地方創生のカギをにぎる「プロ人材マッチング」/第3回 成功へのシナリオ(事例編) 画像 地方創生のカギをにぎる「プロ人材マッチング」/第3回 成功へのシナリオ(事例編)

インバウンド・地域活性

■地方の中小企業こそ「副業・兼業」を採用すべきである

次の事例は最近話題にあがることが多い「副業・兼業」での事例です。昨年11月から12月にかけて、広島県福山市が副業・兼業限定で戦略顧問を募集しました。今後、地域企業が副業・兼業の方を雇用しようと考える時にモデルケースがないと話が進まないだろうと考えたのです。そうであれば自治体自らが取り組むことによりモデルケースとなり、地域に取り入れようという発想です。

私たちは、今後、地域の中小企業は副業・兼業という働き方でも人を受け入れたほうが良いと考えています。人材獲得競争が激化するなか、首都圏のプロ人材を正社員として採用するのは大変ですが、副業・兼業で週1日就業してもらうのであれば採用しやすいのではないかと考えます。働く側から見ても、副業・兼業は転職よりもハードルが低いです。地域企業にとって、副業・兼業によるプロ人材の採用は、新卒採用、中途採用に次ぐ新しい採用手法になると考えています。その際に重要になるのが、福山市のように「この重要なポジションを任せるから副業・兼業で知恵を貸してほしい」というスタンスです。最近、「シェアリング」という言葉が注目されていますが、まさに「知のシェアリング」といえるのではないでしょうか。

――福山市が「副業・兼業」による人材募集にいたった理由を教えてください。

福山経済の発展と産業の生産性アップ向上を目指して始まりました。福山市は製造業や織物が盛んな都市なのですが、人口減少が進んでおり、まさに待ったなしの状態で、枝廣直幹市長が率先して活動を推進されています。福山をより魅力的な街にしていくためにいくつかの方針や企画があり、その実行をより正確に、より迅速に進めていく必要があります。ビジネス界では大きな企画を進める際には存在する「プロジェクトマネージャー」、いわゆるPM業務を行うスペシャリストにチームに入ってもらうことで、一気に実行スピードを上げたいと考えています。また、この取り組みは、枝廣直幹市長の「従来にない発想で先手を打ち、常に主体的に課題を解決していく攻めの姿勢が不可欠」という思いを形にした格好です。

応募者数は395人でした。応募者の大半が首都圏在住の方で、主な業種は、コンサルティング会社や製造業、金融機関などで、大企業の方も多くいました。福山市の副業・兼業限定戦略顧問の報酬は日当25,000万円、月に4日しか働けないので月10万円で、応募したプロ人材の方々はそれ以上の給与を得ている方が多いと想像します。それでも、これだけの人数の方々が応募したのは報酬よりも、福山市で行政に関わることが自身のキャリアにとってプラスになる、市長のブレインとして都市デザインに関わりたい、そしてやりがいがあると考えた方が多いのではないでしょうか。

――この状況が福山市の中小企業に新たな人材採用の流れを生むことにつながって欲しいですね。

自社のやりがいをきちんとPRして経営者の参謀となる重要ポジションを求めれば、応募者が400人も集まることを福山市が証明してくれました。この流れが地域企業にも好影響を与えてくれればと願っています。

働き方改革が進むなか、今年は副業解禁や週休3日を導入する企業も増えるでしょう。またプロ人材が副業することでその経験を本業に活かせる可能性もあります。例えば副業先の企業と本業との間で協業するといったことも想定できます。双方にとってメリットが大きいと思います。

――2018年に入り、様々なメディアで「中小企業」や「マッチング」という言葉が目立っているように感じます。その二つがうまく結びつくために必要なのは何でしょうか。

まず、受け入れ側である中小企業が変わっていかなくてはなりません。募集したいポジションを明確にし、外部人材の採用に慣れること。既成概念やアナログ的発想から脱皮し、IT化、モバイル化、インターネットを活用したPRを推進すること。そしてこれらを経営者自らがコミットすること。この3つが基本です。

各地には素晴らしい産業や企業がたくさんありますし、地域の企業からすれば人を採用するチャンスはまだまだあります。採用しにくいのは確かですが、決して採用できないわけではありません。工夫次第でいかようにもなります。やれることはたくさんあるはずです。
(インタビュー/加藤陽之 構成/川口裕樹)


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