「日本経営品質賞」中小企業部門受賞社に聞く2(前編)〜トップ保険サービス〜

2018年5月1日
顧客本位の視点から、部分最適ではなく全体最適の経営を行い、自己変革を通して価値を創出し続けていく。そんな「卓越した経営」のモデルケースとなる企業を表彰するのが「日本経営品質賞」です。中小企業部門では2社が受賞しましたが、そのうちのひとつが福岡県北九州市で保険代理業を事業ドメインとする「トップ保険サービス株式会社」です。代表取締役社長の野嶋康敬氏に話を聞きます。

顧客本位の視点で事業を見直す

 トップ保険サービスは「弱っている人々の楯になる」ことを企業コンセプトとして、保険会社の代理として「保険を売る」ことに重きを置くのではなく、「顧客対応」こそを“本業”として位置付け、徹底して顧客に寄り添ったサービスを展開している。例えば、事故対応。同社では顧客が自動車事故や火災、PL(製造物責任)事故などトラブルに遭遇した際に、コールセンターに委託することなく24時間年中無休体制で電話を受け付け、「現場急行」「現場確認」「現場での助言」を基本とする対応を行なっている。代表取締役社長の野嶋康敬氏は、それを「独自の顧客価値とは思っていなくて、普通に本業そのままのこと」だと語るが、同社が提供する価値は「保険を売る」という保険代理業一般の“本業”を超えた領域にまでおよんでいる。

「卓越した経営」のモデルケースとなる企業を表彰する「日本経営品質賞」。中小企業部門で受賞した「トップ保険サービス株式会社」代表取締役社長の野嶋康敬氏

 「我々の仕事には事故対応もありますが、その前にあるリスク・マネジメントもあります。お客様のリスクがどこにあるのかを一緒に考えて、それを減らしたり回避したりする手段についてアドバイスしていきながら、どうしても最終的に残るリスクに対して『貯金でまかないますか? 保険をかけますか?』という話の流れなんです。お客様の本当のリスクが何なのか。それを見つけることからすべてが始まります」
 そこで提案する保険も、既成のものではなくオリジナルのものとなっていく。

 「お客様の抱えるリスクに合う保険の内容を、契約しているたくさんの保険会社の保険を組み合わせて作るんです。Aはこれができるし、Bはこれができる。ではこの組み合わせが一番いいだろう…といったぐあいですね。そうやって大体の保険のかたちがこちらで作れたら、それを何社かに渡して、その中で条件のいい会社をお客様に持っていくんです」
 また、同社の「顧客が困った時に助ける」という想いは、自社のみで完結することなく、日本全国の優良保険代理店を巻き込みネットワーク化していくまでに至る。同社が旗振り役となり組織した「SHIELDS/シールズ」は、現在300社を超える加盟代理店数を誇る、事故対応サービスの一大ネットワークとなっている。保険代理店が主導し同業をネットワーク化するという類を見ない試みはどの様にして生まれたのかという問いへの答えは、やはりシンプルだ。
 「お客様を徹底的に守るためにはどうしたらいいか。我々がやっていることは、ただそれだけなんです。保険代理店との連携についても、会費を取って保険の売り方の勉強会をやったりしているだけのものはいっぱいあるんですよ。それを一切せず、『事務局は我々が全部やりますので、とにかくネットワークを組んでお客様が困っている時に助け合いましょう』と。東京に事務所がありますので年に1回くらいぐらいは集まって勉強会をするのですが、リスク・マネジメントの研修であったり、お客様に保険以外のことで喜んでもらえそうな内容をやっています」

トップ保険サービスは「弱っている人々の楯になる」ことを企業コンセプトとして、「保険を売る」ことに重きを置くのではなく、「顧客対応」こそを“本業”として位置付け、徹底して顧客に寄り添ったサービスを展開している

莫大な借金を背負って事業を継いだ時に、見えたものとは

 この徹底した「利他的」といってもいいほどの顧客本位性はどこから生まれたのか。それは野嶋氏が30歳だった頃まで遡る。当時、東京海上火災保険株式会社(現東京海上日動火災保険株式会社)に勤務していた野嶋氏に、先代の社長であった父親から「7億の借金があるから、戻ってきて事業を手伝ってほしい」との連絡があった。長男であることと、「社員の方が働いて稼いだお金、お客様からいただいたお金で育ててもらった」という想いから事業再生を決心し、北九州へと戻った。自分が継げば融資をしてくれるという人間もいて、ある程度の算段はついていた。しかし、そこで待ち受けていたのは、想定外の事実であった。
 「7億の算段はついていたんです。そしたら、親父から『実は14億あるんだ』って言われて(笑)。債権者とやりあって、7億5千万の借金をして営業権を買ったわけなんですけど、自宅や自社だけではなく当時からメインのお客様であったTOTO様の前にも街宣車が来たりと、大変な状況でした。それにも関わらず、TOTO様をはじめほぼ全てのお客様が契約を引き継いでくれたんです。これはもう、信じてくださったお客様、そして残ってくれた社員への恩返しという気持ちで必死に働きました」

家業を引き継いだ時には14億円もの借金があったが、「一生懸命やり続けていたら、11年で借金を返すことができた」(野嶋氏)。自分を信用してくれた顧客。その顧客が求めるものを必死で考え実践し続けてきたことが現在のトップ保険サービスの礎となった

 「毎日寝て起きたら10万円借金が増えていく」という厳しい状況の中、むやみやたらに新規を追いかけるのではなく、自分たちができることをとにかくしっかりやるという意識へと切り替えたことで事態は好転していく。

 「携帯電話さえあれば、お客様が困った時に24時間いつでも対応をすることならできる、と。そして事故対応を一生懸命やり続けていたら、いつの間にか収益が伸びて、11年で借金を返すことができたんです」

 窮地に陥った時にも自分を信用してくれた顧客。その顧客が求めるものとは何なのか。そして、自分たちができることとは何なのか。それ必死で考え実践し続けてきたという経験が、トップ保険サービスの「顧客本位」の礎となっている。

(インタビュー/加藤陽之 構成/藤川貴弘)
執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒトモノコト」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

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