■ニュース深掘り!■ 機能性表示食品制度にビジネスチャンス

2016年8月23日
“中性脂肪を減らす”をうたう「DHA1000」や、「肝臓の健康にセラクルミン」が世界初となる“肝機能検査値の低下”を訴求するなど――。ここ1カ月だけでも健康面での効能をうたう新商品が相次ぐなど、健康食品市場が活発だ。
 従来からある特定保健用食品(以下、トクホ)や栄養機能食品に加え、15年度から新たに「機能性表示食品制度」がスタートし、関連市場はいま変化の最中にある。こうした中、地方の中小企業に参入のメリットはあるのか。ハードルはどれぐらい高いのか。国内外の幅広い企業の健康食品事業をサポートしてきた、グローバルニュートリショングループ代表 武田猛さんに話を伺った。

■トクホよりもオープンな、世界に例のない透明性の高い制度

グローバルニュートリショングループ代表 武田猛さん

――機能性表示食品制度が始まり、1年がたちました。従来の制度と何が違うのでしょうか。特徴とメリットを簡単に教えてください。

武田 メリットは、ひと言でいうと、企業の責任で食品の機能性を表示できることで、効果的な広告を打つためのツールが新たに手に入るということですね。企業姿勢もアピールできます。

 トクホは商品ごとに国が審査・許可をする制度。栄養機能食品は栄養成分について国が世界中の文献を調べて上限値、下限値のいわゆる基準を作って、その範囲内であれば決められた表示ができるという制度でした。しかし、機能性食品は企業が自ら安全性、機能性について評価を行い、その結果を消費者庁に届け出をして、表示ができるという制度になります。13年のアベノミクスの3本の矢の一つ、規制緩和策として官邸主導で始まりました。

――国は内容の審査をしないのですか?

武田 国は書類をチェックするだけなので、企業と社会に委ねられた制度です。

 94年に始まった米国のダイエタリーサプリメント制度も企業自ら届け出をする制度でしたが、書いてある機能性の根拠や表示がでたらめであるとか、表示通り成分が入っていないとか、場合によっては健康被害に至るような成分が入っていたりと問題がありました。そのため、日本では販売60日前に、安全性、機能性に関する根拠情報を添付して、事前に届け出することを義務付けました。

 事前届け出制で、届けた内容を広く公表するというこの方法は、世界にも例のない、透明性の高い制度になっています。トクホよりも透明性が高いです。トクホは途中の審査はクローズですけれども、こちらは全部公表されます。届出後も届出情報の内容が変われば、新たにその情報を届け出る必要があり、企業が届出を取り消せば、その履歴も消費者庁の該当ページ上に残ります。

■従来にはない“機能性を前面に出した”マーケティングが実現

――トクホや栄養機能食品にはない、機能性食品のメリットを、もう少し詳しく教えてください。

武田 これまでの健康食品業界というのは、トクホと栄養機能食品以外は機能性が表示できませんでした。なので、まず素材名とか成分名を認知していただいて、なおかつその成分と機能を直接ではなく、なんからの形でブリッジしないといけない、非常に手間のかかるマーケティングでした。

 ですが、(機能性表示食品が現れた)いま消費者は成分ではなく、商品を機能で選ぶように変わってきています。そのため、認知度が高くない素材や成分でも、機能性表示ができることで、短期間での売り上げ向上を期待できると思います。 

機能性表示食品制度や、その申請手続きについてセミナーや相談会を実施する武田さん。その申請審査についても、ようやく傾向が見えてきたと話す

――なるほど。では現在の登録状況はいかがでしょうか。

武田 8月19日時点での届け出受理件数は391件です。商品分類でみると、一番多いのが加工食品で217件。これは、お茶を中心とした飲料、ヨーグルトドリンクなどの乳製品、粉末緑茶など粉末飲料、チョコレートなどの菓子類、豆や大麦などの加工品をさします。

 次にサプリメントが171件。サプリメントは、トクホではほとんどない商品になります。そして生鮮品が3件です。当初の予想より、バラエティに富んでいる印象です。

 企業別では121社のうち、届け出商品の数が多いのは、順に東洋新薬(33商品)、江崎グリコ(30商品)、日本水産(23商品)と大手が続きますが、5商品の届け出が受理されている企業には、「銀座・トマト」「わかさ生活」「小倉屋柳本」といった中小企業があります。受理商品数が1件という企業になると、あまり聞きなれない地方の企業もたくさんあり、こういった点もトクホとは違う顔ぶれになっています。
トクホの認可に必要な期間は平均で4年半といわれていて、制度がスタートして商品を申請し許可された企業は20年かけて60数社ですけれども、機能性表示食品は1年足らずで100社を超えていますので、たくさんの企業が参加していることがうかがえます。

■申請で多いのは加工食品だが、これからの狙い目は生鮮食品

日本で初めてパッケージで”肝臓の健康”を訴求した「肝臓の健康にセラクルミン」

――機能性表示食品として届け出を受理されている中に、生鮮品が3件ある、ということですがイメージがつきません。具体的にどのような商品なのでしょうか?

