NHKドラマ『マチ工場のオンナ』 事業承継を克服する姿に希望を見出す 画像 NHKドラマ『マチ工場のオンナ』 事業承継を克服する姿に希望を見出す

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 NHKで金曜夜10時から放送されている『マチ工場のオンナ』は、父の有元泰造(舘ひろし)の死によって、ダリア精機という自動車用のゲージを作る町工場の社長に就任することになった32歳の主婦・光(内山理名)が主人公のドラマだ。

 原作はダイヤ精機代表取締役社長・諏訪貴子によるビジネス書「町工場の娘 主婦から社長になった2代目の10年戦争」(日経BP社)。つまり実話を元にしたドラマで、劇中で社員と行う交換日記などは実際に行われたことだ。

 実話を元にしていることを差し引いても、突然社長になった女性が直面する困難を通して町工場の経営の困難さを描く手腕は実に巧みで、とても見応えのあるドラマとなっている。

 父の死後、光は社員から、社長になってくれないかと懇願される。悩んだ末に光は二代目社長となるのだが、最初にやったことは経費削減のためのリストラだった。

 家族型経営で社員から支持されていた泰造とは真逆のやり方だったため、光はさっそく社員から反発され、会社は険悪な空気となる。

 絶対にリストラをしなかったがゆえに、会社の経営を悪化させた父親(舘ひろし)の姿は、古き良き日本型経営者の象徴で、現在放送中の池井戸潤の原作小説をドラマ化した『陸王』(TBS系)で役所広司が演じている足袋製造会社の社長のような存在だ。

 対して光は最初にリストラを社員に宣告する。その場面は苦渋の決断をする光の苦しさもクビを宣告された社員の側の絶望も同時に伝わる痛々しい場面で、こんな辛い場面を描くのかと見ていて驚いた。同時に、そこに容赦なく踏み込むのかと感心もした。

 こういうリアリズムは脚本を担当する大島里美の持ち味だろう。『四十九日のレシピ』や『恋するハエ女』(ともにNHK)などで知られる脚本家だが、彼女の作品の根底には、地に足のついた生々しい手触りがある。それは本作でも同様で実話を元にしていることもあってか、お金に関する認識がシビアで実にリアルなドラマとなっている。

 社会経験は2年あまりで、それ以降は専業主婦として働いてきた光は、最初は社長なんてできるのか? と思っていたが、社長の仕事について調べるうちに、「入ってくるお金があって出ていくお金があって、やりくりして、なんか家計と似てる」と気づく。

 第4話には「主婦も家計を預かり、家という企業を切り盛りしているという点では企業の経営者と変わらないと思うんです」という台詞があるのだが、光は、工場の中にある無駄や散らかっている職場のゴミを片付けていき、社員が作業しやすいように仕事を合理化していく。

 しかし、その過程でみんなのまとめ役だったベテラン職人の勝俣勉(竹中直人)と対立してしまう。竹中直人の迫力ある演技もあってか、勝俣の何か言おうとすると恫喝して、発言自体を封じ込めてしまう態度は、いかにも昔気質の職人という感じで苦々しいものがある。

 光と勝俣の関係はどんどん険悪になり、当初は見ていて嫌な気持ちになるのだが、だんだん勝俣の先代社長への想いが描かれるようになってくると、印象が変わっていく。

 それは他の社員や光にしても同様で、生前は不仲だった父の想いに光が気づいていく姿は感動的で、大きな見どころとなっている。

 他にも銀行員の長谷川隆史(村上淳)の女だからとなめてかかる態度など、光を取り巻く人間関係は最悪なのだが、父親譲りのバイタリティと発想の豊かさで次々と乗り越えていき、業績を黒字にする。


《成馬零一/ドラマ評論家》

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