急速にFIT化するインバウンド市場。新しいタイプのバス商品が登場 画像 急速にFIT化するインバウンド市場。新しいタイプのバス商品が登場

インバウンド・地域活性

 なにせ「地方の人の都市への足」であるため、地方側の朝に発車し大都市へ向かう便(路線によっては早朝4時台に出発し9時前に新宿や梅田に着く便は人気だ)と、夕方以降に大都市を出て地方に帰る便(これも、最終便は24時を優に超えて地元に帰着する)の乗車率は高めである。逆に、観光客の利用を見込める、大都市を朝に出る便と、夕方以降に大都市に戻る便の乗車率は今一つだ。それらの便について、まずは観光施設への乗り入れ、最終的には立ち寄り観光など「バスツアー」的な要素を上乗せした商品へ昇華させる必要がある。

 最終的には、例えば、「チェックアウト時に宿泊施設に荷物(着替えなどが入った大きい方)を預ければ、当日の夕方に次の宿泊先に届けてくれる」手荷物託送サービスなど、個人旅行者支援の仕組みも必要だ。宅配便は、域内での集配は日中に行うが、広域の輸送は深夜の夜行トラックが中心のため、通常サービスだと一晩かかってしまい「今晩泊まる宿で、着替えや洗面用具がない」状態になってしまう。域間の輸送を、規制緩和によって認められた「貨客混載」モデルを活用し高速バスの床下トランクで行うようにすれば、当日の夕方までにその日の宿泊施設に荷物を届けられるようになる。

 観光地どうしを結ぶ二次交通の充実もまた求められる。国内市場だけを相手にしていた頃は、「お隣の観光地」はライバルであったが、FITを想定すると「お隣の観光地」はチームメイトに変わる。それらを横ぐしに刺して旅行する環境整備が必要である。

 もっとも、「全国にまんべんなくFITが旅行しやすい環境を」というわけにもいかない。だからこそ、ある程度人気のある周遊ルートにリソースを集中させる「観光回廊(コリドー)」作りが重要なのである。

 高速バス事業者の多くは「自分たちは“運輸”の仕事。地味で目立たないが、地元、沿線の人の役に立つ存在」という自画像を描く。むろん、それは間違ってはいない。だが、その自画像にもう一つ「観光という、この国の“次の生きざま”の一翼を担う」という色を上塗りすることこそ、第一歩である。逆にデスティネーション側では、従来の、国内大手旅行会社の「仕入れ」担当や、中国や台湾など発地の旅行会社(またはその手配代行業者)に加え、高速バスや鉄道など交通事業者もまた、観光の重要なプレーヤーだと認識いただきたい。

 神姫バスツアーズが挑戦する、「高速バスとバスツアーの中間」という新サービスが、高速バス事業者らとツーリズム産業をどう変化させていくか、楽しみである。


●成定竜一(なりさだりゅういち)
高速バスマーケティング研究所株式会社代表。高級都市ホテルチェーンを退社後、06年に楽天バスサービス株式会社に入社。楽天トラベル「高速バス予約」サービスの事業責任者を経て、同社取締役に就任する。11年に退職すると、高速バスマーケティング研究所を設立。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員(10年度)、「国内観光の振興・国際観光の拡大に向けた高速バス・LCC等の利用促進協議会」(15年度~)などを歴任する。


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《成定竜一》

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