国のかたちを考える2018/日本旅行業協会理事事務局長 越智良典氏 画像 国のかたちを考える2018/日本旅行業協会理事事務局長 越智良典氏

インバウンド・地域活性

 ◇観光振興が大きな変化生む
 前職で台湾ツアーの企画に携わっていた頃、嘉南平原を穀倉地帯に変えた烏山頭ダムの建設に尽力した土木技師・八田與一の記念館落成式に招待されたことがある。この時、当時の台湾総統が「八田與一の功績を日本の子供たちに勉強してほしい」と話された。そうして2011年からまずは学校の先生向けにセミナーを開くなどして紹介し、実際に修学旅行生たちが烏山頭ダムを訪れるようになるまでに3年ほどかかった。今では日本からの修学旅行で台湾は一番人気であり、中でも烏山頭ダムが台北に次ぐ中心地となっている。
 04年にスマトラ沖地震で津波被害に見舞われたインドネシアのアチェでは、津波博物館に世界中から年間20万人が訪れている。現地の方から「津波ツーリズム」という言葉も聞いた。災害を風化させないためにも、多くの方々が被災地を訪れるようにすることは重要だ。
 日本人旅行客の市場は成熟化しており、目の肥えたリピーターが増え、旅行スタイルも観光型から目的型や体験型に変わっている。インフラを見学する「インフラツーリズム」が産業観光の一つとして成立するようになったのもこの現れであろう。旅行会社も旅を通じて国のかたちを考える機会を提供していきたい。
 世界的に富裕層が増え、国境を越えて観光する国際観光人口は昨年の13億2000万人(速報値)から20億人に増えていくとの予測もある。こうした中、日本はアジア各国からのインバウンド(訪日外国人旅行者)を上手に取り込んでいる。日本にとってインバウンドの増加は、明治維新、太平洋戦争の敗戦に続く「第3の開国」とも言われ、国のかたちを変えるほどのインパクトを持つ。
 だが、まだまだ東京、大阪、名古屋といった三大都市圏を訪れる外国人が多い。地方への広がりはこれからだと思う。「ゴールデンルート」と呼ばれる人気コースを一度観光すると、次は違う所に行きたくなる。日本人も同じだった。
 今後、インバウンドが年間5000万人、6000万人と増えていくのに伴い、リピーターの数も増える。こうした人たちはツアーではなく個人で旅行する傾向があり、例えば地方の1時間に1本しかバスが来ない所に足を伸ばしてくれるかどうか。さらに電車もバスもないのでは、せっかく魅力的な場所でも行きようがない。そうした人たちの足をどうするかも考えていかなければならない。
 インフラ面では、クルーズ船のターミナルや空港、宿泊施設の整備も欠かせない。国立公園の活用や電線を地中化して街並みをきれいにするなどの取り組みも必要だ。ソフト系のインフラでは多言語化やWi-Fiの整備などが挙げられる。これらの解決の財源となる「国際観光旅客税」を創設する国際観光振興法改正案については早期成立を願う。
 (おち・よしのり)1952年10月広島県生まれ。75年早稲田大学経済学部卒、近畿日本ツーリスト入社。支店長、本社海外旅行部長、常務、専務、ユナイテッドツアーズ社長などを経て、13年6月から現職。

シリーズ・国のかたちを考える2018/日本旅行業協会理事事務局長・越智良典氏

《日刊建設工業新聞》

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