で入力すると、バスの検索結果と見積金額を最短1分で返してくれ、また座席の販売も旅行業者であるbusket側で行えるという仕組みになっている。なお『busket』は福岡市実証実験フルサポート事業(新しい技術やサービス、規制緩和が必要な事業を募集して実証実験を行い、全国展開することを福岡市がサポートする事業)に採択されており、現在はさまざまな実証実験を繰り返しつつサービスの精度を高めている。

 『busket』についてワンダートランスポートテクノロジーズ代表取締役の西木戸秀和氏は「アイデアを持っている人がツアーを販売しやすくなるように、旅行業の民主化のようなところを目的としています。利用者にとっては早くて確実に安全なバスが見つかり、さらに募集型のツアーとして売ることができる。バス会社さんにとっては空き在庫が埋まる、あるいはこれまでになかった営業チャネルが生まれる、“三方良し“の構造にしたいと思っています」

『busket』は個人や小規模団体のバスツアー企画をサポートするオンラインサービス。ツアー企画者が利用したいバスの種類や利用時間・距離などをオンライン上で入力すると、バスの検索結果と見積金額を最短1分で返してくれ、また座席の販売も旅行業者であるbusket側で行える

遊びに行くときの移動時間にも価値が眠っている

 そもそも『busket』というサービスを始めたきっかけは、同社が運営するチケットサイト『BANANA(バナナ)』にあるという。『BANANA』とは大学時代から音楽関係の活動をしていた西木戸氏が、インターネットとエンタメの交差点で事業を行うことを決意し、「初めてでも一人で行きたい場所に行くことができる案内メディア」としてスタートしたサービスだ。

 「例えば何かのイベントに遊びに行くとします。イベント自体を体験することも一つの価値ですが、それだけではなく誰と一緒に出かけて、途中でどこに寄って、どんな風に過ごしたかというのも大切な思い出になりますよね。『BANANA』はイベントのチケットを販売しているのですが、実はイベントそのものだけでなく移動というのも利用者にとって重要な価値であるということに気づきました。乗り物に乗る時間や行為も含めて“遊び”なんだということです。そこでこの移動をもっと快適に、もっとラグジュアリーな空間で提供できればということで、交通に特化したサービス『busket』を立ち上げました」

 「モノ消費からコト消費」「着地型観光」ということがよく言われているが、そのための交通インフラが整っていない場合も多い。『busket』を活用することで移動時間も“コト消費”とすることができれば利用者の満足度につながる可能性も高くなると言えるだろう。

「『busket』は旅行業の民主化のようなところを目指しています。利用者は早くて確実に安全なバスを見つけることができ、さらに募集型のツアーとして売ることができる。バス会社は空き在庫が埋まる、あるいはこれまでになかった営業チャネルが生まれる、“三方良し“の構造にしたい」と語る、ワンダートランスポートテクノロジーズ代表取締役 西木戸秀和氏

貸切バスをもっと日常の乗り物にしたい

 西木戸氏の掲げるミッションや今後の目標について話を聞いてみた。

 「今後地球の人口は95億人にもなるという説がありますが、地球規模で大規模な設備投資が続く時代から既存のリソースの有効活用のフェーズであり、環境との共存がよりテーマになると考えています。地球環境を考慮すると新たに線路を敷くといった設備投資をすることはしないほうが良いと考えています。そこで既存の道路と乗り物を有効活用する、さらに乗り物の配車とマッチングを整備して移動の苦痛のない世界を作るというのがワンダートランスポートテクノロジーズのミッションです。そのためには4月から『busket』サービスを始めること、そして年内6月までに月間500台のバスが稼働している状態を作ることを目標にしています。これだけのオーダーがあるということは精度が高くなっているということになりますし、また500台のバスが動かせるということは各地域のバス会社さんとのネットワークもそれなりに作られている状態ですので、まずはここを目標としています」

 最後に長期的なビジョンについて西木戸氏は「まずは東京・大阪・福岡からスタートしているのですが、早い段階で地方都市に導入して、もっと日常の乗り物としての展開を考えています。その後はバスだけでなく船や飛行機といったいろいろな移動手段を民主化できればと。今後東アジアはEUのように人々が行き来するようになると思っていますので、その中でテクノロジーをローカライズして展開していくということもやっていきたいですし、ゆくゆくは新たな時代にあった乗り物の開発にも携わりたいという思いもあります。自分たちで乗り物自体を所有して、文字通りのトランスポート企業というところを目指したいと思っています」と語った。

 個人がバスツアーを企画することができるサービス『busket』。地域の観光課や旅館などが小さなツアーを企画して地域振興のきっかけとしたり、釣りやゴルフ、スポーツ観戦、ハイキングなどの企画を個人が立てたり、また2020年の東京オリンピックに向けてインバウンドの送迎などに使ったりと、『busket』を活用することでさまざまな可能性が生まれると言えそうだ。
(川口裕樹/HANJO HANJO 編集部)
執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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