公共工事激減でも建設業が元気なまち(岩手県紫波町)

2017年3月13日
地方の衰退はかつてないほど深刻さを増しています。そんな中、持続可能な地域経営のあり方として「公民連携」の手法を取り入れ、町の負担を最小限にする「稼ぐインフラ」投資により税収を増加、公共事業に依存しない地元建設業の育成につなげた町があります。
 かつて地域経済を潤してきた公共事業は激減。景気悪化や人口減少、高齢化等により自治体財政も悪化する中、地方の衰退はかつてないほど深刻さを増しています。そんな中、持続可能な地域経営のあり方として新たな公共、「公民連携」の手法を取り入れ、町の負担を最小限にする「稼ぐインフラ」投資により税収を増加、公共事業に依存しない地元建設業の育成につなげた町があります。
 紫波町(しわちょう)は岩手県中部、盛岡市と花巻市の中間に位置にする農業を基幹産業とする人口3万人余りの小さな町です。近年はJR紫波中央駅前の都市整備事業「オガールプロジェクト」が補助金に頼らないまちづくりと話題を呼び、税収は2005年度の27.7億円から2015年度は30.7億円へ約3億円増加。住民や民間企業が積極的に公共に参加するその手法に注目が集まっています。

 1998年、町は役場庁舎などの公共施設の整備を目的として駅前に10.7hの土地を取得しましたが、長い間開発されず塩漬けとなっていました。オガールプロジェクトは公民連携という新たな手法を用い、その土地の開発を図る都市整備事業。駅前に広がるシンボル広場の両側に役場新庁舎のほか、図書館や子育て応援センター、産直などの施設で構成される官民複合施設「オガールプラザ」など6つの事業棟を配置。その外側には町が長年取り組んできた循環型のまちづくりの理念を反映したエコタウンを形成する分譲地を整備し、県のフットボールセンターを誘致。整備された施設には民間投資による日本初のバレーボール専用体育館やホテルが入る民間複合施設もあります。

 また、統一された美しい町並みを実現するため、開発区域にデザインガイドラインを策定。開発では見た目だけでなくライフスタイルデザインを重視。何が欲しいかではなく、ここで何がしたいかという視点で、自然豊かな農村の田園風景と都市が共生するまちという開発コンセプトを導き出し、多くの木質材料を活用するなど個性ある街の魅力を生み出しブランド化に成功。これにより年間90万人を超える交流人口がここに生まれ、分譲地には若い世代も移り住んでいます。

 こうした公民連携のまちづくり手法は地元工務店にも変化をもたらしています。公民連携の事業ではPFIなど多様な発注方式や循環型の町づくりに合致した工法へ対応することで受注機会の拡大が見込まれることから、民間事業者のレベルアップが図られ、産業の育成にもつながっているのです。

官民複合施設「オガールプラザ」の中にある図書館

2014年にオープンした日本初の民間バレーボール専用体育館「オガールベース」も多数地元木材が使用されている

 2012年にPPP(公的資産活用型)手法で整備されたオガールプラザは、町と民間事業者、銀行等が公民連携体制を構築。関係者間で施設の事業性を精査した上、6年間で累積黒字となる事業計画を作成。金融機関からの融資を取り付け、特別目的会社が施設を建設、公的施設部分を町に売却する手法で建設費用を削減。

 また、2015年PFI手法(BTO方式)で整備された役場新庁舎は、国内最大級の木造3階建て。構造躯体に100%町産木材を活用し、伐採から製材加工をほぼ県内業者でまかなうことで運送コストやCO2排出量を削減。事業は地元企業を主体として設立された特別目的会社(SPC)が請負いました。

 ベースには町が2001年条例を制定、推進した循環型まちづくりがあります。ここから町発注の公共工事は町産の森林資源を活用した木造建築となり、地元建設業はそこで必要とされる工法に対応、技術を磨いてきました。

2015年、PFI手法(BTO方式)で整備された国内最大級の木造3階建て新庁舎。構造躯体へは100%町産木材を活用で輸送コストも削減

 オガールプロジェクトで分譲される土地に建設される住宅は、これまで町が取り組んできた循環型まちづくりを集大成したエコハウス。事業では良好な景観と住環境を備えた魅力ある街並みを形成するための景観協定や、町産木材の使用や自然エネルギー等を使用したエネルギー消費やCO2の削減につながる紫波の風土に根差した「紫波型エコハウス基準」に沿った住宅の建設が求められます。現在、紫波型エコハウス建設協同組合には基準を満たす建設工法を習得した13社の建築施工事業者と5社の協力事業者が参加。新たなことに積極的に取り組む意欲的な事業者も増えています。

 オガールプロジェクトは今年4月開所予定の「オガール保育園」の整備により完成を見ます。紫波町はすでに次の重点事業、駅東側の日詰地区で始まった空き家や空き店舗などの遊休不動産を活用した「リノベーションまちづくり」に向いています。この事業でもオガールプロジェクト同様、補助金はできるだけ使わず、民間主導により地域でお金が回る仕組みを目指しています。

 また事業方式はあくまで民間がプロジェクトを興し、行政が支援する民間主導の公民連携が基本。今あるものを活かし、新しい使い方をして街を変えるまちづくり手法で、新たなまちの価値創造を行うことをコンセプトにしています。

 新たな公共が生む価値と可能性がここでも発揮されるか注目されます。

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執筆者: 水津陽子 - 地域活性化・まちづくりコンサルタント
合同会社フォーティR&C代表、地域活性化・まちづくりコンサルタント。地域資源活かした地域ブランドづくりや観光振興など、地域活性化・まちづくりに関する講演、企画コンサルティング、執筆を行う。2014年地方創生法に関連し衆議院経済産業委員会に参考人出席。著書に「日本人だけが知らないニッポンの観光地」(日経BP社)などがある。

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