IoTの普及を加速させるか?フランス発の通信技術「Sigfox」とは 画像 IoTの普及を加速させるか?フランス発の通信技術「Sigfox」とは

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 京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は、同社が日本国内で専属契約を結ぶSigfox(シグフォックス)のIoT向けソリューションを紹介するセミナー形式のイベント「KCCS IoT Conference 2018」を開催した。既存のIoTソリューションに対するSigfoxの優位性はどこにあるのか?まとめてみよう。

都内にて「KCCS IoT Conference 2018」が開催された

低コスト・低消費電力を特徴とするSigfox
 Sigfoxはフランスの通信事業者であり、同社が展開するIoTソリューション向けの通信サービスの名称でもある。本稿取材時点で全世界45ヵ国に展開している。日本ではKCCSが専属契約を結び、2017年2月からサービスが始まっている。

 Sigfoxが既存の通信インフラを活用したIoTソリューションに対して持つ優位性は大きく2つある。ひとつは低価格であること。1回線あたりの利用コストが年額100~700円の間に収まることから、大量のIoTデバイスを長期間に渡って使う用途に適性がある。

 もうひとつは電力消費を低く抑えられることだ。1度の通信時に送れるデータ容量が12バイトまでと範囲が決まっていることから、定期的に小容量のデータをサーバーにアップロードしながら運用するIoTソリューションに向く。また例えばIoT機能を乗せた室温センサーや水道メーターなどは、一定間隔に小容量のデータをサーバーに送った後はスリープ状態にしておくこともできる。このようにデバイスの性質によっては、さらなる低消費電力化と長期間駆動対応が図れる。

 920MHz帯の無線通信を利用するSigfoxの電波は伝送距離が長いため、少ない数の基地局端末で一定のエリアカバーが作れる。本稿取材時点でKCCSが全国に展開しているSigfoxのネットワークは、政令指定都市を含む主要都市のカバーを完了しており、2020年までに99%のカバー率を達成することを目標に掲げている。

 先述の通り、KCCSではSigfoxの国内ネットワークの整備と、パートナー企業への
Sigfoxネットワーク(通信)サービスの提供をおこない、モジュールの開発・販売やデバイス・アプリケーション・ソリューションの開発・販売はパートナー企業が実施している。KCCSでは今後イベントなどを通じて、Sigfoxを活用したデバイスやソフトウェアのサービスベンダーをパートナーとして増やしていくことが当面の課題だという。

KCCSが開発したSigfox対応の小型タイプの基地局ユニット

 なおSigfoxではモジュールを搭載した新規開発の機器やベンダー企業に対する独自の認証プログラムを設けながら、技術と製品の品質確保にも力を注いでいる。既存のIoTプラットフォームに対して明らかなアドバンテージがあることをアピールするSigfoxの名前を、今後耳にする機会が増えてきそうだ。

大切な自転車の盗難を防ぐ・トラッキングができる「AlterLock」
 多様なIoTソリューションの作り込みに最適なテクノロジーとして期待されるSigfoxの活用事例について、実際に商品化済みのものも含めてKCCSが開催したイベントの展示エリアで代表的なものが一望できた。

 国内のベンチャー企業であるネクストスケープは、加速度センサーによる移動検知アラームとGPS通信機能を搭載した自転車盗難防止サービス「AlterLock」を今年の夏にローンチ予定だ。

プレミアムなスポーツバイクの盗難を未然に防ぐ。万が一盗難にあってしまってもGPSで比較的長期のトラッキングが可能

 スポーツ用自転車専用の盗難防止サービスとして企画・開発された当サービスは、Sigfoxの通信モジュールとGPS、バッテリーを内蔵するプレートを自転車に装着。専用のアプリをインストールしたスマホがBluetoothペアリングの範囲から離れると、自動的に見守りモードにスイッチする。見守りモード時の自転車が振動を検知すると、デバイスからアラーム音が鳴って盗難を未然に防ぐ。

スマホアプリで自転車側デバイスのコンディションが把握できる

自転車に取り付けた「AlterLock」の通信機能を搭載するプレート

 万一デバイスが持ち去られた場合も、GPS機能によって位置をトラッキングできる。担当者によれば「駆動時のバッテリー消費が低く、遠距離通信を実現できるSigfoxの優位性が活かせる」という。バッテリーはUSB充電に対応しているが、GPSを内蔵しながら短い時間で不定期に通信を行う仕様なので、約1ヵ月から2ヵ月トラッキングができることも特徴だ。デバイスの予価は8,900円、サービスの月額利用料金は300円を予定している。

