地方創生のカギをにぎる「プロ人材マッチング」/第2回 ITメディアの理解が人材獲得につながる 画像 地方創生のカギをにぎる「プロ人材マッチング」/第2回 ITメディアの理解が人材獲得につながる

人材

★地方創生のカギをにぎる「プロ人材マッチング」
第2回 「ITメディアの理解が人材獲得につながる」

 働き方改革や兼業・副業が2018年のキーワードとなるなか、首都圏の大企業で管理職や専門職を経験した、いわゆる「プロフェッショナル人材」を地方の中小企業が採用する動きが注目を集めている。東京への一極集中や少子高齢化による地方の人口減少や、地方産業の衰退、雇用の減少などの課題が山積みとなっている中、いくつかの自治体ではプロ人材の採用によって地域の活性化に成功しており、地方創生の観点では見逃せないムーブメントと言えるだろう。
 人材採用にあたってはネットでのマッチングが飛躍的に伸びており、面接等のための遠隔地への移動といった障害も過去の話になりそうだ。
 今回の特集で話を聞くのは、地方企業と首都圏のプロ人材とのネットでのマッチングを手がける株式会社ビズリーチの加瀬澤良年さん。即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」や求人検索エンジン「スタンバイ」を活用して各地域の採用支援を行い、また、内閣府のプロフェッショナル人材戦略拠点事業において約40道府県のプロ人材拠点のサポートを行う中で、プロ人材と地方創生の関係を見つめてきた。人材の流動性が日本でもようやく高まりつつあるいま、何が必要なのかを3回にわたって紹介したい。その第2回は、パソコンやスマートフォンなどのネットメディアを理解することが人材マッチングの成功へとつながっている現状などについて、語ってもらった。


■地域によって人材採用の格差は生まれているのか?

――地方の中小企業経営者は人材会社といった“外部”から社員を採用することに抵抗はあるのでしょうか。

経験がない場合は抵抗がある方が多いと思います。その理由のひとつは過去に主体的に中途採用を行なったことがない点にあります。地方で採用する主な方法は2つあって、ひとつが地元の学校の卒業生を対象にした新卒採用、もうひとつがハローワークでの求人です。つまりプロ人材を中途採用した経験がほとんどない企業が多いのです。

――「プロ人材」と聞いて経営者はどんな反応をされるのでしょうか。

そもそも「経営幹部を中途採用する」という発想を持っていないケースが多いです。「そうは言ってもどうせ年収や転居の面が課題になり採用できないだろう」と思っている方もいらっしゃいますが、「そんな方法もあるのですか?」「中途で部長級を採用できるのですか?」とおっしゃることもしばしばで、中途採用の知識が不足している傾向があります。

もちろんすべてではありませんが、地方の中小企業では社内でオーナー社長に採用面でアドバイスできる人はあまり多くいませんし、経営者からしてみると「人材を確保するなら人事部や外部に任せればよい」と考え、「人材採用=経営課題である」と自分事として考えられていないケースがほとんどです。

人材採用を経営課題として考えられないと、仮にプロ人材が応募してきたとしても、経営者が熱量をもって仕事のやりがいを説明することができず、能動的に口説けないため、残念な結果になってしまいがちです。そして、初めて取り組んだ中途採用が失敗に終わると、中途採用へのアレルギーとなってあきらめてしまう企業もあります。

こうなってしまうと、ひとつの方法ですべてが解決できるわけではなく、少しずつ前に進めていくしかありません。歩みを進める例として、私たちは今、ある県と一緒に中途採用に成功した企業の事例本を作っています。地域の企業は、隣の会社が試みて成功したことは積極的に自社にも取り入れる傾向が強いと感じているので、お役に立てるのではないかと考えています。

もちろん、地方の中小企業でも能動的に、経営者自らが採用に取り組んでいる企業はあります。我々の支援先企業様でも、首都圏の企業と比べて立地面や条件面でかなり不利であっても、数十人もプロ人材を採用できた企業があります。しかしながら絶対数はまだ多くはありません。今後も、まだ中途採用に取り組んだことのない企業に対してモデルケースを示し、私たちが伴走しながら、成功するまであきらめないよう粘り強い支援をしていく必要があります。

――人材採用ではネットの活用が進んでいますが、地方の経営者はIT関連にどれくらい意識的なのでしょうか。

昔は求人というと雑誌などの紙媒体が主流でしたが、パソコンが登場し、IT化が進み、スマートフォンが普及するようになって、求人もモバイルで見られる時代になっています。しかし地方の経営者のなかにはスマホをいまだにかつてのような携帯電話だと思っている方もまだ多いようで、スマホが人材採用の主流になっていることを知らない方もいらっしゃいます。

この状況を象徴する事例があります。ある地方の工場の隣にお弁当屋さんがありました。そのお弁当屋さんが撤退してしまったため、そこで働いていた若い従業員が隣の工場で働きたいと考え、スマートフォンでその工場の名前を検索しました。しかしいっこうに会社名は出てきません。募集していないわけはないだろうと探し続けて3ヶ月が経ちました。同時期に、私たちがその工場の採用支援に始めたところ、なんとその工場の社員通用口に社員募集のポスターが貼ってあったのです……。早速、その求人をスマートフォンに最適化した状態でウェブ上にアップしたところ、さきほどの方がその求人を探すことができ、応募し、2週間で採用にいたりました。もし、それ以前から恒常的にインターネットで求人情報を掲載し、拡散していればその工場も採用で苦労しなかったかもしれません。採用する企業はいまだに紙で求人を出しており、一方、応募する求職者はスマホへとシフトしている。これは極端な事例ですが、現実に起こっていることで、これほどインターネットへの対応が遅れているケースもあるのです。

――ICT(インターネットによるコミュニケーション技術)への意識が人材獲得につながっているとも言えますね。

遅れているケースが多いのは事実ですが、まだ首都圏の企業に十分に追いつけると思いますし、首都圏を超える可能性もあります。そのためには地域のキーマンを見つける必要があります。


《HANJO HANJO編集部》

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