武田 そうですね。3件の内訳は、大豆もやし1件と、大豆もやしのスプラウトが1件、あとはみかんですね。生鮮品に機能性表示が可能な制度というのは世界的にも珍しいんですよ。

――みかんの事例をもとに、申請の流れについても詳しく教えてください。

武田 はい、これは静岡の三ヶ日みかんで、中にベータ―クリプドキサチンというカロチノイドが入っています。機能性食品表示制度の届け出が受理されたことで、骨の代謝を促進し、健康維持に役立つ、つまり「ミカンを食べて骨の健康」といった表示ができるようになりました。

――どのようにして申請側はその機能性を証明するのですか?

武田 この制度の特徴でもあるのですが、システマティックレビュー(以下、SR)を用いた手法による証明で、三ヶ日みかんは申請しています。SRとは、既存の論文などのデータを用いて、成分の機能性を証明することです。

生鮮食品ではサラダコスモの「大豆イソフラボン子大豆もやし」が、機能性表示食品の第1号に認定されている

 SRに関していえば、自社で実施すればほとんど費用はかかりません(検索用データベース使用料と論文購入費用など)。トクホのような製品ごとの安全性や機能性の試験、たとえば人を使う試験が必須の場合ですと、数百万から数千万ぐらい費用がかかりますので、トクホに比べてコストがかからないわけです。
 ただ、パブメドといった信用のおける米国のデータベースを使いこなしたり、英語の論文を読めたりするなど、理科系の大学院を出たくらいの人でないと専門的でちょっと難しいかもしれません。必要書類に、何というキーワードで検索した結果、何本の論文が出て、どういう関連記述があったのか、すべて記載し、誰がトレースしても同じ結果が出ることが求められます。

 実際にSRを用いた申請は多く、先ほどの届け出受理件数391件のうち352件はSRによるものです。社員数が10名に満たないような健康食品の会社でも、徹底的に勉強されており、もうすぐ受理される見込みです。

機能性表示食品制度など、最新の法改正や新制度に対応した『健康食品ビジネス大辞典』も出版する武田さん

■SRと書類記載のコツ、そして「第一号」をつかめるかが鍵

――もうすぐ、と申しますと、すぐに受理されないのでしょうか?

武田 実は、制度開始前に予想されたよりも、届け出の受理に時間がかかっています。理由は、書類に不備が見つかるためで、私の知るところでは1度で受理されたところはありません。皆さん、2回、3回、場合によっては5回6回と書類を返されています。最初の書類チェックに約2ヵ月、その後、不備の訂正のやり取りで数カ月と、結局申請から1年以上かかり、販売計画の変更を余儀なくされた会社もあるようです。

 原材料の企業が自社でSRを行い、販売会社に情報提供する事例もあるようです。

――最後に、これから参入する地方の中小企業にアドバイスをお願いします。

武田 私自身は、まだ申請が少ない生鮮品での機能性食品表示を得ることの利点に注目しています。何らかの形で第一号になれば、新聞やテレビで紹介され、無料で広告宣伝効果を得られるからです。

 出荷量の増加や適性価格での取引にもつながります。先ほどのもやしの企業は、出荷量が前年の1.5倍になり、値引きせずに仕入れてもらえるようになったと話していました。店頭でも付加価値のある商品として適正価格で販売されるため、メーカーにとっても流通にとってもプラスだということです。

 制度はまだ始まったばかり。現在、対象外のビタミン・ミネラルなどの栄養成分を機能性食品の対象にするかどうかの検討会が進んでいます。一方、不適切な表現の洗い出しも行われています。業界全体で制度の信頼性を高めることも心掛けながら、ぜひ地方の中小企業にも独自の視点で参入してほしいと思っています。

東洋新薬では公式ページ内に機能性表示食品のコーナーを設け、”届出実績NO.1”をアピールしている

<Profile>
武田猛(たけだたけし)さん
株式会社グローバルニュートリショングループ代表取締役。麻布大学環境保健学部卒業、法政大学大学院経営学専攻修士課程修了。健康食品業界での商品企画や開発からマーケティングまで、28 年間、幅広く実務に携っている。受託製造企業、および健食通販企業で実務を経験した後に独立。04 年に株式会社グローバルニュートリショングループを設立し、現在に至る。健康食品ビジネスの新規事業の立上げから新商品開発、海外進出支援まで幅広いサポートを行なう。日本国内外において360 件以上のプロジェクトの実績があり、実践的で具体的な助言が高く評価されている。
《塩月由香/HANJO HANJO編集部》

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒトモノコト」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

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