シンプルかつ多彩な用途に展開できる「Sigfoxマルチアダプタ」
 京セラグループのKCCSモバイルエンジニアリングは様々なセンサーと接続できる「Sigfoxマルチアダプタ」を昨年末に商品化しているが、早々にパートナーシップを実現したネスレ日本が展開するネスカフェアンバサダーの新サービス「キットカット たのめるくん」を展示会場で披露した。2017年12月中旬からサービスが始まり、2018年末までに1万件を超えるオフィスでの利用を見込む。

KCCSモバイルエンジニアリングが開発したSigfox対応のマルチアダプタ

ネスレの「キットカット たのめるくん」が採用した

 キットカット たのめるくんの什器にはSigfoxマルチアダプタと、KCCSモバイルエンジニアリングが当サービスのためにカスタマイズしたボタンデバイスが接続されている。キットカットの在庫が残り少なくなった時にボタンを押すと、発注データがSigfoxのクラウドサーバーを経由して、ACCESS社が開発したサーバにオーダーが送信される仕組みだ。

Sigfoxマルチアダプタに接続されたマルチボタンユニット

 Sigfoxマルチアダプタには温度センサーや加速度センサーも内蔵されている。KCCSモバイルエンジニアリングでは室温を記録して、遠隔地からPCのブラウザアプリを使って部屋のコンディションをモニタリングできるダッシュボード「SmartBee」も間もなくの提供開始を予定している。

ダッシュボードアプリの「SmartBee」

台湾大手EMSもSigfoxの商品開発に本腰
 台湾の大手EMS(製造受託サービス事業者)であるカルコンプも、Sigfoxを活用したデバイスとIoTソリューションの提案に力を入れている。今回のイベント会場にはスマートパーキング用途を想定したセンサーの試作機を出展した。

カルコンプが提案するスマートパーキング用のSigfox対応センサー

 金属が近接すると反応するセンサーをパーキングの地中に埋め込み、車の入庫・出庫時のデータをSigfoxのモジュールでサーバーに通信しながらパーキングのステータスを管理する仕組みを想定している。こちらのデバイスは台湾の台南市政府からのリクエストを受けて開発したものだ。同社のスタッフは「地中にデバイスを埋めることが禁止されている場所も想定して、地上に固定する薄型センサーも同時に開発している」という。

金属に反応して車の入出庫をモニタリングできる

地上に固定するタイプのセンサー

 Sigfoxモジュールを埋め込んだ「Cold Chain」は冷凍トラック用の冷蔵庫に設置する通信デバイスだ。冷凍庫の温度を遠隔地から監視して、一定の温度に保つ使い方を想定している。

冷蔵庫を乗せたトラックとの無線通信を実現する端末も開発

老朽化したビルに取り付けられた看板のコンディションを見守るセンサー
 オプテックスはSigfoxの通信モジュールを建物の運営管理サービス向けデバイスとして提案している。ビルの側壁に設置された看板の傾きや揺れなどコンディションを遠隔管理するためのソリューションをオージス総研とともに開発した。こちらは過去に国内で、老朽化したビルの看板が落下した事件から教訓を得て、より簡易に運営できる建物の見守りサービスをSigfoxのテクノロジーを使って実現することを目的としている。

オプテックスの看板用見守りセンサー

 オプテックスは国内では自動ドア用センサー機器の販売シェアを約6割も獲得しているというメーカーだ。通信機器のノウハウを活かして、Sigfoxのモジュールを内蔵するIoT無線ユニットも試作した。こちらに様々なセンサーを取り付けることで多様なセンシング機能を実現できる。同社では今後Sigfoxに対応するデバイスを供給するだけでなく、例えばIoTサービスに経験の浅い企業に向けたソリューションも含むパッケージ提案にも力を入れていく考えだ。

※存在感を増す欧州のIoTスタートアップ

IoTの普及を加速させるか?フランス発の通信技術「Sigfox」とは……活用事例も続々

《山本 敦》

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