中小企業経営者にとって自宅は「賃貸」か?「購入」か?

2018年1月23日
年末調整・確定申告と年間の所得税税務の締めくくりが近づいてきました。昨今、給与所得者を狙い撃ちしていると思われる所得税の改正が続いていますが、現状の税制度において「自宅は経営者にとって賃貸すべきなのか? 購入すべきなのか?」について今回はお話ししましょう。
 年末調整・確定申告と年間の所得税税務の締めくくりが近づいてきました。昨今、給与所得者を狙い撃ちしていると思われる所得税の改正が続いていますが、現状の税制度において「自宅は経営者にとって賃貸すべきなのか? 購入すべきなのか?」について今回はお話ししましょう。

 まず所得税率(所得税+住民税)についてですが、累進課税であるため一定金額を超えると、超えた金額について税率が上がっていきます。

 195万円以下  15%
 330万円以下  20%
 900万円以下  33%
 1800万円以下 43%
 4000万円以下 50%
 4000万円超  55%

 給与所得者で借り上げ社宅制度等がない人の場合は、雑誌やウェブ等でよく特集が組まれている通りに、

 住宅ローン控除(最大40万円)×10年間

 ということは、「400万円賃貸より購入の方がお得です」が当てはまります。

 では経営者にとってはどうでしょうか?

 経営者の自宅を借上げ社宅として会社から借りていて、経営者自身が賃料の半額を会社に支払いをすると仮定します。仮に月額家賃を60万円としましょう。会社に30万円の家賃を支払うと、税制上、会社は「年間差額30万円×12か月の360万円」の役員報酬を減額すれば損得がなくなることになります(厳密には社会保険料が下がったりすれば会社にもメリットがうまれます)。

 経営者自身の所得税については、年の所得が1000万円以上であれば、「1800万円以下900万円超」の43%所得税率の「360万円×43%」となり、所得税が154万8千円下がります。役員報酬減額した360万円と会社に支払う社宅家賃の360万円ということになり、支払金額はかわりません。

 住宅ローン控除の400万円と比べると、賃貸ならば「154万8千円×10年間=1548万円」の所得税が下がることになります。購入との差額はなんと1148万円! マンションのワンルームが一戸買える金額ですね。

 賃貸のメリットは好きな場所に自由に転居できる点にありますが、一方で資産にならない等のデメリットもあります。損得勘定だけでなく、そういう部分も念頭に置いておくとよいでしょう。

『忙しい社長を救う経理改革の教科書』/幻冬舎・経営者新書/李日生、普川真如 共著

●関連リンク

執筆者: 李 日生 - プレジデントタイム株式会社 代表
慶應義塾大学経済学部卒業後、公認会計士試験合格、監査法人トーマツ国際部に入社・配属。国際企業(商社・通信事業会社・運輸会社等)の連結会計やM&Aを担当、中小企業の経営コンサルティングも数百社経験する。現在はプレジデントタイム株式会社、神宮前アカウンティングファーム株式会社、株式会社H HOLINGS、有限会社ルーベ、神宮前会計を主宰。会計・税務・経営・飲食・不動産等、実際の経営者として代表取締役視点で多岐に及ぶ経験を重ねている(「頭でっかちの机上の空論が大っ嫌い」を自認)。近刊に『忙しい社長を救う経理改革の教科書』(幻冬舎)がある。

コラム新着記事

  • プログラミング不要で導入可能! チャットボット徹底攻略【後編】

    お客様からの問い合わせへの対応や各種手続きの受付に、「チャットボット」を利用する企業が増えています。前編では、チャットボットに何ができるか、また既にビジネスで活用されているチャットボットの事例をいくつか紹介しました。後編では、チャットボットでできることと、作成ツールを紹介しましょう。

    2018年10月17日

    コラム

  • 着地型ツアーのダークホース? 「観光タクシー」の可能性

    インバウンドを加速させるために、着地型旅行や個人旅行をより活性化することが求められています。しかし旅先における二次交通の不在がそれを阻んでいます。二次交通の代表であるタクシーがサービス業としての役割を果たせるなら? 観光需要を掘り起こす道筋を高速バスマーケティング研究所代表の成定竜一さんが探ります。

    2018年10月11日

    コラム

  • 電話? SMS? たくさんあるコミュニケーション手段をうまく使い分けていますか?

    自分の気持ちを“伝える”手段。現在は様々なコミュニケーション・ツールがあります。「電話」や「SNS」、ケータイ番号だけでやり取りできる「ショートメッセージ(SMS)」、「そして「メール」や「チャット」。アナログの代表である「手紙」も、直接会って話す「訪問」もコミュニケーションという点では同じ領域にあるものです。それぞれ特徴をうまく使い分け、コミュニケーションの達人を目指しましょう!

    2018年9月27日

    コラム

  • NHKドラマ『透明なゆりかご』 私たちのすぐとなりにある現実。働く男性にこそ、見てほしい

    NHKで金曜夜10時から放送されているドラマ『透明なゆりかご』は、海辺にある小さな病院・由比産婦人科を舞台にした物語です。時代は1997年。高校の准看護学科で学ぶ17歳の青田アオイは、産婦人科で看護師見習いとして働くことになります。

    2018年9月14日

    コラム

  • 中小企業の生命保険活用法! 

    中小企業経営者で生命保険について理解しているかたは意外と多くありません。今回はそんな保険の入り方についてです。

    2018年9月12日

    コラム

  • もうインバウンド集客で悩まない!

    インバウンドが増え続けています。全国の地方自治体やDMOなどの関係機関は、幅広い地域からの訪日外国人客を誘致するためにウェブサイトの外国語対応や、集客のためのプロモーションなど、情報発信に追われているはず。新連載では、訪日外国人に対して情報発信をしたいが、有効な手段が分からないというインバウンドマーケティング担当者のために、「今だからこそ実施すべき、動画広告のゼロから100まで」を、分かりやすくハウツーでご紹介していきします。

    2018年9月7日

    コラム

  • 人手をかけない売上アップ・お客様満足アップの切り札に! チャットボット徹底攻略【前編】

    新規のお客様からの問い合わせは、商談につながる重要なきっかけです。また、既存のお客様からの問い合わせや手続きは、お客様の満足度を高め次の注文につなげるためのチャンスです。とはいえ、問い合わせに答えるだけでは売上にも利益にもつながりませんから、できれば省力化したいもの。お客様からの問い合わせへの対応や各種手続きの受付に、「チャットボット」を利用する企業が増えています。

    2018年9月6日

    コラム

  • 斜めから見る〜今月の一冊 ④『シリコンバレー式頭がよくなる全技術』

    今月の一冊は、シリコンバレーの経営者で、かつてはすごく不健康に太っていたこれまた典型的なアメリカ人で、それを単純で前向きで疑わない方法で克服した、最強の脳をもってスタイルも改善した経営者によるハウツー本です。今どきのアメリカの経営者スタイルがぷんぷん溢れてて、そうなりたい人には、おすすめしたくなる内容です。この一冊を長沖さんが「斜め」から分析します。

    2018年9月4日

    コラム