石蔵カフェ盛況「書店はなくても本が読めるよ!」加工品も販売/移住就農、南さつま市 画像 石蔵カフェ盛況「書店はなくても本が読めるよ!」加工品も販売/移住就農、南さつま市

インバウンド・地域活性

 鹿児島県南さつま市にあるしょうゆ醸造会社の古い石蔵が月に1度、読書とお茶を楽しむ「ブックカフェ」に変身する。考案者は若手農家の窪壮一朗さん(35)、菜つみさん(32)夫妻だ。鹿児島市内の古書店と手を組み、過疎化で書店が消える中、本に親しむ場所をつくろうと立ち上がった。店内で九州産小麦の焼き菓子を提供したり、自家製ジャムを販売したりと農家らしい演出が好評だ。今では1カ月に70人が集まる“農村サロン”に育っている。(木原涼子)

 毎月第2金曜日の午前10時。がらんとした石蔵が、暖色系の照明が照らす落ち着いたスペースに変身する。机や棚には鹿児島の文化や歴史、旅、料理の本など300冊ほどが並ぶ。写真集などを集めた「見て楽しむ本」特集など目玉コーナーも登場。客はコーヒーを飲みながら読書を楽しんだり、気に入った本を購入したりする。

 かんきつ農家の2人が、地元老舗のしょうゆ醸造会社から使わなくなった石蔵を借り、テーブルと椅子を持ち込んで2017年10月から月1回開く。来店者の多くは近所の住民だ。

 窪さん夫妻は7年前に神奈川県から移住し、ポンカンなどのかんきつ栽培と農産加工・販売を始めた。田舎暮らしを満喫していたが、困ったのが近くに書店がないこと。一番近い店でも車で30分ほどかかる。読書が共通の趣味だった2人。「本はインターネットでも買えるが、子どもたちが好きな本を手に取って選べる場所がない。地域にはカフェもなく、気軽に本を楽しめる場所が欲しかった」と話す。そんな危機感があった。

 多くの人に楽しんでもらう秘訣(ひけつ)が、古書店と組んだ本の品ぞろえと、農家だからできる「おもてなし」だ。コーヒーのお供は、菜つみさんお手製の焼き菓子。九州産の小麦を使う。次は、特産の「知覧茶」や蔵に関連付けてしょうゆを使ったメニュー開発が目標だ。自園のキンカンを使ったジャムなど、加工品も販売する。本は、鹿児島市で古書店「つばめ文庫」を営む友人が、お薦めの作品を毎回、持ち込む。

 開始当初は数えるほどだった来店者も今では口コミで増え、約70人以上が来店。JA南さつまの広報誌にも登場し、地域内での知名度も上がってきた。壮一朗さんは「小さな町で喫茶店もない。本がきっかけで地域の人たちとも共通の話題が生まれ、交流できる場所が一つ増えた」と手応えを実感する。次回は4月13日午前10時~午後8時。
ネットに押され・・・小規模店 続々と撤退 ここ10年2割減少
 書店数は全国的に減っている。日本出版インフラセンター(JPO)の調査によると、全国の書店数(16年度)は1万4098店と9年連続で減少。10年間で2割の店が消えた。郊外のショッピングモールなどに大型店が増える一方、経営力で劣る小規模店が廃業している。JPOは「特に100坪(約330平方メートル)未満の小規模店の消滅が顕著だ」と言う。

 残る書店も、接客にかかる手間や人件費を抑えるため、売り場を持たず小売りをしないケースが多い。学校など特定の相手に本を卸す方法で息をつないでいる。

 出版取り次ぎ大手のトーハンによると、全国の書店のうち、売り場がない店が2割。香川県を除く46都道府県のうち、420の自治体に広がっている。JPOによると、青森県八戸市では自治体が書店を経営する例もあるという。

書店はなくても 本が読めるよ! 石蔵カフェ盛況 加工品も販売 移住就農の窪さん夫妻 鹿児島県南さつま市

《日本農業新聞》

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