老舗酒造「加賀の井」灯消さぬ、富山で仕込み継続、来年は地元で再起/糸魚川大火から1年 画像 老舗酒造「加賀の井」灯消さぬ、富山で仕込み継続、来年は地元で再起/糸魚川大火から1年

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 全半焼など147棟という被害をもたらした、新潟県の糸魚川市大規模火災から22日で1年。酒蔵が全焼した老舗酒造会社、加賀の井酒造は今も再建途上だ。現在、富山県黒部市の酒造会社の一角を借り、日本酒を製造。社員らは生産のためほぼ毎日、黒部まで通って出荷を続ける。2018年2月に新工場が完成する予定で、社員らは新たな酒蔵での生産を心待ちにする。

 想像を絶する火災だった。1650(慶安3)年創業の加賀の井酒造の第18代蔵元、小林大祐さん(35)は出火直後から焦げた臭いに気が付いていた。火元となったラーメン店との距離は約150メートルあったが、最大瞬間風速27・2メートルの強風にあおられ、酒蔵にも燃え広がった。「火元との距離があるため、普通に考えて延焼するとは思わなかった。鎮火後、全焼した工場を見てがくぜんとした」と振り返る。

 黒部市の系列会社、銀盤酒造の社員にも動揺が走った。テレビなどで大火の情報を知った製造部長で杜氏(とうじ)の荻野久男さん(68)は「黒部からも多くの消防車が新潟方面に走っていった。ただ事でないことは、黒部にいても分かった」と当時の様子を語る。

 「酒を1本でも2本でも出し続けたい」。小林さんは両社の代表を務める田中文悟社長に直談判。快諾を得て、2月から銀盤酒造での製造を始めた。社員らはほぼ毎日、日本酒を製造するため、片道約50キロの道のりを往復。糸魚川の硬水とは違い、不慣れな黒部の軟水での製造に悪戦苦闘する日々が続く。これまで仕込みは2、3月と10、11月の2回。計約6000リットルを生産した。

 小林さんは「軟水で加賀の井の味を出すのは難しい。生産量も最盛期の1割に満たないが、造り続けたことに意義がある」と話す。

 今年は天候不順などで新潟県産の酒造好適米「五百万石」が予定量を確保できなかったが、銀盤が不足分の米を提供。今秋分は新潟、富山両県の「五百万石」を使い仕上げ、12月上旬からの出荷にこぎ着けた。

 出荷のピークを迎えた今、一日も早い復興を願って社員らは、「がんばろう 糸魚川!!」のメッセージを付けた日本酒の詰め込み作業を急ピッチで行う。

 来年3月にも新工場での製造を開始。老舗酒蔵は、新たな歴史を刻む。

 荻野さんは「大火を機に深まった絆を大切にして、これからも陰から応援し続けたい」と話す。

 小林さんは「応援してくれている人たちのためにも、糸魚川で生産できる体制を確実に整え、酒屋としてのスタートラインに立ちたい」と力を込める。(前田大介) 
<ことば> 糸魚川市大規模火災
 2016年12月22日午前10時20分ごろ、新潟県糸魚川市のラーメン店の厨房(ちゅうぼう)から出火。鎮火するまで約30時間を要した。強風の影響もあり、焼損棟数は147棟(全焼120棟、半焼5棟、部分焼22棟)、焼失面積は計約4万平方メートル、負傷者は17人。

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《日本農業新聞》

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